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Elena-3
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私の席からは、ロッタの様子が見えない。ゆえに、筆記試験での状態は図れなかった。
私はと言うと、痛みで頭がぼんやりし、ほぼ解答出来なかった。
だが、実技試験は様子がよく見える。だから、始まって早々、ロッタと私の状態が似ている事に気付いた。
歩くことさえ覚束ない。動けば呼吸を乱し、眉間に眉を寄せる。
――こんなのは、やっぱり寝不足なんかじゃない。
「……エレーナ、大丈夫?」
時差でスタートした関係で、前に居たロッタが下がってきた。最終スタートした私に近付いたということは、今二人で最下位にいる事になる。
ロッタの足取りは重く、呼吸も荒かった。だが、表情には笑みがあり、また胸が痛くなった。
「……ロッタ」
「何?」
「何があったの」
「……え、だから唯の」
「嘘は吐かないで。見ていて辛いの」
強く訴えると、ロッタは表情を崩した。絞っていた声も消えてなくなる。
それから数秒、視線を逸らした。
「……エレーナと同じだよ。僕も怪我したんだ。痛くて上手く走れない」
状況は不明ながら、彼が真実を語ったのだと信じられた。逸らされた視線が物語っている。
「でも、これで良いんだよ。俺が最下位になれば、エレーナは生き続けられるんだから」
――言葉が出なかった。これも、きっと本心だ。昨日の“助ける”との言葉が過ぎる。
「俺さ、もう嫌なんだ、大事な人が死ぬの。だからエレーナは生きて。俺、覚悟は出来てるから」
「……そんなのは私が嫌よ……」
もう一つ、今朝方聞いた言葉も過ぎった。モアの言葉だ。それを聞き、想像した物語も。
「……ねぇロッタ。もういっそ二人で……」
「駄目だ」
強く吐き捨てるような言葉が、胸に重く圧し掛かる。ロッタの歩みは遅くなり、ついには歩行まで止まった。
共に止まろうとする体を、背後から優しく押される。
「行ってエレーナ。俺の為に。最後のお願いだと思って」
「ロッ……!」
振り向きざま、視界に影が入り込んだ。通り過ぎたと思った瞬間、手を引かれる。
「行くよ、エレーナ」
力の発生先を見ると、モアがいた。抗う力も残されておらず、引かれるままに進んでしまう。
「事情は大体把握したよ。今はロッタの気持ちを汲み取ってあげよう」
「サンキュ、モア」
そう呟いた、ロッタを残して――。
「……ロッタ! 嫌よロッタ!」
私だって、貴方のいない世界は嫌よ。
私はと言うと、痛みで頭がぼんやりし、ほぼ解答出来なかった。
だが、実技試験は様子がよく見える。だから、始まって早々、ロッタと私の状態が似ている事に気付いた。
歩くことさえ覚束ない。動けば呼吸を乱し、眉間に眉を寄せる。
――こんなのは、やっぱり寝不足なんかじゃない。
「……エレーナ、大丈夫?」
時差でスタートした関係で、前に居たロッタが下がってきた。最終スタートした私に近付いたということは、今二人で最下位にいる事になる。
ロッタの足取りは重く、呼吸も荒かった。だが、表情には笑みがあり、また胸が痛くなった。
「……ロッタ」
「何?」
「何があったの」
「……え、だから唯の」
「嘘は吐かないで。見ていて辛いの」
強く訴えると、ロッタは表情を崩した。絞っていた声も消えてなくなる。
それから数秒、視線を逸らした。
「……エレーナと同じだよ。僕も怪我したんだ。痛くて上手く走れない」
状況は不明ながら、彼が真実を語ったのだと信じられた。逸らされた視線が物語っている。
「でも、これで良いんだよ。俺が最下位になれば、エレーナは生き続けられるんだから」
――言葉が出なかった。これも、きっと本心だ。昨日の“助ける”との言葉が過ぎる。
「俺さ、もう嫌なんだ、大事な人が死ぬの。だからエレーナは生きて。俺、覚悟は出来てるから」
「……そんなのは私が嫌よ……」
もう一つ、今朝方聞いた言葉も過ぎった。モアの言葉だ。それを聞き、想像した物語も。
「……ねぇロッタ。もういっそ二人で……」
「駄目だ」
強く吐き捨てるような言葉が、胸に重く圧し掛かる。ロッタの歩みは遅くなり、ついには歩行まで止まった。
共に止まろうとする体を、背後から優しく押される。
「行ってエレーナ。俺の為に。最後のお願いだと思って」
「ロッ……!」
振り向きざま、視界に影が入り込んだ。通り過ぎたと思った瞬間、手を引かれる。
「行くよ、エレーナ」
力の発生先を見ると、モアがいた。抗う力も残されておらず、引かれるままに進んでしまう。
「事情は大体把握したよ。今はロッタの気持ちを汲み取ってあげよう」
「サンキュ、モア」
そう呟いた、ロッタを残して――。
「……ロッタ! 嫌よロッタ!」
私だって、貴方のいない世界は嫌よ。
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