STRUGGLE

有箱

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True ally

 入隊前の懸念は杞憂だったらしく、二番隊の面々は僕を家族同様に扱った。
 疑惑を向けられたら、それこそ正体が知られたら――と何度も考えたのに、真逆の状況が僕を迎えている。順調すぎて怖いくらいだ。

「見てルアリテ、花ー」

 ここじゃ珍しい生花を差し出してきたのは、隊員である幼い少女だった。澄んだ瞳が僕を見つめている。

「すごい。いつ見つけたの?」
「戦いの帰りー。はい、あげる」
「ありがとう」

 手入れ中の銃を起き、茎部分を優しく摘まんだ。武器ではなく花を持つと、心が浄化されるような気になる。
 花を二人して観察していると、ヴェルベットが現れた。

「愛されてるなルアリテ。で、俺の分はないの?」
「ない」
「えー、俺にも頂戴よー」
「ヴェルベットは似合わないから嫌」
「そんなこと言う子にはこうだ!」

 そうして温かいやり取りを重ね、少女を擽りはじめる。基地の中に響く無邪気な笑声は、仲間に伝染し笑顔を生んでいた。

 そんなワンシーンを目にし、息を詰まらせているのは僕だけだろう。無論、表面上は合わせたが。 

 僕も彼らと一緒になり、心の底から笑いたかった。なのに、心に書き出されるのは、上への報告内容ばかりだ。



 何十回目かの戦闘に赴く。これまでに一体、何人の同国民なかまを殺しただろう――なんて、最初から躊躇などなかったが。

 仕組まれるまま、僕は勝利に貢献した。相手の動きを事前に把握し、その上で作戦を練っているのだから、これは必然の勝利だと言えるだろう。
 そんな戦闘を繰り返す度、僕の心には言い表せない苦痛が募っていった。

 僕を信頼する二番隊の末路を、僕だけが知っている。そして、その時は着々と迫ってきている。
 溢れそうになる拒絶と、それを押さえこむ意識が、ぶつかり合って尋常じゃない疲労をもたらした。

「ルアリテ! 危ない!」

 幼い声が脳に突き刺さる。と同時に柔な、けれど強い力が僕の体を突き飛ばした。
 草木の間に倒れ混む。直後、鼓膜が銃声に支配された。

 目の前、血を流した少女が倒れている。花を僕にくれた少女だ。庇われたと気付き、罪悪感で一瞬硬直した。だが、すぐ我に帰る。
 幾ら配慮されているからといって、気を抜けば死にかねない。

 安否の確認を後回しに、僕は迎撃を開始した。
 
 今日も自然に勝利を納め、敵軍は撤退していった。完全な撤退を待ち、少女の元へと急ぐ。多くの死を見てきたはずなのに、彼女の死が酷く怖かった。
 辿り着いた時には、既にヴェルベットがいた。ただ静かに少女を見つめている。後ろから静かに名を呼ぶと、ゆっくりと振り返り頭を振った。それは、少女の死を意味していた。
 僕のせいで、彼女は死んだ。僕が彼女を殺した。
 
 最終的に、同じ目に合わせる積もりではあった。だが、それでも苦しいと感じるのは、きっと愛ゆえの死だからだ。僕を助ける為に死んだ、との事実が胸を抉るのだろう。
 こんなに温かくて優しい人たちを、僕は殺したくない。けれど。
「ごめんなさい……」
 脳ではなく、心の声が溢れていた。感情を殺そうと努めるが、間に合わず涙も溢れた。ヴェルベットが立ち上がり「ルアリテは何も悪くない」と体を抱き締める。その温もりを感じながら、少し先の未来を視た。
 この謝罪は、ヴェルベット含む仲間全員への謝罪だ。
 
 その夜、無線から言い付けられた。ただ淡々と一言、『終わらせよ』と。
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