ニセモノ殺し

ダイコウ【1/2】

「そんで、結局子供も殺したってか」

　ロジが溜息をつく。
　あれから約十時間、僕とリィカはちょうど解剖から解放されたところだった。
　仮眠室へ行くついでに、書類を届けようとしてくれたらしい。偶然、解剖室の前で会ったロジに、簡単に経緯を話した。ロジの視線はワゴンに刺さっている。

「子供はそのまま埋葬しようかと。見ます？」
「いい！　見せるな！」
「そうですか」

　クーラーボックスにかけられた手が離れる。鮮度が命ですので配達してきますね――リィカが用件だけ残し、去った。

「はぁ、怖い怖い。で、無駄になっちまった書類も保管するんか」
「します。お預かりしますね」
「おうよ」
「にしても、ルラは相変わらずクローンに無情だよな。まぁ、酷いことされちゃ当然かもしれないけどよ……頼まれたのに子供まで殺すとは」

　記憶に触れられ、脳内で過去が咲く。冷たい笑みが勝手に溢れた。

「……死んだら分からないのですから、どうだっていいでしょう」
「そんなんだけどよ。こう、なんか救われねぇな」

　ロジが去って行く。消えゆく背中を見届け、書類を持ったまま再入室した。