最下位少女

有箱

文字の大きさ
7 / 11

Elena-3

しおりを挟む
 私の席からは、ロッタの様子が見えない。ゆえに、筆記試験での状態は図れなかった。
 私はと言うと、痛みで頭がぼんやりし、ほぼ解答出来なかった。

 だが、実技試験は様子がよく見える。だから、始まって早々、ロッタと私の状態が似ている事に気付いた。

 歩くことさえ覚束ない。動けば呼吸を乱し、眉間に眉を寄せる。
 ――こんなのは、やっぱり寝不足なんかじゃない。

「……エレーナ、大丈夫?」

 時差でスタートした関係で、前に居たロッタが下がってきた。最終スタートした私に近付いたということは、今二人で最下位にいる事になる。

 ロッタの足取りは重く、呼吸も荒かった。だが、表情には笑みがあり、また胸が痛くなった。

「……ロッタ」
「何?」
「何があったの」
「……え、だから唯の」
「嘘は吐かないで。見ていて辛いの」

 強く訴えると、ロッタは表情を崩した。絞っていた声も消えてなくなる。
 それから数秒、視線を逸らした。

「……エレーナと同じだよ。僕も怪我したんだ。痛くて上手く走れない」

 状況は不明ながら、彼が真実を語ったのだと信じられた。逸らされた視線が物語っている。 

「でも、これで良いんだよ。俺が最下位になれば、エレーナは生き続けられるんだから」

 ――言葉が出なかった。これも、きっと本心だ。昨日の“助ける”との言葉が過ぎる。

「俺さ、もう嫌なんだ、大事な人が死ぬの。だからエレーナは生きて。俺、覚悟は出来てるから」
「……そんなのは私が嫌よ……」

 もう一つ、今朝方聞いた言葉も過ぎった。モアの言葉だ。それを聞き、想像した物語も。

「……ねぇロッタ。もういっそ二人で……」
「駄目だ」

 強く吐き捨てるような言葉が、胸に重く圧し掛かる。ロッタの歩みは遅くなり、ついには歩行まで止まった。

 共に止まろうとする体を、背後から優しく押される。

「行ってエレーナ。俺の為に。最後のお願いだと思って」
「ロッ……!」

 振り向きざま、視界に影が入り込んだ。通り過ぎたと思った瞬間、手を引かれる。

「行くよ、エレーナ」

 力の発生先を見ると、モアがいた。抗う力も残されておらず、引かれるままに進んでしまう。

「事情は大体把握したよ。今はロッタの気持ちを汲み取ってあげよう」
「サンキュ、モア」

 そう呟いた、ロッタを残して――。

「……ロッタ! 嫌よロッタ!」

 私だって、貴方のいない世界は嫌よ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

一夏の性体験

風のように
恋愛
性に興味を持ち始めた頃に訪れた憧れの年上の女性との一夜の経験

愛しているなら拘束してほしい

守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。

処理中です...