風紋(Sand Ripples)~あの頃だってそうだった~

宗像紫雲

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第十四章上海事変

第十四章第六節(暴動)

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                 六

 内外綿事件から四日後の十月二十二日未明には邦人三人が路上で華人巡警から発砲される事件があり、無軌道な排日暴動は南京や蕪湖ぶこ九江きゅうこう漢口かんこう蘇州そしゅう杭州こうしゅうなどの揚子江添いの諸都市へも広がった。

 そこで各地の居留民たちが連絡し合い、より強固な意志を政府中央へ示す必要があるという点で一致した。その結果が十一月一日、上海の日本中部小学校で開催された「長江流域全日本人居留民大会」となった。
 それでも抗日団体の活動はエスカレートする一方で、ついには大陸全土へと広がった。危機感を募らせた居留民の連携も全国レベルに広がって、十二月六日には「全支日本人居留民大会」を開催。政府へ強硬な対応を求める。
 
 ちょっとのつもりがつい長くなった--。
 だがこれほど種々雑多な出来ごとが積み重なって、「一触即発」の機運が弾けんばかりに張りつめた時点で起こったのが『民国日報』の不敬記事だった訳だ。
 だからこれだけを切り出して、「たかが新聞記事ごときで」と軽んじられる話ではなかったのである。

 天皇への悪意ある記事を目にした居留民の怒りは、大陸で最大の邦人コミュニティーを擁する青島チンタオで爆発した。

 一月九日、川越茂かわごえしげる総領事は取るものと取り敢えず青島市政府へ急行し、猛烈な抗議をした上で新聞社社長の陳謝と執筆した記者の罷免、新聞の発行停止などを求めた。
 それでも総領事の解決法を「手ぬるい」と見た居留民たちは、十二日に大会を開いて国民党支部の解散と『民国日報』の廃刊などを決議した。

 この会場に集まった邦人居留民は千人あまり。採択された決議文は大会終了とともに実行委員約七十人を四班に分け、各々「日本総領事館」と「青島市政府」、「民国日報社」、「市党部」へ持ち込むこととした。
 すると民国日報社と市党部へ向かった実行委員の班に殺気立った参加者ら約二百人が随従し、新聞社の窓ガラスを叩き割って事務所の中を荒らした。市党部へ向かったグループにいたっては、室内にガソリンをいて火を点け、建物四階部分を全焼させる事件を起こした。

 興奮した群衆はさらに気勢を挙げ、もはや領事館警察の手に負えなくなった。このため午後十時、停泊中の軍艦出雲いずも八雲やくもから陸戦隊約五百人を上陸させ、ようやく事を収めた。
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