上 下
84 / 186
五章.サロン・ルポゼとストライカー

五章 サロン・ルポゼとストライカー⑪

しおりを挟む
「ここは自律神経を整えてくれる反射区です。ここにお疲れの様子が見えたということは、進藤様自身ではコントロールできない、神経的な部分に反応があると考えられます。こんなことを聞くのは失礼ですが、今何か悩んでいることとかありますか?」

「悩みか……すごいね、リフレクソロジーは。内面のことまでわかるなんてさ」

「では、やはり何かお悩みが?」

「まあ自分で言うのも何だが、ここまでオレはサッカーにおいて自信を失ったことはなかった。いつでも強気だったし、周りからも一目置かれていたんだ」

 スムーズに話し出すと同時に、進藤の表情がガラリと変わった。
 今までの陽気な顔色から、険しい顔つきに変化している。

「言ってしまえば順風満帆だったのさ。それが今シーズンに入って、何かが違うことに気づいた。まったく点は取れないし、試合も途中交代が多くなってね」

「プレッシャー……ですか?」

「認めたくはないが、そうだろうな。確かに、結果が出せないでいる状態に焦っていたのかもしれない。そうは思わないようにしていたけど、お兄さんに言われて納得したよ。見えないところで神経を尖らせていたんだ」

「それが影響して、疲れが取りにくくなったり、体重が落ちやすくなっていったと」

「そういうことだろうな。実はね、移籍の話も結構胸にきたんだよね。チームからもう要らないって言われてさ。メディアとか周囲の人には強がったけど、内心はどんよりしちゃってた」

 去年まで第一線で活躍していた選手が、ちょっと調子を崩しただけでこんな待遇になるとは、どれほど厳しい世界なのだろう……。
 住む世界が違う話とはいえ、スイもこれには同情するしかなかった。
しおりを挟む

処理中です...