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十四日目
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半月が経過した。時折記憶が抜けている部分があるが、情報を頼りに推測した結果が間違っていなければ、残り時間はあと半分となる。
ノコトの語った言葉は、目を開けた隙を突かれ、心に直接湊翔の声で流し込まれ、紛れもない真実だったと分かった。
揺れる。元々揺れていた気持ちが、ふり幅を更に大きくして左右にぶれる。
¨死にたい¨との気持ちと¨死にたくない¨との気持ちが競るように頭角を突き出し、答えを迷わせる。
最終的に行き着くのは¨死ぬ方¨ではあるが。
ただそこまでの期間が長いか短いかの話。
いや、死神の手を借りなければ死ねない状態に置いて、心臓が止まるまでの期間、もがくか受け容れるかを選択するに過ぎない。
言うなれば、それだけのちっぽけな問題だ。
「またすごい事考えているのね、結局どっちな訳?」
空から―――上には天井しかないが――振ってきた声は、クリアながら感情が燃え盛っていた。
「生きたいなら生きたいって言いなさいよ、何でそのくらい認められないわけ?」
今日もシズミヤは不機嫌で、何が思い通りにならないのか苛々としている。
『どっちでも構わないでしょ』
視線だけでそっぽを向くと、シズミヤは鎖骨に繋がる点滴の管を揺らした。
近付いたからか、得体の知れぬ力が流れているのか、呼吸が詰まりだす。
拒絶の感情が意識せずとも強くなる。しかし、シズミヤの行動はそれに留まらなかった。
医師が異常に気付き、部屋に入ろうとした時だった。内側から後ろ手で扉を固定し、開かないようにしてしまったのだ。実物に触れられる力まであるとは驚きだ。
「……このまま放っておけば死ぬかもね、ずっと望んでた事でしょ?」
「……うっ……く……」
発作一歩手前の一番苦しい状況で、助けの手を差し伸べてくれる人間は扉の外で格闘している。
このまま耐えれば、死は自然とこの体を乗っ取るだろう。
しかし、もう認めざるを得なかった。
様々な要素が加わって、いつしか引き返せないまでに膨らんでしまった。
「……死……たくない……まだ……死にたく……ない……!」
枯れる喉で必死に叫ぶと、扉が開き医師たちが素早く入室してきた。
そうして慣れた手付きで体に触れる。
朦朧とする意識の中、扉の前を見たが、シズミヤは既に居なくなっていた。
ノコトの語った言葉は、目を開けた隙を突かれ、心に直接湊翔の声で流し込まれ、紛れもない真実だったと分かった。
揺れる。元々揺れていた気持ちが、ふり幅を更に大きくして左右にぶれる。
¨死にたい¨との気持ちと¨死にたくない¨との気持ちが競るように頭角を突き出し、答えを迷わせる。
最終的に行き着くのは¨死ぬ方¨ではあるが。
ただそこまでの期間が長いか短いかの話。
いや、死神の手を借りなければ死ねない状態に置いて、心臓が止まるまでの期間、もがくか受け容れるかを選択するに過ぎない。
言うなれば、それだけのちっぽけな問題だ。
「またすごい事考えているのね、結局どっちな訳?」
空から―――上には天井しかないが――振ってきた声は、クリアながら感情が燃え盛っていた。
「生きたいなら生きたいって言いなさいよ、何でそのくらい認められないわけ?」
今日もシズミヤは不機嫌で、何が思い通りにならないのか苛々としている。
『どっちでも構わないでしょ』
視線だけでそっぽを向くと、シズミヤは鎖骨に繋がる点滴の管を揺らした。
近付いたからか、得体の知れぬ力が流れているのか、呼吸が詰まりだす。
拒絶の感情が意識せずとも強くなる。しかし、シズミヤの行動はそれに留まらなかった。
医師が異常に気付き、部屋に入ろうとした時だった。内側から後ろ手で扉を固定し、開かないようにしてしまったのだ。実物に触れられる力まであるとは驚きだ。
「……このまま放っておけば死ぬかもね、ずっと望んでた事でしょ?」
「……うっ……く……」
発作一歩手前の一番苦しい状況で、助けの手を差し伸べてくれる人間は扉の外で格闘している。
このまま耐えれば、死は自然とこの体を乗っ取るだろう。
しかし、もう認めざるを得なかった。
様々な要素が加わって、いつしか引き返せないまでに膨らんでしまった。
「……死……たくない……まだ……死にたく……ない……!」
枯れる喉で必死に叫ぶと、扉が開き医師たちが素早く入室してきた。
そうして慣れた手付きで体に触れる。
朦朧とする意識の中、扉の前を見たが、シズミヤは既に居なくなっていた。
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