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五章.サロン・ルポゼとストライカー

五章 サロン・ルポゼとストライカー⑫

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「なんてね! ちょっと誰にも言わないでよこんなこと! 仮にもオレは、日本のエースって呼ばれているんだからさ。今は風当たりが強いけど、その内海外に行って大活躍するからね!」

「進藤様……どんなに図太い人間でも、自律神経というのはあります。自分の意志ではコントロールすることができない神経が。進藤様はお立場上、強くいなければならないと思います。それでも、辛い時は誰かを頼ったっていいんです。愚痴を言ったり弱みを吐くことによって、ストレスは軽減していきますから」

「誰かに頼る……か。そうだね、自分の弱さを認めないとな」

「進藤様はお強いですよ。普通だったら、日本の期待を背負えませんから」

 ナーバスだった内容も、次第に平らかになっていく。
 心のゆとりをアドバイスできて、スイは一安心できた。
 最後のクロージングに、進藤が持っているハーブティーを活用する。

「進藤様、お持ちのハーブティー、そちらはカモミールのハーブティーでございます。こちらは自律神経を整える効果が期待できると言われております」

「なるほど、ここまで心遣いしてくれてありがとう。ハーブティーか、生活に取り入れてみようかな」

「それはオススメです。ノンカフェインですし、セラピー効果も期待できますしね。ちなみに、こちら当店でも買えますよ」

「お兄さんに乗せられたな。よし、わかった。このカモミールをあるだけ買おうかな!」

 さすがは、プロのスポーツ選手だ。
 その豪快なお金の使い方は、スイの予想を遥かに上回った。一個とか、せいぜい二個とかだと思っていたのに、まさかこのお店の在庫分を買ってくれるなんて。
 進藤が格好を直している間に、スイは在庫全てのカモミールを集めた。
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