瞼の裏で雪が降る

有箱

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【最終話】5-3

 目を覚ましたら、体温は体に戻されていた。無機質な天井と無情な点滴に、すぐさま絶望を与えられた。

 ――死ねなかったのだ。望んだ安らぎは逃げ去り、恐れた未来だけが手に残っていた。

 空想の中の僕が、ベッドから飛び出し窓枠を飛び越える。しかし、現実の体は後続を拒んだ。
 
 シオンは、僕の自由だけを連れ去った。だから、僕の体はほとんど動かない。五感と臓器だけが、以前のまま人間らしく働いた。

 だから毎日、僕はシオンを目蓋に見る。シオンとの日々を、取り零すことなく繰り返す。雪に埋もれて、真っ白になるまで。
 
 この先、僕は一生思い出に首を絞められる。寿命が迎えに来るまで、残像に後悔を重ね続ける。これは確定した未来の話だ。

 ただ、そんな僕にも、たった一つだけ救いがある。それは、シオンの苦しみを除けたことだ。彼女だけでも楽になれたのなら、僕は少しだけ誇れる。

 ああ、今日も幾分か命を消費できた。
 きっと今頃、あの海も美しくなっているだろう。
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