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第2章 宿屋
商業ギルド再び
しおりを挟む精龍亭については、昨日のパーティーの時、ガンマさんとリーザさんに時々の掃除だけお願いしておいた。
どういうわけか、最後の最後までリーザさんに『いつでもウチに料理作りに来なさい』って言われ続けたが。
そして今日はギルド回りだ。
まずは商業ギルド。
当然のように副ギルド長に挨拶しに行く。
髭を生やしてガサツそうだが、仕事は丁寧なのでこの人に言っておけば間違いはないのだ。
「副ギルド長、お久しぶりです」
「おう、シーマか。宿屋の評判がなかなかいいみたいじゃねえか。料理が美味いって噂だぞ」
「そうは言っても朝食しか出してませんでしたからね」
「無理に背伸びする必要はねえんだよ。やれることをやればいいのさ」
「そうなんですよね。アレもコレもやるとなると自分の首を絞めますから」
「わかってるじゃねえか。それで今日はどうした?」
いつもと変わらない副ギルド長のやり取りにホッとしてばかりはいられない。本題に入らないとな。
「実は、2年ほど宿屋を休業して冒険に出ようかと」
「………やっぱりセレナのことか?」
俺の隣りにいるセレナをチラッと見て副ギルド長が言う。
さすがにわかっちゃうんだな。
副ギルド長の名はダテじゃない。
いっそギルド長になればいいのに。
「まぁ、そんなとこです。2人で強くなろうって決めたんです」
「そうか。残念だがしょうがねえな」
「いろいろとしてもらったのにすみません」
「気にすることねえだろ。お前達がいない間、俺らもたまに見回りくらいはしといてやるよ」
「いえいえ、そこまでしていただかなくても…」
「いや、これは俺の打算なんだわ」
「打算ですか?」
「あぁ。
なぁシーマ、いい街の条件って何だと思う?」
「治安ですか?」
「それもあるだろうが、俺の答えは違う」
「それは何でしょう?」
「いい店があることだ」
なるほどな。
一理ある。
「いい店ですか…」
「そうだ。いい店は客を呼ぶからな。
人が増えれば他の店も増える。そうやって街は賑やかになっていくんだ」
「確かにその通りですね」
「そこでお前の宿屋だ」
「えっ?」
「人気も実力もあるアイゼンの幻陽が入り浸り、新進気鋭のエリシオンとも仲がいい。そんな宿屋をほっとくわけにいかんだろ!」
「どこでそんな話を…」
「ギルドは情報が命だからな」
「さすがに買い被りすぎだと思いますけど」
「そんなことないと思うぞ。だからこそ俺が目をかけるんだ。誰にも譲らん。それが俺の打算だ」
「…」
ここまで言い切られると返す言葉もないな。堂々と褒められた後の小っ恥ずかしさだけが残る。
「とりあえず早く強くなって帰って来い。それはこの街のためにもなるからな」
「はい。帰ってきたらまた伺います」
「おう。楽しみに待ってるぞ!」
振り返ってギルドの入口へと進むがどこか足取りが軽く感じられる。
背中を押されるとはこういうことなのかもしれないな。
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