余命数日の公爵令嬢の影に転生した俺、毒を喰らって最強の影の大精霊になる

もふもふ隊

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恋煩い

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「お招きありがとうございますわフィオナ様」

「それより大丈夫だったの?」

その時、学友と仲睦まじく話し合う第二王子が通り過ぎた。フィオナがぼーっと見つめている。

(おい、フィオナの影。お前の主、さっきから心音が跳ね上がってるぜ…ほう、第ニ王子にときめいてんのか?)

フィオナの影はたおやかに揺れ、俺の【影の反響】に「嘘をついても仕方ない」と嘆息する。

『フィオナは第二王子にほの字よ…それもずーっとよ。幼少期にダンスのリードをしてもらってから長年恋煩いをしてるわ』

(へぇ…長年の恋煩いか。乙女だねぇ。だが、あの第二王子の影(アイアン)は相当な堅物だぜ? 主人に似て、隙がねーからな)

フィオナの影は、少しだけ誇らしげに、でも寂しそうに震えた。 『ええ。だから、フィオナはいつも遠くから見ているだけ。あの鉄壁の王子の視界に、自分が入れるなんて思っていないの』

(…けっ。いいか、お嬢がエドワードと関わる機会はこれから増える…お前の主に「いい場所」を譲ってやるくらいは、協力してやるよ。その代わり——)

俺は【影の反響】の感度を上げ、学園の地下から響く不穏な「ノイズ」を察知した。

(——情報を、俺に全部流せ。お嬢を危険な目に遭わせないための「保険」だ)

『…取引成立ね』


「フィオナ様? 顔が真っ赤ですわよ」

セレナがイタズラっぽく微笑み、フィオナの視線の先——エドワード王子の背中——を目で追う。

「そっ、そんなことありませんわ! セレナ、あまりエドワード様を見つめすぎては…その、エドワード様はカイル殿下とは違って、その、大変『厳格』なお方だと伺っていますもの!」

(お嬢、見てろよ。あいつの影、さっきフィオナが視線を送った瞬間に、一瞬だけ兜の隙間からこっちを見た…あの鉄塊野郎、意外と気づいてやがるな?むっつりなやつ)

「むっつり?」

そう言うとフィオナが慌てたように紅茶を流し込む。

「ああ、そんなに慌てて飲むと…」

案の定フィオナが咳き込むと、近くにいた第二王子がやってきた。ハンカチを差し出す様は、女だったら見惚れていたかもしれない。

長身で体格のいい黒髪の短髪をした少年が胸に手を当てて、低頭した。

「彼は騎士団総帥の息子、レオンハルト・ワイズマン」

(ほう…騎士団総帥の息子か。道理で歩き方に無駄がねぇ…だが待てよ、お嬢。こいつの影、さっきの『鉄塊(アイアン)』とはまた毛色が違うぜ)

俺は鑑定と影の反響をレオンハルトに向ける。

レオンハルト・ワイズマン(14歳)

状態: 誠実 / 警戒(セレナに対して)

影の様子は鍛え上げられた猛犬のような鋭い影で輪郭がギザギザしている。主人に忠実だが、いつでも喉元に噛み付く準備ができている戦闘態勢。

(お嬢、気をつけな。こいつ、口では丁寧な挨拶をしてるが、心拍数は一切乱れてねぇ…第一王子の取り巻きみたいに『魅了』されてるわけじゃない。純粋に実力と忠誠心でエドワードに付いてる本物だ)

レオンハルトが近づいたことで、彼の影がセレナ(俺)の影に重なる。

その瞬間、猛犬のような彼の影が、俺に向かって低く唸るような威圧を放った。 『…狂犬令嬢の影か。王子の平穏を乱すなら、影ごと斬り伏せるぜ?』

(へっ、威勢がいいねぇ、お坊ちゃん。お前の友人の影の「むっつり」を治してから出直してきな)

俺が【影の武装化】を指先にだけ一瞬込めて威嚇し返すと、レオンハルトがわずかに眉を動かした。彼は「影」そのものは見えなくても、カゲレナの放つ「圧」を肌で感じ取ったのだ。

(この女、何者だ?)
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