望みの果てに得たもの

げっぱー

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2話

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 カラーン、カラーン・・・鐘の音が鳴る。

 「え~、訓練を始める前に何故、訓練が必要であるのかを理解を深めてもらう。え~、武具、防具、魔術やスキル等、今日に至って発展する事となった要因を、あ~、誰か?」と辺りを見回す。

 「ぐぅ~・・・すぴ~」

 「「「「は~い」」」」大勢の生徒が挙手する。

 「ぐぅ~・・・すぴ~」

 「ではシホ君」

 「かつてこの大陸はセトと呼ばれた王国がありました。ひとつの国しかなかったので大陸もセトと名付けられそこに住む人々は飢えることもなく平穏に暮らしていました」

 「はい、今の話はこの世界で一番最初に誕生したといわれています。続きをセサル君」

 「ぐぅ~・・・すぴ~」

 「はい、ある日、大陸東部で漁をしていた漁師が沖に大きな渦を見つけたんです。その渦が徐々に広がって大騒ぎ。数日後、大きくなった渦から9体の魔物が姿を現したんです」

 「そう!魔王の出現ですね。次をセイコ君」

 「・・ゴブリン王フーヤーン、コボルト王クォリョギ、オーク王ガミジ、オーガ王ミーヤケーン、ミノタウロス王ゴークーン、女蛇王ドユーミ、トロル王ヴァンドゥ、魔竜王マーコウ、髑髏王ゴルド=ムートッ・・」

 「くか~・・・」

 「この9体の魔王が眷族及び数多の魔物を大陸中に放ち王国は大混乱となり未曾有の危機に陥ることになりました。何故か?アツオ君」

 「今の僕達には信じられないのですが、当時の人々は魔物を見たことがなく、争うこともなかったのでまともに戦うことができなかったからです」

 「この時代では儀礼用の武具や防具が少々あった程度で無いよりはあった方がましといった位で攻撃魔法も開発、発展しておらず蹂躙されるしかなかったのです。しかし、時のセト王はある日、奇跡を起こしたのです。え~、シロウ君」

 「大地の神デリエラ様に人々の救済を願い祈り続けた時、デリエラ様から救済する為の神託がもたらされました。人と神の初めての交信です」

 「ギリギリ・・・」歯ぎしりの音がする。

 周囲の温度が冷ややか下がる。そんな雰囲気を纏い50代半ばの白髪の割合が4割を締めた茶髪、サラリーマンスーツに緑色のマント、足首まですっぽりと入るブーツ、左手に教科書を持ち右手に太さ2cm長さ30cm先端に黒い石のついた棒=汎用型魔杖をくるくる回しながら惰眠を貪る生徒のもとへ近づき、杖で2、3度コンコンと小突く。

 「起きたまえ」

 しかし生徒に起きる気配がない。ピキっ・・先生のこめかみに血管が浮き上がる。さらにピキっ・・ピキっ・・・ビキィと眉毛から頭髪までの顔前面に無数の血管が荒ぶる怒りを解放しろと主張していた。まわりの生徒達も静かに固唾を飲んで見守っている。

 「ショックボルト」

 おもむろに杖を振り上げ通常より多く魔力を込めて眠る生徒に振りかざし、呪文を唱えその力を解放する。

 「ほぎゃあぁぁぁ」

 「目が醒めたかね?タダトシ君」
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