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格上
しおりを挟む「ということはあれですか?セレナお嬢様のゴミ、ごほん…失礼。影には意思があると?」
セレナと話し合って、ジークには包み隠さず話すことにした。
「カゲレナちゃんが言うにはそうね」
「カゲレナ?」
執事がモノクルを上げる。
「私の影だからカゲレナ」
「なるほど…」
自分の影を見る執事に反応して、執事の影の小精霊が一度波打つ。執事が目を見開き、もう一度「なるほど」と呟く。
(カゲレナ……。いや、悪くないけどよ。俺、元奴隷商人の影だぜ? そんな可愛い名前で呼ばれたら、なんか調子狂うだろ)
「ええ?元奴隷商人の影だったの?」
執事が尖った目を影に向けた。
(余計なこと言うな!)
「なるほどなるほど」
(そのなるほどこえーよ)
俺はエレナを通して洗いざらいしゃべった、ジークの毒をこっそり飲んでいたこと。
「では何か?もし俺がお前を完全に追い出そうと魔法を放てば、その瞬間に体内の毒を間引く存在がいなくなり、俺自身が毒で自滅する…そしてエレナ様も、ということか?」
※ジークは毒を飲んで、それを自分の魔法や生命力で中和する。実際には、ジークが飲んだ毒の9割を、カゲレナが「毒素捕食」でこっそり濾過(ろか)して食べていた。ジークの体には「残りの1割」しか届いていない。おや? 最近、猛毒を飲んでも余裕だな。俺の耐性は王宮時代を超えたぞ!と勘違いしていた。そして、さらに強力な、普通なら即死するレベルの毒を自分で調合して飲むようなり、ジークがカゲレナを攻撃して「濾過」をストップさせたりすると、「影が肩代わりしていた9割分の猛毒」がいっぺんにジークの臓器を襲う。
執事が食後のコーヒーに口をつけると、いつの間にか執事の主語が私から俺に変わっていた。
「そうだって言ってる、運命共同体だなだって」
セレナが言うと、俺を見ていた執事が不意に真面目な顔をした。
「あの王子、スキルは判明したが、レベルは鑑定出来なかった。俺よりも上だ」
(……Lv.52超えかよ。笑えねーな。だがよ、おっさん。正面から戦って勝てねー相手を、後ろから引きずり込むのが『影』の仕事だろ?)
セレナが橋役になる。
「…ふん、下衆の理屈だな。だが、今はその卑しさが…悪くない。今夜はさらに『濃い』毒を用意してやる。明日までに少しでもレベルを上げておけ」
(……言ってくれるじゃねーか。最高のご馳走を期待してるぜ、おっさん)
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