檻から逃げる

有箱

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世界は変わる

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 赤い目の学生が二人、崖付近に座って夕日を見る。こんなシチュエーション、きっと二度とない。

「本当は今日、死ぬつもりだったんだ。親とも上手くいってなかったし、受験もしんどくてさ」

 泣き終えた名越くんは、静かに呟いた。私はと言うと、堰を切ったように溢れた涙が、まだ止まらずにいた。

「でも、決めてから色々考えて、死ぬ前に誰かの中に特別な記憶として残りたくなった。だから声をかけたんだ。誰でも良かったんだ。願いを叶えて死んだら、きっとその人は覚えててくれるって、傷付けるって分かってて声をかけた」

 理由が分かり、やっと全てが腑に落ちた。死を描きながら笑んでいたと思うと、更に涙が出てくる。

「……まぁ、結局この様だけど。変なメールしといて、怖くて死ねなかったなんてずるい奴だよね」
「ううん、生きてて良かったです。本当に良かった……」
「ありがとう、あかりさん。本当にごめん……俺の為に泣いてくれてありがとう」

 名越くんの目から、再び涙が溢れ落ちた。もしかすると先程も、号泣に釣られ声をあげてくれたのかもしれない。
 私、彼の為に出来ることはあるかな。

「……あの」

 やっぱり、気の効いたことは言えそうにない。

「私の我が儘になってしまうのですが……」

 でも、私が名越くんだったら、きっと嬉しい。

「友達になってくれませんか? 一緒に頑張る友達に」

 予想通り、名越くんは目を丸くした。だが、これまた想像通り、柔らかく微笑む。

「嬉しいよ」



 帰宅後の不安はあったが、意外と大事にはならなかった。

 もちろん出来事は告げていない。名越くんと打ち合わせ、嘘の話をでっち上げ免れただけだ。

 故に、翌日からは前の暮らしに戻った。勉強漬けで自由のない毎日に。
 けれど、以前とは明らかに変わった。
 
 塾が終わり次第、携帯を開く。見つけた通知に、自然と笑みが溢れた。

"今日も一日お疲れ様。聞いて、志望校受かったよ"

 相手はもちろん、名越くんだ。あの日以降、頻繁にやり取りしている。教室での会話も増えた。
 
 そう、私はもう孤独じゃない。
 きっと、この先も二人なら頑張れる。
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