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# 冬

揺れるクリスマス⑥

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「ごめんね、確かにあのおばあさんの施術が、ユウキと重なったのは事実。でもそこに恋愛感情はないよ。それだけは、信じてほしい……」

「……わかった。俺も急にごめん。疑っているわけじゃないんだけど、無理して付き合ってくれてたら、ナオちゃんに悪いしさ」

「無理なんてしてないよ! 私はちゃんと、戸部君が好き」

「そっか……だったら良かった!」

 お互いに心の内をさらけ出して、また一歩近づけたと思う。
 手を繋いで、再び夜の街を歩き出すと、戸部君がネオンカラーのライトを見つめながら口を開いた。

「明日はクリスマスイブか……」

 リフレクソロジーに追われる毎日で、世間のことなんて全然考えていなかった。
 戸部君にプレゼントする物も、まだ何か決めていない。
 この様子だと、戸部君もまだ用意してないようだ。
 私は戸部君の欲しいものが予想もできないので、単刀直入に聞くことにした。

「戸部君、クリスマスプレゼント、何が欲しい?」

 そう言うと、戸部君は嬉しそうにハニカミながら、またもや歩いていた足を止めた。
 私もそれに合わせて、歩くのをやめる。

「戸部君、また止まるの? 今度は何よ?」

「プレゼントなんて要らないよ。ナオちゃんが居てくれたらそれでいい」

 ゆっくり近づきながら、甘いセリフを囁いた。
 私との距離が、段々と近くなってくる。
 顔が目の前に来た時に、戸部君が何をしようとしているか把握した。
 私は全身でそれを受け入れて、優しく目を閉じる。


 唇に生まれて初めて、人肌を感じた……。
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