真実の愛がどうなろうと関係ありません。

希猫 ゆうみ

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18(リディ)

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「あのさぁ。君は毎日どこへ行ってるの?」

テーブルで不貞腐れるのが自称私の夫サディアスの日課。
真実の愛を証明する為に日々計画を練っているらしいが、未来というか只の夢幻。空想。妄想。

そんな使えない元貴族のサディアスに毎日食べ物を用意しているのがこの私。
元村人で、元メイドで、現在妊婦の私リディ。

「どこへって、いろいろよ。パンや肉や果物をただ貰う訳にはいかないの。お礼に掃除したり、洗濯や料理を手伝ったりしているの。忙しいのよ」
「家以外でも掃除や料理を?」
「ええ。今言ったけど、食べ物を貰うお礼に余所でも召使してるの。おわかり?」
「ふぅん」
「まあ、家での掃除が一番無駄だけどね。だって私の御主人様は王様になる夢を見る以外のお仕事が何もできないし?」
「僕が平民に頭を下げたのは無駄だったって言うわけ?」

私は天井を仰いで笑ってしまった。

「いやだ。このお坊ちゃんったら、塩さえあれば肉や魚が沸いて出ると思ってるのかしら」
「貰う必要ないんじゃないかな?もう野菜を育てているんだし」
「私がね。でも、パンと肉と魚は恵んで貰うしかないし、家で育てられる野菜以外の野菜と果物は貰うしかないのよ。家は普通の平民以下の貧しさだから」
「それにしては君、最近太ったようだけど」
「……」

笑っていられなくなる。
なんだったら、絞め殺してやりたくなる。

私が悪阻の時も、具合が悪いなら仕方ないと恩着せがましく言って少し家のことをやったくらい。幸い悪阻は軽い方だったらしくすぐ復帰できたものの、その間、家も畑も荒れてしまった。

サディアスは私が私たちの子どもを産み落とすまで気づかないかもしれない。

「僕に隠れて余所で食事するのは構わないけど、相手はよく考えてほしい。それに、その間は僕が寂しく家で待たされているのを忘れないでほしいな」
「本当に馬鹿なのね」
「うん。僕を罵倒して楽しいなら好きにして」
「ふん。私が余所でタダ飯を食らっていると思っていたいなら好きにして」
「タダとは思わないけど」
「……は?」

サディアスの含みのある言葉に私は忽ち憤怒した。
但し今の体で怒りに任せて怒鳴り散らすのは危険だということも弁えていた。この男の血を引いていようとも、私の子を危険に晒したくはない。

私は必死で我慢して問いかける。

「私が浮気していると思っているの?」
「……」

答えない。

「なんとか言いなさいよ」
「……」

まだ答えない。
感情に流されないよう気を付けていたのに涙が溢れる。

「私が体を餌に食べ物を恵んでもらってると思ってるわけ!?」
「君がそう言うなら、そうなんじゃないかな?」
「はあっ!?」

悔しくて悲しくて、私はそれ以上立っていられなくなりその場に蹲る。

母親になるんだからしっかりしなきゃ。
そう思うのに、耐えられない。

「サディアス……あなた、なんなのよ……っ」
「僕は君の夫だよ。だから、君がメイドでも愛したし、君が僕を罵倒しようと許すし、他の男に体を許した後だって受け止める」
「……まあ、ね……私の体にあなた以外が居座っているのは事実だけど……」

私は泣きながら笑っていた。

「やっぱりね。それで、相手は?ワイラー?」

産まれた子にはワイラーって名付けてやろうかしら。

「いいえ。ヒルダよ」
「ヒルダ?」

女の名前に驚いたのかサディアスがやっとこちらを向いた。
そして動揺する。

「リディ……!ど、どうしたんだい!?」

私はお腹を抱え泣き笑いしながらサディアスに怒鳴り返す。

「後悔したくなかったら今すぐヒルダを呼んできてよ!!」
「わ、わかった……!」

これでわかったのだろうか。
私が股から血を流して、今にも死にそうな顔をして、やっと。

「……っ」

一応は大慌てでヒルダを呼びに出て行ったのだから、誰かは連れ帰るだろう。私はもう自分で自分の面倒を見られる状態ではない。

「……頑張ってよね……」

お腹の子に声を掛け、私は意識を手放した。
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