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第五話『本当の気持ち』
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「ほんと、なんなのあいつ」
帰宅した後も、悠斗の怒りはなかなか鎮まらずにいた。
あれから悠斗に「ここにあいつの車ある? なにか聞いてる?」と質問されて「知らない」と答えると「じゃあ念のため全部ナンバー控えとこっと」と駐車場にあった車の写真をパシャパシャと撮り、そのそつのなさ呆然としていた瑛の手をぐいぐい引いて蔵川家へと帰った。
「警察にも十分届けられると思うけど、どうする?」
「いや、いい」
「わかった」
瑛の一言を、それ以上何も言わずに受け止めてくれた悠斗だったが、眉間に刻まれた皺はまだ深い。
悠斗がこれほどまで怒りを沸々と滾らせている姿を見るのは生まれて初めてだったので、先ほどの一幕といい、また自分の知らない新たな一面を垣間見た気分だった。
この数ヶ月でインフレを起こしているなと内心で苦笑する。
「ごめん、変なところ見せて」
「アキちゃんが謝ることじゃない。あんなのどう見たってあっちが100%悪い」
悠斗は瑛の言葉を聞き咎めるようにぴしゃりと言い放つと、苦虫を噛み潰したような顔で続ける。
「T大のアメフト部ってよくない噂ばっかり聞くから、前に話してくれてから少し気になってたんだよね。ヤマの知り合いにT大の子がいたからそれとなく探ってもらったら案の定だもん。特にあの吉井って人、男女見境いがなくて有名だってすぐに名前が出てきたから」
もちろん瑛はそんな噂は露ほども知らなかったし、そもそもまさか吉井の関心が自分に向かっているだなんてこれっぽっちも思っていなかった。
同時に、こんな場面で山田の幅広い人脈が役に立つなんてと妙な感心も抱く。
「アキちゃん今日テストが明けて久々のバイトだったし。なんとなく心配で迎えに行っちゃったの」
悠斗は「でも、黙っててごめん。すぐに言えばよかった」とすまなそうにうなだれた。
「いや、正直どうしていいのかわからなかったから悠斗が来てくれて助かった。ありがとう」
あの瞬間、自分で最適解を見つけられたかというと正直自信がない。
今更になってどっと疲労感に襲われて、リビングのソファに腰を下ろす。
肉体的なダメージはもちろんだが、なかなか精神的にキツかった。
心の表面に薄い膜が張ったように居座る不快感が消えない。
思い出すと肩がうずいて、誤魔化すように立ったままでいる悠斗を笑って見上げる。
「それにしても漫画みたいな登場の仕方だったな」
あえて茶化して言ったが、悠斗は「ううん」と眉尻を下げて首を振った。
「逆にあんなタイミングでしか行けなくてごめんね」
「肩見せて」と言われるままにTシャツを脱いで、悠斗に肩を差し出した。
首を捻ってもよく見えないので「酷い?」と尋ねると、悠斗は小さく顔を顰めて「擦り傷と打撲かな」と答える。
「ちゃんと動く?」
「うん、それは平気」
「よかった。でも、痛いよね。ほんと最低」
再び目に怒りの色を浮かべた悠斗に、「もうそんなに痛くないから」となだめるように笑う。
すると悠斗は一瞬泣き出しそうな顔をして「待ってて、救急セット取ってくる」とリビングのクローゼットへ向かった。
帰宅した後も、悠斗の怒りはなかなか鎮まらずにいた。
あれから悠斗に「ここにあいつの車ある? なにか聞いてる?」と質問されて「知らない」と答えると「じゃあ念のため全部ナンバー控えとこっと」と駐車場にあった車の写真をパシャパシャと撮り、そのそつのなさ呆然としていた瑛の手をぐいぐい引いて蔵川家へと帰った。
「警察にも十分届けられると思うけど、どうする?」
「いや、いい」
「わかった」
瑛の一言を、それ以上何も言わずに受け止めてくれた悠斗だったが、眉間に刻まれた皺はまだ深い。
悠斗がこれほどまで怒りを沸々と滾らせている姿を見るのは生まれて初めてだったので、先ほどの一幕といい、また自分の知らない新たな一面を垣間見た気分だった。
この数ヶ月でインフレを起こしているなと内心で苦笑する。
「ごめん、変なところ見せて」
「アキちゃんが謝ることじゃない。あんなのどう見たってあっちが100%悪い」
悠斗は瑛の言葉を聞き咎めるようにぴしゃりと言い放つと、苦虫を噛み潰したような顔で続ける。
「T大のアメフト部ってよくない噂ばっかり聞くから、前に話してくれてから少し気になってたんだよね。ヤマの知り合いにT大の子がいたからそれとなく探ってもらったら案の定だもん。特にあの吉井って人、男女見境いがなくて有名だってすぐに名前が出てきたから」
もちろん瑛はそんな噂は露ほども知らなかったし、そもそもまさか吉井の関心が自分に向かっているだなんてこれっぽっちも思っていなかった。
同時に、こんな場面で山田の幅広い人脈が役に立つなんてと妙な感心も抱く。
「アキちゃん今日テストが明けて久々のバイトだったし。なんとなく心配で迎えに行っちゃったの」
悠斗は「でも、黙っててごめん。すぐに言えばよかった」とすまなそうにうなだれた。
「いや、正直どうしていいのかわからなかったから悠斗が来てくれて助かった。ありがとう」
あの瞬間、自分で最適解を見つけられたかというと正直自信がない。
今更になってどっと疲労感に襲われて、リビングのソファに腰を下ろす。
肉体的なダメージはもちろんだが、なかなか精神的にキツかった。
心の表面に薄い膜が張ったように居座る不快感が消えない。
思い出すと肩がうずいて、誤魔化すように立ったままでいる悠斗を笑って見上げる。
「それにしても漫画みたいな登場の仕方だったな」
あえて茶化して言ったが、悠斗は「ううん」と眉尻を下げて首を振った。
「逆にあんなタイミングでしか行けなくてごめんね」
「肩見せて」と言われるままにTシャツを脱いで、悠斗に肩を差し出した。
首を捻ってもよく見えないので「酷い?」と尋ねると、悠斗は小さく顔を顰めて「擦り傷と打撲かな」と答える。
「ちゃんと動く?」
「うん、それは平気」
「よかった。でも、痛いよね。ほんと最低」
再び目に怒りの色を浮かべた悠斗に、「もうそんなに痛くないから」となだめるように笑う。
すると悠斗は一瞬泣き出しそうな顔をして「待ってて、救急セット取ってくる」とリビングのクローゼットへ向かった。
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