風紋(Sand Ripples)~あの頃だってそうだった~

宗像紫雲

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第二部第十三章スチムソンドクトリン

第十三章第十五節(“何か”)

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                 十五

 加藤高明かとうたかあき外相からグリーン駐日大使へ内示され、ロンドンで井上勝之助いのうえかつのすけ駐英大使がエドワード・グレー外務大臣へ示した箇条書きは「四箇条十一項目」--。
 仏露に加えて米国へ通知された条項も同一文書である。

 ところが北京の日置益ひおきえき公使が袁世凱えんせいがい総統へ提示した「要求書」は四箇条十四項目からなっていた。
 この差は何かと言うと、英国へ通知した「条項書き」の第二号第六条に掲げた満蒙における「日本人の居住権(往来の自由と商業の自由もうたっている)」と「土地所有権」は、本来独立した条項になっていたのと、このほか「独占的鉱山採掘権の承認」も別途条項をなしていたからだ。
 またどういう訳か、第三号の漢冶萍公司かんやひょうこんすの合弁化に関する事項でも、「同公司に属する鉱山について、公司の承諾なく第三者へ採掘を許可しないこと」という条項が省かれていた。

 ではこれらを省いて英国へ知らせたからといって何か問題でも起こったかと言えば、そうではない。それとは異なる“何か”がありそうだ--ということになった。

 その“何か”を不完全なかたちで掲載したのが、二月十八日付の『ワシントンポスト』だ。同紙は「要求」と「希望」を区別しないまま、交渉内容を列挙した。これが火付け役となって、報道の焦点は「日本が北京政府へ何やら新しい要求を突き付けたようだ」という話から「何を突き付けたのか」へと移っていった。

 それら報道の中に、大陸南方における鉄道の敷設権に関する条項が取り上げられていたことから、同方面の自国権益に敏感な英国政府内にも新たな疑念を呼び起こすこととなった。
 このため加藤外相は翌十九日、井上大使へ「貴官から進んで英国外務大臣へ我が“希望”事項を内告すべし」と電命し、あわせて大使の裁量に応じて『タイムズ』主筆へ開示して構わないとの許可を与えた。
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