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# 春

予期せぬエラー②

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 その後の話し合いで、私たちのチームが出張する企業が決まった。
 『オオヌキ出版』という、ここの学生だったら一度は聞いたことがある出版社。
 リフレクソロジーのテキストは、この会社が出版したものを使っているから。
 
「それじゃあ、俺が施術するってことで良いね?」

「異論なし」

「私も、ナオちゃんと同意見」

 三人の中から、代表者が決まった。
 チームで企業に出張をするが、施術をするのは一人のみ。
 もちろん、技術が一番ある戸部君にその役を任せて、私と入来ちゃんはサポートに回ることになった。

 その日からの自主練は、戸部君の施術を中心に行うことに決めた。
 今日もいつものように、私たち以外は誰もいない教室で、黙々と技術向上に努めている。

「ていうか、一人しか施術できないなら行く意味なくない?」

 入来ちゃんの足裏に向かって、じんわりと指圧を与えながら、戸部君がブツブツ文句を言い出した。

「しょうがないよ、企業の方も忙しいんだし。しかも人事担当の方が受けてくれるんだって。上手くいけば就活に繋がるかもしれないよ」

「入来ちゃん、実家継ぐんでしょ? それに出版社に勤めてどうするのさ。せっかく資格を取る予定なのに」

 珍しく、戸部君が的確なツッコミを入れる。
 戸部君の刺激がよっぽど心地良いのか、入来ちゃんの頭は機能していないみたいだ。

「でも、ナオちゃんは良いの? 施術してみたいんじゃない?」


 戸部君は指を動かすことを止めないまま、私を横目で見ながら会話に入れてくれた。
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