1 / 5
配信者:辻都はおこ
しおりを挟む
「はおこ、新しい動画出したって! 見た!?」
「出てたの!? 見なきゃ!」
校内では今、一つの話題が飛び交っている。
内容を端的に言うと、配信者の話だ。配信者とはサイトに動画を投稿している人間のことである。
「もうこの時期かー。渡《わたる》も“はおこ”って知ってるよな?」
問いかけてきたのは、大親友の晴一《はるいち》だ。後ろの席ゆえ、よく話しかけてくる。
「知ってる。毎年恒例じゃん。冬になると現れる絶世の美少女配信者、辻都《つじと》はおこだろ? 百均の道具でネイルするんだったか」
マフラーを巻いた少女が、指先だけしか見えない手にハイクオリティなネイルをする。キラキラな女子向けのやつだ。
言ってしまえば、それだけの動画である。
だが、この配信者、女子だけではなく男子にも人気が高い。
「そうそう! 俺も見たんだけど、やっぱりめっちゃ可愛かった!」
ただ、内容と言うより、容姿目的で再生する男子が多いようだが。
「見たのかよ。でもさ、はおこってマフラーで顔半分隠しちゃってるし、体なんか防寒具で見えたもんじゃないじゃん。手袋もしてるし、どんだけ寒がりなんだか」
「体!? 渡のエッチ!」
晴一は自らの体を抱え、動作を付ける。エロい妄想なんか一切なかった俺は、それはお前だろ、と突っ込んでおいた。
*
そんな配信者──辻都はおこは我が校にいると噂され、目星も付けられている。
それこそが、学校一の美少女、辻 琴葉である。
直接本人に尋ねた勇者もいるが、笑って誤魔化されたらしい。
噂となる主な理由は、顔が似ているからだそうだ。一部で名字の掠りも上がったが、この地域じゃ在り来りな名字ゆえ無効となった。
晴一も俺も辻だし、他にもまだいるし。
知ってどうする、と俺は思うが、ここの学生たちは違うらしい。あまりにも似た人物がいるから、突き止めたいと言った所だろうけど。
はおこは無口で、声さえ不明の少女だ。隠されたマフラーの下も含め、謎多き美少女の全貌を暴きたがる者は後を絶たなかった。
「マフラーの下、絶対可愛いって!」
「晴一、その話ばっかりだな」
「いやいや、コンプレックスあるかららしいけど絶対美女でしょ」
そう、晴一もその一人である。帰り道まで話題を引っ張るなんて、幾ら何でも熱中しすぎだろう。
「女の子にはね、見せられない部分があるんだよー」
振り向くと、例の人物、琴葉がいた。俺と晴一の間に自然と割り込んでくる。
「琴葉さん、何すかその口ぶり! はおこちゃんって、やっぱり琴葉さんですか!」
「だから違うってばー」
俺たち三人は仲がいい。晴一が琴葉を一目見て気に入り、声を掛けたのが最初だ。俺は必死で止めたが、奴は聞かなかった。
因みに、俺と琴葉は訳あって以前からの知り合いである。二人の関係は──秘密だ。
「じゃあマフラーして下さい! したら絶対同じですもん! てか、なんでいつもしないんですか!」
「嫌いなの。渡くんと一緒」
琴葉は何か言いたげに、俺へ目配せして来た。返答など用意しておらず、即興で作る。
「……首元モサモサしますもんね」
琴葉はマフラー嫌いで通っている。そして俺もだ。同盟組めば、なんて晴一に言われたこともある。
その代わり琴葉は、ぶかぶかで分厚いコートを着用し、防寒しているらしい。俺は逆で、中にたくさん着るスタイルである。
「顎が四角いからか!」
「うるせぇわ」
妙な流れでコンプレックスを指摘され、晴一を睨みつける。そんな空気を壊す為か、琴葉が笑声をあげた。
「晴一くん、顔なんか化粧でどうにでもなっちゃうのよ。だから可愛い子には注意ってね」
「うっ……可愛い人が言うと輝きが違う……」
あっさり流された晴一は、今日も琴葉に夢中だ。いや、はおこもだから可愛い子にか。なんて奴。
「あ、私この辺だから行くね」
駅が見えてきて、琴葉が並列から飛び出す。大きく手を振る姿は、それだけで目立った。周囲の目線を気にせず、振り返す晴一を横目で見る。
「琴葉さんまたー」
俺は他人の振りをし、二人から目を逸らしていた。
*
九分ほど歩き、次の駅で晴一と別れた。そこから電車に揺られ三十分、加えて自転車十二分で、やっと自宅が見えてくる。俺の家は、大きい集合住宅の中だ。
「なんで待ってるの」
集合玄関の前、立っていたのは琴葉だった。壁に背を預け、携帯を弄っていたらしい。
「特に理由はないけど」
「そう言うの止めてくれないか」
周りを警戒し、外部からの死角に入る。二人きりの場面なんか見られたら、それこそ大騒動だ。しかも自宅前で。
「良いじゃん。にしても、この時期はやっぱ騒がれるねー!」
「本当だよ、ドキドキするわ」
琴葉との温度差に溜息を吐き、疲れに対して再び吐く。いつも、部屋に入るまで落ち着かない。
「秘密だもんね、相棒! じゃ、後ほど!」
何をしたかったのか、琴葉は言い残すと去っていった。因みに、行き先は百円均一の店だ。
なぜ分かるかと言うと、知っているからだ。
辻都はおこの真実──秘密を。琴葉との関係を。
「出てたの!? 見なきゃ!」
校内では今、一つの話題が飛び交っている。
内容を端的に言うと、配信者の話だ。配信者とはサイトに動画を投稿している人間のことである。
「もうこの時期かー。渡《わたる》も“はおこ”って知ってるよな?」
問いかけてきたのは、大親友の晴一《はるいち》だ。後ろの席ゆえ、よく話しかけてくる。
「知ってる。毎年恒例じゃん。冬になると現れる絶世の美少女配信者、辻都《つじと》はおこだろ? 百均の道具でネイルするんだったか」
マフラーを巻いた少女が、指先だけしか見えない手にハイクオリティなネイルをする。キラキラな女子向けのやつだ。
言ってしまえば、それだけの動画である。
だが、この配信者、女子だけではなく男子にも人気が高い。
「そうそう! 俺も見たんだけど、やっぱりめっちゃ可愛かった!」
ただ、内容と言うより、容姿目的で再生する男子が多いようだが。
「見たのかよ。でもさ、はおこってマフラーで顔半分隠しちゃってるし、体なんか防寒具で見えたもんじゃないじゃん。手袋もしてるし、どんだけ寒がりなんだか」
「体!? 渡のエッチ!」
晴一は自らの体を抱え、動作を付ける。エロい妄想なんか一切なかった俺は、それはお前だろ、と突っ込んでおいた。
*
そんな配信者──辻都はおこは我が校にいると噂され、目星も付けられている。
それこそが、学校一の美少女、辻 琴葉である。
直接本人に尋ねた勇者もいるが、笑って誤魔化されたらしい。
噂となる主な理由は、顔が似ているからだそうだ。一部で名字の掠りも上がったが、この地域じゃ在り来りな名字ゆえ無効となった。
晴一も俺も辻だし、他にもまだいるし。
知ってどうする、と俺は思うが、ここの学生たちは違うらしい。あまりにも似た人物がいるから、突き止めたいと言った所だろうけど。
はおこは無口で、声さえ不明の少女だ。隠されたマフラーの下も含め、謎多き美少女の全貌を暴きたがる者は後を絶たなかった。
「マフラーの下、絶対可愛いって!」
「晴一、その話ばっかりだな」
「いやいや、コンプレックスあるかららしいけど絶対美女でしょ」
そう、晴一もその一人である。帰り道まで話題を引っ張るなんて、幾ら何でも熱中しすぎだろう。
「女の子にはね、見せられない部分があるんだよー」
振り向くと、例の人物、琴葉がいた。俺と晴一の間に自然と割り込んでくる。
「琴葉さん、何すかその口ぶり! はおこちゃんって、やっぱり琴葉さんですか!」
「だから違うってばー」
俺たち三人は仲がいい。晴一が琴葉を一目見て気に入り、声を掛けたのが最初だ。俺は必死で止めたが、奴は聞かなかった。
因みに、俺と琴葉は訳あって以前からの知り合いである。二人の関係は──秘密だ。
「じゃあマフラーして下さい! したら絶対同じですもん! てか、なんでいつもしないんですか!」
「嫌いなの。渡くんと一緒」
琴葉は何か言いたげに、俺へ目配せして来た。返答など用意しておらず、即興で作る。
「……首元モサモサしますもんね」
琴葉はマフラー嫌いで通っている。そして俺もだ。同盟組めば、なんて晴一に言われたこともある。
その代わり琴葉は、ぶかぶかで分厚いコートを着用し、防寒しているらしい。俺は逆で、中にたくさん着るスタイルである。
「顎が四角いからか!」
「うるせぇわ」
妙な流れでコンプレックスを指摘され、晴一を睨みつける。そんな空気を壊す為か、琴葉が笑声をあげた。
「晴一くん、顔なんか化粧でどうにでもなっちゃうのよ。だから可愛い子には注意ってね」
「うっ……可愛い人が言うと輝きが違う……」
あっさり流された晴一は、今日も琴葉に夢中だ。いや、はおこもだから可愛い子にか。なんて奴。
「あ、私この辺だから行くね」
駅が見えてきて、琴葉が並列から飛び出す。大きく手を振る姿は、それだけで目立った。周囲の目線を気にせず、振り返す晴一を横目で見る。
「琴葉さんまたー」
俺は他人の振りをし、二人から目を逸らしていた。
*
九分ほど歩き、次の駅で晴一と別れた。そこから電車に揺られ三十分、加えて自転車十二分で、やっと自宅が見えてくる。俺の家は、大きい集合住宅の中だ。
「なんで待ってるの」
集合玄関の前、立っていたのは琴葉だった。壁に背を預け、携帯を弄っていたらしい。
「特に理由はないけど」
「そう言うの止めてくれないか」
周りを警戒し、外部からの死角に入る。二人きりの場面なんか見られたら、それこそ大騒動だ。しかも自宅前で。
「良いじゃん。にしても、この時期はやっぱ騒がれるねー!」
「本当だよ、ドキドキするわ」
琴葉との温度差に溜息を吐き、疲れに対して再び吐く。いつも、部屋に入るまで落ち着かない。
「秘密だもんね、相棒! じゃ、後ほど!」
何をしたかったのか、琴葉は言い残すと去っていった。因みに、行き先は百円均一の店だ。
なぜ分かるかと言うと、知っているからだ。
辻都はおこの真実──秘密を。琴葉との関係を。
0
あなたにおすすめの小説
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
【1話完結】あなたの恋人は毎夜わたしのベッドで寝てますよ。
ariya
ファンタジー
ソフィア・ラテットは、婚約者アレックスから疎まれていた。
彼の傍らには、いつも愛らしい恋人リリアンヌ。
婚約者の立場として注意しても、アレックスは聞く耳を持たない。
そして迎えた学園卒業パーティー。
ソフィアは公衆の面前で婚約破棄を言い渡される。
ガッツポーズを決めるリリアンヌ。
そのままアレックスに飛び込むかと思いきや――
彼女が抱きついた先は、ソフィアだった。
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします
二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位!
※この物語はフィクションです
流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。
当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる