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# 春

新生活②

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 入来ちゃんからは、小動物のような愛らしさを感じる。
 グループワークの時も、主張する時は一生懸命に身振り手振りで伝えていた。
 控えめだけど、頑張り屋さんな彼女を見ていると、守ってあげたいという気持ちが生まれる。
 なんだかんだ、このチームは波風が立つことなく進んでいけるだろう。

「それでさ、何でみんなはリフレクソロジストを目指してるの?」

 司会の戸部君が持ち出した次のテーマは、リフレクソロジストを志した理由。
 私はこの場で、その質問を真面目に答える気はなかった。
 ユウキにさえも理由を話そうとしなかったのに、昨日出会ったばかりの二人には上手に説明ができない。
 存在感を消さないように、聞き役に徹する。

「じゃあ、入来ちゃんから」

 戸部君からトップバッターの指名を受けると、入来ちゃんはビクッと驚いた反応をみせる。
 その仕草に、体の芯まで癒された気持ちになれた。

「わ、私はね、実家が整骨院なの。父が整体師なんだけど、お店にリラクセーション要素を取り込みたいって言い出して。仕方なく私が資格を取ることになったんだ」

 このタイミングで、何か質問をする。
 これが聞き役の立ち回り方だ。
 意気揚々と口を開こうとした瞬間、戸部君が私の存在をかき消すように、続けて質問を投げかける。
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