余命数日の公爵令嬢の影に転生した俺、毒を喰らって最強の影の大精霊になる

もふもふ隊

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「……セレナ様。失礼ながら、騎士の末席に連なる者として一つ伺いたい」
 
レオンハルトが、背筋を伸ばしたまま、視線だけを鋭くセレナへ向けた。
 
「貴女のその…凛とした佇まい。失礼ながら、ただの令嬢のそれとは思えない…どこかで、剣の指導でも?」
 
(おっと、鋭いねぇ。指導っつーか、毎日ジークの毒と格闘して、王子を壁に埋める練習はしたけどよ)
 
セレナは少しだけ困ったように微笑む。
 
「……いいえ。ただ、少しだけ『お行儀の悪い子』が私の中にいて、それが時折、はしゃいでしまうのですわ」
 
(お嬢、上手いこと言うじゃねーか。その通り、俺は最高にガラが悪いぜ?ガハハ)
 
レオンハルトの瞳に、疑念ではなく「驚き」と、武人特有の「高揚」が混ざる。

「いつかお手合わせ願いたい」

ぽっと頬を紅潮させる少年に「ぽっ?」とレオンハルトの影を見る。

『こりゃあ、惚れたな』

エドワードが間を埋めるようにして、話を変えた。

「それよりも、昨日禁書と3人の生徒が神隠しにあったようだ…何か知らないか?」

「陛下から口止めをされているのでは?」

レオンハルトが嗜めると、エドワードがもう一度、今度は俺を見た。

(しらね)

「エドワード様、申し訳ありません。お力になれず」





(地下か。どこの学園にも一つや二つ、開かずの間があるもんだが、ここは匂いが「ドブ」どころじゃねぇな)

俺は影の分身【影のパペット】を鳥の形にして、地下へと続く通気口に滑り込ませた。 【影の反響】ではノイズ混じりにしか聞こえなかった音が、パペットの耳を通して鮮明になる。パペットが潜り込んだのは、埃臭い地下資料室のさらに奥、隠し扉の隙間から広大な空間へと出た。

カツン、カツンと響くのは、硬い靴音。それも一人分じゃない。
 
(…見えた。なんだ?魔法陣——それにこれは生贄だな)

暗闇の中でパペットが羽ばたこうとした瞬間、背後から伸びてきた影の手が、その翼をむしり取るように握り潰す。

(クソったれめ)



「……何もないな」

エドワードが冷徹な声を響かせた。 彼の影、アイアンが巨大な盾で床を叩き、隠し通路の先を隅々まで照らし出したが、そこにあったのは埃を被った古い資料だけだった。

「セレナ嬢。本当に見たのだな?」

エドワードの銀色の瞳が、セレナを射抜く。その視線には、期待を裏切られた落胆と、わずかな疑念が混ざっていた。

「…そ、そんなはずは。カゲレナが、確かに魔法陣を…」

セレナが言葉を詰まらせる。彼女の足元で、俺は歯噛みした。

(……チッ、やりやがったな。パペットを潰した一瞬で空間ごと『偽装』しやがった…今のこの場所は、ただの空き部屋だ)

「殿下、セレナ様を責めるのはお門違いかと。……ですが、騎士団を動かしてこの結果では、陛下への面目が立ちませぬな」

レオンハルトが硬い表情で周囲を警戒するが、猛犬の影も、何も感じ取れずに鼻を鳴らしている。

結局、その日の「地下調査」は不発に終わり、エドワードは無言で立ち去った。廊下ですれ違う生徒たちの囁きが、セレナの背中に突き刺さる。

「…虚言癖かしら?」「王子を振り回して、いい気なものね」

沸々と煮えたぎってる音がする。何が?って、お嬢の怒りと悔しさだよ。

 落ち込むセレナにフィオナが近づいてくる。

「大変だったわね、セレナ…信じてもらえないなんて、私、悲しいわ」

フィオナがセレナの肩にそっと手を置く。その瞬間、俺(影)にだけ、地下でパペットを潰された時と同じ「鳥の骨が軋む音」が聞こえた気がした。

(……気のせいか? いや、お嬢。こいつの指、さっき一瞬だけ、鳥の首を絞めるような形に曲がらなかったか?)

フィオナの影を見るが、影の反響には揺らぎがない。

「フィオナ、見て。私、こんな影絵ができるようになったの」 

夕暮れの教室で、セレナが壁に映した「鳥」の影。 その瞬間、フィオナは目を見開き後退した。

「き…気付いてた、の?」

「気付いたの、あなたが笑いを抑えてたから。頬の筋肉が一瞬痙攣したように見えたから。ハッタリをかけてみたの


カゲレナ、手を出さないで。私がやる」
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