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四歳
春が訪れる前⑧
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学校に通っている子どもたちが戻り、夕食作りが開始されるであろう時間帯を見計らい、孤児院の施設の中に戻りました。
さすがにずっと外にいるのは辛いです。
しかしながら、副院長は本日の夕食係の一員から外されたようです。
おまけに、院長先生がまだ帰ってなかったこともありまして。
私の前ではいつも不機嫌な副院長に、間抜けにも捕まってしまいました。
「あなたはどうしていつもいつもっ ――― 」
私は今、副院長にがみがみ怒鳴られています。
彼女も自分のそんな姿を他の子どもたちに見せるのは憚られるのか、二人きりの部屋の中でね。
毎度吐かれる台詞は、途中から聞き取れません。私自身リスニングが苦手な性質なのもありますが……。彼女が憎悪の炎で熱くなりすぎて、マシンガントークすぎて、理解不能です。
推測するに、毎回内容は似通ったものでしょうけどね。
言うなれば、「ありとあらゆること全てにおいて私が悪い」との説を、熱弁している感じなはずです。もしくは、彼女の立場上、子どもに発言すべきでない悪口をぶつけられている感も否めません。
ですが、これくらいならまだましな部類ですよ。彼女の私への理不尽な仕打ちの中ではね。
それに、今はバイオレンス行為もない可能性が高いので、安心できます。
お昼寝していた子どもたちが目を覚まし、学校から年上組の子たちが戻ってきたなら、副院長も私だけに構ってられません。拘束される時間も短いはずです。
現に、部屋のドアがノックされる音が聞こえました。
「副院長先生いますか?」
次いでドアの向こうから聞こえるのは、孤児院の誰かの声です。
「ええ。少し待って ――― 。今行きます」
今まで罵詈雑言で怒鳴っていたはずの口から、実に優し気な言葉が流れます。
副院長の切り替えは、驚くほどすさまじいですよ。先ほどまで醜悪な仮面を張り付けていたとは思えない、実に見事な豹変ぶり。
私以外の子どもたちには、こうやって落ち着いて穏やかな人物になれるのですからね。
傍目から見れば、子ども好きな・優しい・しっかりした女性に、思われているのやもしれません。
ですが、正真正銘そのような人物であるわけはありませんよ、私にとってはね。
睨みつけて舌打ちするような人が。
私への嫌がらせが物足りず、少々油断していた私に後ろ蹴りをお見舞いするような女が。
聖母のような人物だとは、これっぽっちも思えるわけないですね。
私に一撃食らわせて一応満足したらしい彼女は、そのまま颯爽と部屋から出ていきました。
部屋に残された私は、床に尻もちをついた状態で、大きく息を吐き出します。
副院長、おそらく私の顔面に狙い定めてましたね。
かろうじて体を後ろに反らして、蹴りを食らったのは胸部付近となりました。回避を試みたとはいえ、まったく痛みがなかったわけではございません。
全く、容赦なく蹴りやがって……。
「っとに ” lemon ” みたいな女」
日本語で悪態をつき、やりきれない思いを消化します。
少しその場でぼーっとしてから、重い腰を上げて立ち上がりました。重く感じる脚で、部屋から出ます。
部屋を出ると、何やらどこかが騒がしい気がしました。
どうしたのか訝しんでいれば、その方向からマリエラが走ってきます。
私に接近するマリエラの表情は、どこか険しく感じました。
「リース、あっちに行こう」
「え?」
マリエラは私の手を握り、すぐに私を連れ出します。
「私たちはこっち」
使命感に燃えているようなマリエラは、私の手を取ったまま、ずんずん歩いていきました。騒がしく感じる場所から、どんどん遠ざかっていく気がします。
「マリエラ。どこ行く?」
「厨房。安全だから」
目的地を問えば、マリエラがゆっくりはっきりと答えを告げてくれました。
それにしても、安全が理由で厨房に行くとはどういうことでしょうか?
「なぜ?」
「院長先生が ――― 言った」
マリエラの返事は全て理解できませんでしたが、院長先生の指示だということは察します。院長先生、帰ってきたのですね。
マリエラはまっすぐ目的地に私を連れていくことに専念しています。
その熱意もあり、私は今の状況の経緯を深く考えるのをやめました。
正直、副院長とのことで、心身疲弊しすぎていて放棄してしまった感じです。
* * *
それから、厨房でマリエラと夕食作りのお手伝いをときどきしながら、時間は過ぎていきました。
夕食も入浴も、いつもより穏やかな気持ちで済ませました。
特に夕食は、なんだかストレスが和らいだ気がします。手伝ったことで、おいしさも一入でしたしね。
それもこれも、副院長の視線が全く感じられなかったのが要因でしょう。私への接近も、あの後ろ蹴り以降ほとんどありませんでしたね。
いつもは機会を見計らって、私にお小言を寄越す副院長ですのに。
ここまで何もないと、いっそなんだか不思議です。
ま、私にはすごくいいことなのは、間違いありませんよね。
そんな感じで、就寝する時間となりました。
副院長が私を目の敵にしてからでも、救いなことの一つは、夜は安心して寝むれることでしょう。
副院長は、孤児院に通いで勤めています。ですので、私たちの就寝時間頃には帰宅していくのです。
それらに関し、院長先生のように住み込みじゃなくて、朝早いし大変そうとか思ってあげていた時期もありました。ですが、今となっては副院長が住み込みでなくて最高でしたよ。
これで夜もおちおち眠れなかったら、確実に音を上げていたと思います。
大きな広間には、「道具」に入れていたこちらの世界版布団・毛布・枕の、寝具一式が広げられていきます。
たくさん敷き詰められた寝具一式で、川の字以上にして寝るわけなのですよ。
一応年上組の子たちになると、異性とは離れて寝るようになるみたいですね。それか、違う場所で寝る子もいるようです。思春期を迎えると、確実にそうなるでしょうね。
私含め年少組は、まだそこまで異性を意識していない気もします。
まあ、私は大抵壁際によって、隣にはマリエラが寝るのがほとんどですけどね。
「リース、おやすみ」
「おやすみ、マリエラ」
今晩も、壁よりに寝具一式を広げ、右隣にはマリエラの寝具一式が敷かれます。
大広間には真っ暗なゾーンと・豆電球くらいの明かりがあるゾーンと、そこそこ明るいゾーンが三つあります。
真っ暗と豆電球は、それぞれの寝やすさに合わせているのでしょう。
そこそこ明るいゾーンは、まだ起きている子たち用です。
子どもたちの就寝時間は、みな一緒ではありません。
年少組から早く寝ますけど。年上の子ほど、そこそこ起きていますね。
私といえば、毎日真っ暗闇ゾーンです。
豆電球ゾーンでも眠れなくはありませんよ。ただ、何の明かりもない方が、私には都合がよいのです。
今日はいつにも増して、午後くたくたになりました。
ですが、なかなか寝つけません。
右隣では、マリエラが布団に入って十分もせずに、すぐに規則正しい寝息を立てていました。それには、なんとなく安心感を覚えます。
こうして生まれ変わって、寝つきは大分良くなったと思っているのですが。
前世同様、当日起きた出来事を振り返る悪い癖が、私の眠気を邪魔します。
副院長が邪険に扱うのは、どうして私でなければいけないのでしょう?
なぜ、嫌いな存在には無関心ではいられないのですかね?
そんなことを考えていれば、芋ずる式に前世の嫌な過去を思い出してしまいます。
そして最終的に、彼のことで頭がいっぱいになるのです。結局私は、一日たりとも彼のことを思い出さないことはありません。
こちらの世界で、こんなに時が流れているのに、彼のことだけは頭から離れてくれません。
もうどうしようもできないのに。
二度と会えはしないのに。
何が真実であったか、確かめようもないのに。
だからこそ未練と後悔が募り、私から消えてはくれないものがあります。
彼の名前を、顔を、声を思い出すと、涙が出てきました。
疲れてくたびれた分、今夜は特に涙もろくなっている気がします。
こういう場合があるから、明かりない世界の方が、私には好都合なのです。
右袖を目に当て、涙を吸い取ってもらいます。涙を吸い込んだ部分は、やがて冷たさに変わっていくでしょう。
早く、孤児院を出たい。ここではないどこかに行きたくってしょうがありません。
いつか訪れるその日のために、遅々としていても準備していきましょう。
私の居場所は、ここではないのです。
とにかく、ここを離れて『一人でゆっくり過ごしたい』というのが、切実な願いです。
* * *
泣きながらいつの間にか眠ってしまったと気づいたのは、明け方でした。
空が白む早朝、違和感を感じて目を覚まします。
背中越しに、私の布団の中に誰かが潜り込んでいるのが分かりました。
寝ぼけ眼で、またマリエラが寝ぼけて私の布団の中に入ってきたのだろうと思います。そういうことはしょっちゅうあるのです。
けれど、右に寝返りを打つと、すやすやと眠るマリエラの姿がありました。
数秒フリーズします。
マリエラが右隣できちんと寝ているのなら、背中越しに感じる存在は誰なのでしょう。
いつまでもそのままではいられません。
思い切って後ろを振り返ります。
すると、見知らぬ男の子が気持ちよさそうに眠っていました。こんな子、孤児院にいましたっけ? 年齢は私とさほど変わらないでしょうか?
まあ、それはどうでもいいです。
確認すると、私の左隣の寝具が空となっています。ということは、寝ぼけて私の中にそこから転がり込んできてしまったのでしょうね。
う~ん。この年頃の男の子の気持ちも、さっぱり分かりませんけど……。
起きて私の隣に寝ぼけて潜り込んでいたなんて知ったら、嫌な思いするんじゃないでしょうか。
上半身を起こし、周囲を見渡します。みんな起きる気配はなく、静かな寝息や寝言が耳に入るだけ。
ここは一つ、証拠隠滅と行きましょう。
見知らぬ男の子をどうにか転がし、いるべき場所に戻してあげます。
目的を果たせば、満足した心地で大きく伸びをしました。
もうじき、朝日が世界を照らし出すでしょう。
寝具一式を片付け、私は外着に着替えると、外へ少々朝の散歩に向かったのでした。
さすがにずっと外にいるのは辛いです。
しかしながら、副院長は本日の夕食係の一員から外されたようです。
おまけに、院長先生がまだ帰ってなかったこともありまして。
私の前ではいつも不機嫌な副院長に、間抜けにも捕まってしまいました。
「あなたはどうしていつもいつもっ ――― 」
私は今、副院長にがみがみ怒鳴られています。
彼女も自分のそんな姿を他の子どもたちに見せるのは憚られるのか、二人きりの部屋の中でね。
毎度吐かれる台詞は、途中から聞き取れません。私自身リスニングが苦手な性質なのもありますが……。彼女が憎悪の炎で熱くなりすぎて、マシンガントークすぎて、理解不能です。
推測するに、毎回内容は似通ったものでしょうけどね。
言うなれば、「ありとあらゆること全てにおいて私が悪い」との説を、熱弁している感じなはずです。もしくは、彼女の立場上、子どもに発言すべきでない悪口をぶつけられている感も否めません。
ですが、これくらいならまだましな部類ですよ。彼女の私への理不尽な仕打ちの中ではね。
それに、今はバイオレンス行為もない可能性が高いので、安心できます。
お昼寝していた子どもたちが目を覚まし、学校から年上組の子たちが戻ってきたなら、副院長も私だけに構ってられません。拘束される時間も短いはずです。
現に、部屋のドアがノックされる音が聞こえました。
「副院長先生いますか?」
次いでドアの向こうから聞こえるのは、孤児院の誰かの声です。
「ええ。少し待って ――― 。今行きます」
今まで罵詈雑言で怒鳴っていたはずの口から、実に優し気な言葉が流れます。
副院長の切り替えは、驚くほどすさまじいですよ。先ほどまで醜悪な仮面を張り付けていたとは思えない、実に見事な豹変ぶり。
私以外の子どもたちには、こうやって落ち着いて穏やかな人物になれるのですからね。
傍目から見れば、子ども好きな・優しい・しっかりした女性に、思われているのやもしれません。
ですが、正真正銘そのような人物であるわけはありませんよ、私にとってはね。
睨みつけて舌打ちするような人が。
私への嫌がらせが物足りず、少々油断していた私に後ろ蹴りをお見舞いするような女が。
聖母のような人物だとは、これっぽっちも思えるわけないですね。
私に一撃食らわせて一応満足したらしい彼女は、そのまま颯爽と部屋から出ていきました。
部屋に残された私は、床に尻もちをついた状態で、大きく息を吐き出します。
副院長、おそらく私の顔面に狙い定めてましたね。
かろうじて体を後ろに反らして、蹴りを食らったのは胸部付近となりました。回避を試みたとはいえ、まったく痛みがなかったわけではございません。
全く、容赦なく蹴りやがって……。
「っとに ” lemon ” みたいな女」
日本語で悪態をつき、やりきれない思いを消化します。
少しその場でぼーっとしてから、重い腰を上げて立ち上がりました。重く感じる脚で、部屋から出ます。
部屋を出ると、何やらどこかが騒がしい気がしました。
どうしたのか訝しんでいれば、その方向からマリエラが走ってきます。
私に接近するマリエラの表情は、どこか険しく感じました。
「リース、あっちに行こう」
「え?」
マリエラは私の手を握り、すぐに私を連れ出します。
「私たちはこっち」
使命感に燃えているようなマリエラは、私の手を取ったまま、ずんずん歩いていきました。騒がしく感じる場所から、どんどん遠ざかっていく気がします。
「マリエラ。どこ行く?」
「厨房。安全だから」
目的地を問えば、マリエラがゆっくりはっきりと答えを告げてくれました。
それにしても、安全が理由で厨房に行くとはどういうことでしょうか?
「なぜ?」
「院長先生が ――― 言った」
マリエラの返事は全て理解できませんでしたが、院長先生の指示だということは察します。院長先生、帰ってきたのですね。
マリエラはまっすぐ目的地に私を連れていくことに専念しています。
その熱意もあり、私は今の状況の経緯を深く考えるのをやめました。
正直、副院長とのことで、心身疲弊しすぎていて放棄してしまった感じです。
* * *
それから、厨房でマリエラと夕食作りのお手伝いをときどきしながら、時間は過ぎていきました。
夕食も入浴も、いつもより穏やかな気持ちで済ませました。
特に夕食は、なんだかストレスが和らいだ気がします。手伝ったことで、おいしさも一入でしたしね。
それもこれも、副院長の視線が全く感じられなかったのが要因でしょう。私への接近も、あの後ろ蹴り以降ほとんどありませんでしたね。
いつもは機会を見計らって、私にお小言を寄越す副院長ですのに。
ここまで何もないと、いっそなんだか不思議です。
ま、私にはすごくいいことなのは、間違いありませんよね。
そんな感じで、就寝する時間となりました。
副院長が私を目の敵にしてからでも、救いなことの一つは、夜は安心して寝むれることでしょう。
副院長は、孤児院に通いで勤めています。ですので、私たちの就寝時間頃には帰宅していくのです。
それらに関し、院長先生のように住み込みじゃなくて、朝早いし大変そうとか思ってあげていた時期もありました。ですが、今となっては副院長が住み込みでなくて最高でしたよ。
これで夜もおちおち眠れなかったら、確実に音を上げていたと思います。
大きな広間には、「道具」に入れていたこちらの世界版布団・毛布・枕の、寝具一式が広げられていきます。
たくさん敷き詰められた寝具一式で、川の字以上にして寝るわけなのですよ。
一応年上組の子たちになると、異性とは離れて寝るようになるみたいですね。それか、違う場所で寝る子もいるようです。思春期を迎えると、確実にそうなるでしょうね。
私含め年少組は、まだそこまで異性を意識していない気もします。
まあ、私は大抵壁際によって、隣にはマリエラが寝るのがほとんどですけどね。
「リース、おやすみ」
「おやすみ、マリエラ」
今晩も、壁よりに寝具一式を広げ、右隣にはマリエラの寝具一式が敷かれます。
大広間には真っ暗なゾーンと・豆電球くらいの明かりがあるゾーンと、そこそこ明るいゾーンが三つあります。
真っ暗と豆電球は、それぞれの寝やすさに合わせているのでしょう。
そこそこ明るいゾーンは、まだ起きている子たち用です。
子どもたちの就寝時間は、みな一緒ではありません。
年少組から早く寝ますけど。年上の子ほど、そこそこ起きていますね。
私といえば、毎日真っ暗闇ゾーンです。
豆電球ゾーンでも眠れなくはありませんよ。ただ、何の明かりもない方が、私には都合がよいのです。
今日はいつにも増して、午後くたくたになりました。
ですが、なかなか寝つけません。
右隣では、マリエラが布団に入って十分もせずに、すぐに規則正しい寝息を立てていました。それには、なんとなく安心感を覚えます。
こうして生まれ変わって、寝つきは大分良くなったと思っているのですが。
前世同様、当日起きた出来事を振り返る悪い癖が、私の眠気を邪魔します。
副院長が邪険に扱うのは、どうして私でなければいけないのでしょう?
なぜ、嫌いな存在には無関心ではいられないのですかね?
そんなことを考えていれば、芋ずる式に前世の嫌な過去を思い出してしまいます。
そして最終的に、彼のことで頭がいっぱいになるのです。結局私は、一日たりとも彼のことを思い出さないことはありません。
こちらの世界で、こんなに時が流れているのに、彼のことだけは頭から離れてくれません。
もうどうしようもできないのに。
二度と会えはしないのに。
何が真実であったか、確かめようもないのに。
だからこそ未練と後悔が募り、私から消えてはくれないものがあります。
彼の名前を、顔を、声を思い出すと、涙が出てきました。
疲れてくたびれた分、今夜は特に涙もろくなっている気がします。
こういう場合があるから、明かりない世界の方が、私には好都合なのです。
右袖を目に当て、涙を吸い取ってもらいます。涙を吸い込んだ部分は、やがて冷たさに変わっていくでしょう。
早く、孤児院を出たい。ここではないどこかに行きたくってしょうがありません。
いつか訪れるその日のために、遅々としていても準備していきましょう。
私の居場所は、ここではないのです。
とにかく、ここを離れて『一人でゆっくり過ごしたい』というのが、切実な願いです。
* * *
泣きながらいつの間にか眠ってしまったと気づいたのは、明け方でした。
空が白む早朝、違和感を感じて目を覚まします。
背中越しに、私の布団の中に誰かが潜り込んでいるのが分かりました。
寝ぼけ眼で、またマリエラが寝ぼけて私の布団の中に入ってきたのだろうと思います。そういうことはしょっちゅうあるのです。
けれど、右に寝返りを打つと、すやすやと眠るマリエラの姿がありました。
数秒フリーズします。
マリエラが右隣できちんと寝ているのなら、背中越しに感じる存在は誰なのでしょう。
いつまでもそのままではいられません。
思い切って後ろを振り返ります。
すると、見知らぬ男の子が気持ちよさそうに眠っていました。こんな子、孤児院にいましたっけ? 年齢は私とさほど変わらないでしょうか?
まあ、それはどうでもいいです。
確認すると、私の左隣の寝具が空となっています。ということは、寝ぼけて私の中にそこから転がり込んできてしまったのでしょうね。
う~ん。この年頃の男の子の気持ちも、さっぱり分かりませんけど……。
起きて私の隣に寝ぼけて潜り込んでいたなんて知ったら、嫌な思いするんじゃないでしょうか。
上半身を起こし、周囲を見渡します。みんな起きる気配はなく、静かな寝息や寝言が耳に入るだけ。
ここは一つ、証拠隠滅と行きましょう。
見知らぬ男の子をどうにか転がし、いるべき場所に戻してあげます。
目的を果たせば、満足した心地で大きく伸びをしました。
もうじき、朝日が世界を照らし出すでしょう。
寝具一式を片付け、私は外着に着替えると、外へ少々朝の散歩に向かったのでした。
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