余命数日の公爵令嬢の影に転生した俺、毒を喰らって最強の影の大精霊になる

もふもふ隊

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毒=イケメン

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同調率50%超えの「獣化」を解いた後、セレナが数日間寝込んで、俺のMPがマイナスになってしばらく「カゲレナ」として話せなくなった。

「カゲレナちゃん…死んじゃったの?」

ギュッとぬいぐるみを抱きしめ、顔を埋める。溢れた涙がぬいぐるみの柔らかな毛を重く濡らしていくが、セレナはそれに気づく様子もなかった。
 
しかしそこで救世主が現れた。

ジークだ。

最高級の毒を仕入れてくれた。美食家(ソムリエ)の反応は厄介だった。MPマイナスで意識が朦朧としていた俺が、その毒の匂いを嗅いだ瞬間に「…っ! なんだこの芳醇な香りは…!」と、本能で覚醒する。

セレナの影(ていうか俺)に沸々と煮えたぎってる紫色の小瓶を流し入れる。飲みきれなかった毒は小瓶ごと影の貯蔵庫(シャドウ・ストレージ)で収納した。
 
毒を濾過した魔力がセレナに還流し、顔色の悪かった彼女の頬に一気に赤みが差す。セレナの頬がポッと赤くなり、パチリと目が開く。

「……あ、れ? 私、すごく元気……」

その足元で、以前よりさらに濃く、禍々しくうねる影が答える。

(げぷぅ…ふぅ、食った食った。お嬢、心配かけちまったな…おいジーク、この『特選・毒サソリのエキス』、ヴィンテージ物だろ? 喉越しが最高だったぜ)

「カゲレナちゃん! しゃべった!」

泣きながら喜ぶセレナ。一方、ジークは空になった瓶を回収しながら、いつも通り冷ややかに告げる。

「お元気そうで何よりだ…さて、回復したのなら新聞を読め。お前がやったことの結果だ」

第一王子ひきこもる?継承権は第二王子に軍配が上がる。

(だいにおうじぃ?)

「なあに?カゲレナちゃん」

嫌な予感がして、俺は思わずお嬢の顔を覗き込んだ。 思えば、ボコボコにして再起不能にした第一王子も、性格はドブカスだったが顔面だけは一級品だった。

(…まずい。お嬢はコロッといきそうな「美形好き」の気があるからな。あのアリスの件だって、顔に騙されてた節がある。今度の王子がもし、兄貴以上のキラキラ美形だったら…)

想像するだけで影が真っ黒に濁る。 もしそんな奴が「兄を倒した勇敢な君に一目惚れした」なんて甘い言葉を巧みに使うやつだったら?

(…絶対に、お嬢をたぶらかしに来る。間違いない。毒で中和できないタイプの『毒(イケメン)』だ…!)

「なあに? カゲレナちゃん。そんなにジロジロ見て」

不安で影を波立たせる俺に、セレナは不思議そうに小首をかしげた。

「顔など皮一枚剥げば皆同じだ」と今回ばかりはジークと心のシンクロをしてしまったらしい。

俺にとって「全くだ!その通りだ!」という頼もしい味方の言葉に聞こえた。
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