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婚約者編
結婚
しおりを挟む一週間前に二年間通った王立貴族学園をアマリリスとレオナードは、卒業した。
そして、三日前には、この国のイベリス領とエビスシア国とを結ぶ橋が完成した。この橋は、レオナードとコーリキュラの主動で行われた。この大陸とエビスシア国の大陸がまた一つの橋で繋がったのだ。この国とエビスシア国との行き来が以前に比べ多くなった。以前は、国境に山脈があり、山の登り降りがあった。それが、今では、橋を渡るだけで済む。
そして、今日は、アマリリスとレオナードの結婚式。
アマリリスは、特に刺繍やレース等もないシンプルな白のスレンダーラインのウェディングドレスを着ている。首には、真珠のネックレスを付け、耳には、真珠のイヤリングを付けている。これは、レオナードが海に落ちた時、取ろうとしていた真珠。レオナードは、海の中に白く光るものを見つけて取ろうとして海に落ちた。泳げるようになってから、取りに行ったら、それは、貝の中に入った真珠だった。なんと、あの海では、真珠が取れるということがわかった。イベリス領は、大喜び。今日のアマリリスが身に付けてる真珠は、レオナードが見つけた真珠とイベリス領からお祝いで贈られた真珠で作ったもの。
アマリリスとレオナードは、王宮内にある教会で、結婚式を行い、永遠の愛を誓った。
なんとライトお爺さんが参列していた。結婚式後、アマリリスは、ライトお爺さんの側にドレスを持ち上げ、レオナードと駆け寄る。
「ライトお爺さん! 何で?」
するとライトお爺さんの後ろから、王が現れた。
「アマリリス嬢、叔父上を知っているのか? ライトール叔父上は、先代の王の弟だ」
アマリリスとレオナードは、驚く。ライトお爺さんは、王族だった。アマリリスは、ライトお爺さんの姿を見る。正装しているライトお爺さんは、いつもの優しさそうな品のあるお爺さんだけでなく、貫禄がある。アマリリスとレオナードがライトお爺さんが、街に住んでいることから勝手に平民だと思っていた。王族とわかり、今までの言動に納得した。
「すまないな。隠していたわけではない。今まで通りよろしく頼む。おめでとう、殿下、アマリリス嬢」
優しい眼差しで微笑む。
そして今から、王都内をパレードし、民達にお披露目。アマリリスは、レオナードの馬チェリーにレオナードと一緒に乗る。ウェディングドレスのままだ。本来は、馬車なのだが、アマリリスとレオナードは、民達へのお披露目の後、そのまま、今日は、森の洞窟に泊まることにした。以前から、レオナードは、森の洞窟に泊まってみたかったのだそうだ。
アマリリスは、警備を心配したが、アマリリスには、あの森の加護があるとライトお爺さんから聞いていたため、安全だとレオナードが言う。それもそうねとアマリリスは思い、レオナードの提案を受け入れた。そのため、馬チェリーには、寝袋や着替えも積んでいる。
騎士を先頭にその後ろにクゥーが続きその後ろにアマリリスたちが乗る馬チェリーが続く。アマリリスたちの両脇には、馬に乗ったアレルとリサがいる。ぴーちゃんは、クゥーの頭の上に乗っている。沿道には、沢山の人たちが見に来てくれていた。アマリリスとレオナードは、沿道に見に来てくれた人たちに手を振る。
「メル、おめでとう」
「メルちゃん、おめでとう」
という声が聞こえてくる。「聖女様」という声も多く聞こえてくる。アマリリスの作る薬は、万能薬であり、人の身体を癒している。アマリリスのホープの演奏は、人の心を癒している。まさに聖女のような存在。民からは、聖女のようだと崇められている。
「ねぇ、レオ。あそこに、孤児院の子供達と神官がいるわ」
手を振っている。アマリリスとレオナードで、そこに満面の笑みを浮かべ、手を振る。
「あっ、八百屋のハルさん、肉屋のボブさんもいるわ。本屋のボブさんもいる」
手を振っている。アマリリスとレオナードで、そこに満面の笑みを浮かべ、手を振る
アマリリスとレオナードが結婚する日程が決まった時、姿が公表された。しかし、平民メルが公爵令嬢アマリリスだとわかっても、皆、驚かなかった。孤児院の子供達も街の八百屋のハルさんや肉屋のボブさんもだ。
「驚かないよ。だって、メルちゃんは、かわいくてお姫様みたいだったから」
マリーは、笑顔で言う。
「やっぱりね。メルは、貴族だと思っていたよ。それに、メルは、万能薬を作り、ホープの演奏もする。いずれ、この国の国母になるんじゃないかとも思っていたよ」
ハルさんもボブさんも笑顔で言う。
(凄い、ハルさんもボブさんも予知できるんですね。なんだ、皆気付いていたのね。それでも私の自称平民に付き合ってくれていたのね。ありがとう……)
アマリリスの心は温かくなる。
王都内のパレードが終わると、騎士達とアレル、リサと別れた。
今、アマリリスたちは、クゥーとぴーちゃんと一緒に森の洞窟にいる。日も暮れ、辺りは暗くなっている。洞窟の前の庭で、焚火をする。すると、クゥ―がアマリリスたちのところへ来た。そしてクゥーの頭の上に乗っているぴーちゃんは、口ばしに種を加えていた。アマリリスは、それを受け取った。
「ありがとう。ぴーちゃん、クゥー」
ぴーちゃんとクゥーからのご祝儀のようだ。ぴーちゃんが口ばしで土を叩く。植物を育てていない開けた場所だ。アマリリスは、その場所にレオナードと一緒にその種を埋めた。
「星がきれいだな」
「うふふ、そうでしょう」
夜空には、満天の星があった。二人で空を見上げている。
「今日から、夫婦だな」
アマリリスは、少し顔を赤らめ、照れながら頷く。
(屋根裏部屋で生活していた私が、レオの隣に立てるなんて……。あの時、思い切って家を出て正解だったわ。……うふふ、身分差で悩んだこともあったわね。本当、今が夢のようだわ)
「幸せだな」
「えぇ、幸せね」
「民が身体も心も穏やかに過ごせる幸せな国にしたいな。一緒に頼むな」
(自称平民メルになり、この国の民の生活がわかった。貧しい生活をしている民は沢山いる。孤児院の子供たちの貧しさ、教養のなさもわかり、レオと共に少しは改善できたわ。病気で苦しんでる人もいる。私の薬やホープの演奏で、身体も心も穏やかに過ごせてもらえたら、嬉しいわ。これからもこの国の民のために私ができることをしてあげたい。皆が幸せになれるように。聖女と私を呼んでくれている民のためにも……)
自称平民メルをしていた時の生活が走馬灯のように思い出される。アマリリスは、頷き、微笑む。
「えぇ、もちろんよ」
アマリリスたちは、キスをし、焚火を消し、洞窟の中で眠りについた。
翌朝、緑のカーテンから、光が差し込み目を覚ます。レオナードが、
「リリー、外に来てくれ」
アマリリスは、外に出る。なんと昨日、ぴーちゃんとクゥーからもらった種から大きな木が育っていた。その木は、この森の木にはないくらい幹が太く、枝も太く、堂々とした木だった。
「レオ、この木、堂々としているわね」
「本当だな。木の王様といったところか」
二人で顔を見合わせて笑った。堂々とした大きな木が育っているだけでなく、なんと洞窟の前には、動物達からのご祝儀だろうか。植物の種や胡桃などの木の実、きのこ、花等が山のように置いてある。
「凄い、動物達からかしら」
「そうだろうな」
(ありがとう、動物さん達……)
アマリリスとレオナードは、贈られた植物の種を一緒に庭に埋め、微笑みあった。
「うふふ、どんな植物が育つのかしら。楽しみね」
「そうだな。楽しみだ」
【完】
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