2 / 8
2
しおりを挟む
物陰に隠れた社用車の前、防護服を脱ぐ。完全に開放された所で、後方から声が聞こえた。
「やぁウィル。エリックくん。久しぶり。二人ともお疲れさま」
反応して目をやる。見慣れた車が、窓を開けたまま接近してきた。恐らく捜査の帰りだろう。エリックは、現れた人物に軽く会釈していた。
彼、ロナルドは現役の刑事である。そして私の元同僚だ。
「ロン、何か用か?」
「見かけたから声をかけただけさ。ウィルは元気かなってね。そろそろ良い人でも見つけないのかなとも」
事件への遠巻きな接触に、思わず眉を潜めてしまう。対して、ロナルドは居た堪れなさを困笑に変えた。
「どうか私のことは気にしないでくれ。では失礼」
早々と振り切り、車内に逃亡する。少し後、エリックが乗車したタイミングで、車の発進音を捉えた。
「諦めてくれませんね、彼」
「ああ」
彼はジェシカの事件をリアルタイムで知っており、私が転職した理由も恐らく悟っている。
そして、事件の追及を止めてほしいと願っている――軽い口調の中に、本気の願いがあるのは十分理解していた。
*
「ウィルってパパと同じ仕事なのよね? お片付けするんだっけ?」
「そうだよ」
「やっぱり凄いわ! 私は嫌いだもの」
本日は休日だ。しかし、空の予定を把握されている為、当然のように彼女――ニコルが家に来ている。
ニコルは、今年十二歳になるエリックの一人娘だ。片親ゆえ用事で満ちている彼の代わりに、彼女の面倒を見ている。
「あ、でもウィルのお嫁さんになるから練習しなきゃ」
「またそんなこと言って。ニコは可愛いんだからもっと良い人と出会うさ」
「ウィルが良いのー!」
ただ、面倒と言っても、話したり食事を振舞ったりと、最低限の世話しかしていない。にも拘らず私に懐き、いつも無邪気な顔を見せてくれた。
私にもし子どもがいたら――そんなよく幻想に呑まれた。
「やぁウィル。エリックくん。久しぶり。二人ともお疲れさま」
反応して目をやる。見慣れた車が、窓を開けたまま接近してきた。恐らく捜査の帰りだろう。エリックは、現れた人物に軽く会釈していた。
彼、ロナルドは現役の刑事である。そして私の元同僚だ。
「ロン、何か用か?」
「見かけたから声をかけただけさ。ウィルは元気かなってね。そろそろ良い人でも見つけないのかなとも」
事件への遠巻きな接触に、思わず眉を潜めてしまう。対して、ロナルドは居た堪れなさを困笑に変えた。
「どうか私のことは気にしないでくれ。では失礼」
早々と振り切り、車内に逃亡する。少し後、エリックが乗車したタイミングで、車の発進音を捉えた。
「諦めてくれませんね、彼」
「ああ」
彼はジェシカの事件をリアルタイムで知っており、私が転職した理由も恐らく悟っている。
そして、事件の追及を止めてほしいと願っている――軽い口調の中に、本気の願いがあるのは十分理解していた。
*
「ウィルってパパと同じ仕事なのよね? お片付けするんだっけ?」
「そうだよ」
「やっぱり凄いわ! 私は嫌いだもの」
本日は休日だ。しかし、空の予定を把握されている為、当然のように彼女――ニコルが家に来ている。
ニコルは、今年十二歳になるエリックの一人娘だ。片親ゆえ用事で満ちている彼の代わりに、彼女の面倒を見ている。
「あ、でもウィルのお嫁さんになるから練習しなきゃ」
「またそんなこと言って。ニコは可愛いんだからもっと良い人と出会うさ」
「ウィルが良いのー!」
ただ、面倒と言っても、話したり食事を振舞ったりと、最低限の世話しかしていない。にも拘らず私に懐き、いつも無邪気な顔を見せてくれた。
私にもし子どもがいたら――そんなよく幻想に呑まれた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
0
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる