真実の愛がどうなろうと関係ありません。

希猫 ゆうみ

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31(レジナルド)

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宮殿に招かれての年越しとなった為、当然、宮殿で開かれた新年の祝宴も引き続き招かれている。
それで普段よりも情報量が多かったことが理由の一つでもあるだろう。かつて妻フェルネの婚約者であったサディアスという男の父親、エヴァンズ伯爵ブライン卿の訃報が耳に入った。

「……あら」
「ふむ。少なくとも余計な王位継承権より重大だな」
「ええ」
「一度は義理の父になるという前提のもと短いとは言い難い月日を過ごした相手だろう」
「ええ」
「息子の方はどうあれ、弔いに」
「ええ」

亡き母と弟への敬意に胸打たれた私は、フェルネのエヴァンズ伯爵に対する表面化しない心情を慮らずにはいられなかった。

私たちが結婚するきっかけでもあった婚約解消そのものには恩など感じないが、エヴァンズ伯爵のパートランド伯爵家への対応は評価するに余りある。問題の息子を勘当、相手のメイドを追放、その上で莫大な慰謝料を支払っている。

私たちの結婚式に招かないのは当然として、祝辞の無いのは先方の気遣いと判断していた。人知れず病床に臥せっていたとなれば祝辞に気が回らずとも不思議ではない。

息子の方はどうあれ、父親の方はまともな貴族だった。
息子の方が野垂れ死んだとしてもどうでもいいが、父親の方は悼むべきであると私は思う。

「私が同伴するのはどう思う?エヴァンズ伯爵夫人からすれば、息子の後釜に割り込んだ先祖の因縁を背負う男だろう」
「正確には息子の捨てた釜を拾った先祖の因縁を背負う男よ」
「重要なのはそこか」
「ええ。でも、あなたを隣に立たせて夫人にものを言ったらそれはやや意地悪ね」
「では遠慮する。一人で行くか?」
「父を探す。父は亡きエヴァンズ伯爵自体に悪い印象を持たなかったから」

新年、全ての貴族が招かれている。事情によって辞退した家はエヴァンズ伯爵家だけではない。寧ろ私の父が未だに悲しみに暮れ王家の招きさえ辞退しているが、それは今どうでもいい。

私の義理の父となったパートランド伯爵は派生的に時の人であり、すぐに見つかったが人だかりから引きずり出す必要があった。

「なんだって!?」
「お父様、お葬式に間に合うかしら」
「冬だから腐敗は一年で尤も遅い」

私が添えた一言に複数の非難の目が向けられたが、妻と義理の父親は気に留めず、未亡人はこの場にいないのだから気にする程のことではない。事実である。

重大な事情によって新年の祝宴を早々に辞することとなったバラクロフ侯爵夫人フェルネ、つまり私の妻だが、誰からも咎められず、寧ろ王家からの弔辞を託される形となり格が上がった。
更には自身に無礼な婚約解消を叩きつけた伯爵家に対する寛大且つ慈悲深い弔意と受け取られ、株も上がった。

妻フェルネとパートランド伯爵夫妻を見送った私に待っていたのは、時を越えた真実の愛に加算された現代の慈愛に群がる有象無象の賞賛だった。

謙虚な微笑みという仮面を被るくらい造作もない。
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