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# 春

予期せぬエラー①

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 五月病というのは、私なんかを相手にはしない。
 ゴールデンウィークという年に一度しかやって来ないご褒美も、そのほとんどの時間を予習復習に充てた。
 完璧に整理された状態のはずなのに、連休明け早々に先生から実技のダメ出しを喰らってしまう。
 
 余程自分は、才能がないらしい。
 頭では理解できているのに、手が上手く反応しない。
 勉強みたく、やった分だけできるというわけではなかった。
 ガムシャラにリフレクソロジーと向き合う日々が、時の流れを加速させる。
 
 そして六月……私たちは初めて、学校行事に参加することになった。

「出張セラピー!?」

 先生が発表したイベント名を、戸部君がさらに大きい声でオウム返しする。
 あまりにも大きなリアクションにイラっとしたのか、先生が目を細めながら戸部君を睨みつけた。

「戸部君、オーバーリアクションですよ」

「あ、すいません、つい。それで、出張セラピーって?」

 本当に悪いと思っているかは定かではないけど、とにかく先の話を引き出したいのだろう。
 戸部君の視線は、先生の目を一向に逸らさない。

「では改めて。そろそろ皆さんも施術に慣れてきた頃でしょう。そこで、我が校が提携している企業へ出張して、実際にリフレクソロジーを施してもらいます」

 この学校に来て初めてのイベントは、遠足とか学祭みたいな、明らかに楽しめるといった内容ではない。
 というか、ただの授業の一環だろう。はたしてイベントと呼べるのか、甚だ疑問だ。
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