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ぱちり目を開ける。
あ、死んでない。その事実に大層驚いた。
夜、なのかな? 当たりは真っ暗で何も見えん。そういや前世から、鳥目だった気がする。
もぞもぞと体を動かせば、何かに体を引き寄せられた。
動物特有の毛並みの感触と、陽だまりの匂い、そして呼吸するたびにどこかが動くぬくもりを持つ体。それを背中に感じた。
あったかいや。天然の毛布だ。
徐々に暗い中にも目が慣れてきて、私を抱き枕の様に横抱きにしているのが、あの水場で会った存在だと気づけた。
つまり、保護してくれた、ということなのだと思う。
初対面の時のような恐怖は感じない。
お顔は大層怖いけれど、きっと優しいのだろう。出なければ、私をこんな風にしていないはずだ。
取り合えず、今はこの心地よい温かさに包まれて、二度寝をしよう、そうしよう。
陽の光を感じて、目を覚ます。どこかで鳥のさえずる声も聞こえてくる。
そういや二度寝をしようと思い、本当にすぐ、くか~っと眠ってしまったんだっけ。
大きく口を開けあくびをし、閉じた目を小さな手の甲で軽くこすって、伸びをする。
すると、いきなり後ろ首を甘噛みされた。不意打ちだった。
痛くはない。
でも、いきなりそんなことをされて、またかわうそのような鳴き声で驚いてしまう。
その後、数回首をかぷっと牙や歯で傷つかないように甘噛みされ、私は一体なんなのと、そんなことをする主を振り向いて見た。
朝から大変強面なおそらく彼は、私の顔に頬ずりし、挙句の果てに鼻ちゅうやキスまでして来た。
おいっ!
乙女(といっていいのか謎だけど)のファーストキスをよくも奪ったな。
いくらそういう行為が挨拶だからって、私にはカルチャーショックみたいなもんなんだ。
いやいややめてと、ちっちゃな手で彼の顔をどかそうと試みるも、びくともしない。体格的なものや力の差もあるんだろうな・・・・・・。
私のそんな拒否行為も、彼にとっては子どもがじゃれているようなものだからか、面白そうな顔をされるだけ。
これ、絶対意味通じてない。
駄目元で、やめてと前世の言葉で言えば、例の如くかわうそのような鳴き声に変換された。
通じるかなって思ったけど、彼はきょとんとしている。
その反応、意思疎通出来ませんでしたってことだよね。
実際、彼も低い声で鳴いてくれるけど、私もきょとんと首を傾げちゃったもん。
こういう場合ってさ、何かの力が働いて意思疎通可能にしてくれたっていいじゃんね!
そりゃね、こうなる覚悟はなかったわけじゃないけどさ!
ま、仕方ないよね。
言葉通じなくても、生きてはいけるはず、多分。
もうこうなったら、ボディランゲージで体当たりしていくしかないでしょ。
こうして、私の獣(?)生活は始まった。
木の幹を利用して作られた、彼こと親分(※心の中で命名)の巣穴は、親分と私が暮らすには十分広くてきれいだ。
親分は部屋に余計なものを置かないタイプで、必要最低限のものしか巣穴に置いてない。まあ、なんていうか良くも悪くも殺風景だ。
巣穴から出れば、親分のような動物というか獣たちの集落が広がっていた。
大人たちは親分の様にカラフルで、いろんな毛皮の色をしている。そしてやっぱり、胸元にツキノワグマみたいなV字の白い線が入ってた。
小さい多分オスもカラフルなんだけど、子どもか若い多分メスはみんな真っ白である。なんでだろ? 何かの事情で色が変わるのかな?
みんな私と似てるけど、やっぱりちょっと違う。なんていうか、本能というか第六感っていうの?
似てるけど違いますよ~って、なんとなく分かる。
だって、私みたいな白っぽいクリーム色の子はいないし。顔つきとかも、微妙に違うんだよ。私、子どものみんなよりも、サイズ一回りか二回り小さい。大きくなっても、大人のみんなより小さいままな気がするんだ。
ともかく、似てるけど、親戚かもしれないけど、同種ではないって頭で訴えかけられるの。
だから、ちょっと仲間外れ感がして、寂しい。
けど、どうしようもないよね。違うものは違う。それって時に受け入れなきゃいけないんだろうから。
そうそう。
親分は、私を本当に保護というか養う気みたい。律義だよね。
最初集落での生活に慣れないうちは、四六時中一緒にいてくれた。最近では、集落からちょっと離れた場所まで一匹で行かせてくれるけど、夕方になって巣穴に戻って来ないと、匂いを辿ったのかすぐに親分は迎えに来る。
ここで暮らして分かったことと言えば、まず親分が若いメスにモテモテだということ。
親分が巣穴から出ると、真っ白な若いお嬢さん的なメスたちが親分にすごいアピールしてくる。大体親分は取り囲まれてる。
最初はすげえじゃん、親分。ハーレムじゃん。
とか思ってたけど、親分が私を連れ回して行動するうちに、ちょっとずつメスたちが親分のところにすっ飛んで来なくなってきた。
これはあれか。
もててる独身男に、いきなり養う子どもが出来て、ならいいわって諦められちゃった系な気がする。
あんなにもてもてなのに、親分に申し訳ない。
親分の今後の伴侶選びのためにも、自立せねば。
そう意気込んで、一匹で暮らせるよ、大丈夫だよと必死に身振り手振りで親分に訴えたんだけど、却下された。
集落のいい感じの場所に巣穴作ろうとしたら、イライラした親分の巣穴に戻される始末だ。
親分、きっと私を一匹で何にも出来ない子どもに思ってるんだろうけどさ。
過保護すぎるよ。私もう独り立ち出来る。なんでそんなに自分の巣穴に私をいさせたがるのさ?
結局、親分に何回も、私の巣穴は親分の巣穴だとジェスチャーで訴えられて、諦めた。
親分、寂しくないのかな? いや、寂しいから私と暮らしてるのかな?
それにしてもさ、あんなにいいお嫁さん候補いっぱいいるのに、何が気に入らないんだろ?
理想高すぎて、独身貴族になっても、私知らないよ! 親分がそれでもいいなら別にいいけどさ。
嫁というか伴侶というか番を選ばずに、私みたいなチビの子どもを育ててるって、どういう状況さ。
他に分かったことと言えば、食事というか食欲。
この体、空腹や喉の渇きを感じない。もしかしたら、食事しなくても生きていけるってやつなのかもしれん。
でも、親分たちはたまにむしゃむしゃご飯食べてるけど。
だから、私もそれに倣ってたまに食事はする。
食事は専ら森のどこかで採取した木の実だ。この森の気候が温暖だからか、ちょっと遠出すれば、桑の実とかベリーみたいな食べられる木の実を発見できる。
親分の仲間は、時々ネズミとか鳥とか魚とか生で食べてるのを見かけるけど、私はそこまで野生化するほど食欲はないので、木の実だけ。
そもそもだ。
親分が、木の実しか食べないからっていうのもある。最初に私にくれた食べ物も、木の実だった。
ネズミとか簡単に狩りそうな風貌なのに、見た目まんま肉食なのに、実は草食より。そんな親分を、ちょっと可愛く思う。
あとね、不思議なことに排泄の機能が体にはないみたい。なんていうか、食べたものが体の中でエネルギーに変わってる感じ。別にそれで不調でもなくすこぶる健康なので、特に気にしない。
また、体とか口の中とか、きれいな水場で洗えば、すぐキレイになる。不思議なくらいつやつやピカピカだ。
おまけに、専用の石鹸とかで洗ったわけじゃないのに、悪臭もしない。だからかな? みんな獣臭くないのは。ま、きれいなのはとかくいいことだよね。
分かったのは、それくらいかな。
みんな、日がな一日のんびりと過ごして暮らしてる。実に平和だ。
たまに集落からちょっと離れた場所で、可愛い花を見つけては、根っこごと持って帰って巣穴の外に植え替えてる。そんな風にして、巣穴の外にちょっとした花壇を作るのは楽しい。
怒るかなって思ったけど、親分は私のままごとみたいなそれを許してくれてる。
うん、親分は優しいというか、私にはちょっと甘すぎる気がするのは気のせいではないはずだ。
そんな親分は、巣穴の中で隙あらば私の後ろ首を甘噛みする。
最初は巣穴の中での、みんななりの挨拶の仕方だと思い込んでたんだけど・・・・・・。
でも、なんだろう?
親分のこの子煩悩でも、子分や妹を可愛がる感じでもないと思える、この妙な感覚は? 親分と暮らし始めて、時々そんな違和感を覚え、疑問を覚える。
そう言えば、集落の外で、真っ白な若いメスに、同い年くらいのオスが後ろ首を噛もうとしたら、メスがめっちゃ威嚇してた。いや、まじ超激怒ってた。対してオスはごめんごめんって、軽い感じで謝ってる風に見えたけど。
あのやり取りみたら、親分の私にする後ろ首を甘噛みする行為が、みんなの間での気軽な挨拶ではないと何となく分かる。
何だかとても気になるし、嫌な予感がする。
でも、まあ、取り合えず、よく分かんないからいいや。
今は親分のあったか天然毛布を背に感じながら、眠ることにしよう。おやすみなさい。
あ、死んでない。その事実に大層驚いた。
夜、なのかな? 当たりは真っ暗で何も見えん。そういや前世から、鳥目だった気がする。
もぞもぞと体を動かせば、何かに体を引き寄せられた。
動物特有の毛並みの感触と、陽だまりの匂い、そして呼吸するたびにどこかが動くぬくもりを持つ体。それを背中に感じた。
あったかいや。天然の毛布だ。
徐々に暗い中にも目が慣れてきて、私を抱き枕の様に横抱きにしているのが、あの水場で会った存在だと気づけた。
つまり、保護してくれた、ということなのだと思う。
初対面の時のような恐怖は感じない。
お顔は大層怖いけれど、きっと優しいのだろう。出なければ、私をこんな風にしていないはずだ。
取り合えず、今はこの心地よい温かさに包まれて、二度寝をしよう、そうしよう。
陽の光を感じて、目を覚ます。どこかで鳥のさえずる声も聞こえてくる。
そういや二度寝をしようと思い、本当にすぐ、くか~っと眠ってしまったんだっけ。
大きく口を開けあくびをし、閉じた目を小さな手の甲で軽くこすって、伸びをする。
すると、いきなり後ろ首を甘噛みされた。不意打ちだった。
痛くはない。
でも、いきなりそんなことをされて、またかわうそのような鳴き声で驚いてしまう。
その後、数回首をかぷっと牙や歯で傷つかないように甘噛みされ、私は一体なんなのと、そんなことをする主を振り向いて見た。
朝から大変強面なおそらく彼は、私の顔に頬ずりし、挙句の果てに鼻ちゅうやキスまでして来た。
おいっ!
乙女(といっていいのか謎だけど)のファーストキスをよくも奪ったな。
いくらそういう行為が挨拶だからって、私にはカルチャーショックみたいなもんなんだ。
いやいややめてと、ちっちゃな手で彼の顔をどかそうと試みるも、びくともしない。体格的なものや力の差もあるんだろうな・・・・・・。
私のそんな拒否行為も、彼にとっては子どもがじゃれているようなものだからか、面白そうな顔をされるだけ。
これ、絶対意味通じてない。
駄目元で、やめてと前世の言葉で言えば、例の如くかわうそのような鳴き声に変換された。
通じるかなって思ったけど、彼はきょとんとしている。
その反応、意思疎通出来ませんでしたってことだよね。
実際、彼も低い声で鳴いてくれるけど、私もきょとんと首を傾げちゃったもん。
こういう場合ってさ、何かの力が働いて意思疎通可能にしてくれたっていいじゃんね!
そりゃね、こうなる覚悟はなかったわけじゃないけどさ!
ま、仕方ないよね。
言葉通じなくても、生きてはいけるはず、多分。
もうこうなったら、ボディランゲージで体当たりしていくしかないでしょ。
こうして、私の獣(?)生活は始まった。
木の幹を利用して作られた、彼こと親分(※心の中で命名)の巣穴は、親分と私が暮らすには十分広くてきれいだ。
親分は部屋に余計なものを置かないタイプで、必要最低限のものしか巣穴に置いてない。まあ、なんていうか良くも悪くも殺風景だ。
巣穴から出れば、親分のような動物というか獣たちの集落が広がっていた。
大人たちは親分の様にカラフルで、いろんな毛皮の色をしている。そしてやっぱり、胸元にツキノワグマみたいなV字の白い線が入ってた。
小さい多分オスもカラフルなんだけど、子どもか若い多分メスはみんな真っ白である。なんでだろ? 何かの事情で色が変わるのかな?
みんな私と似てるけど、やっぱりちょっと違う。なんていうか、本能というか第六感っていうの?
似てるけど違いますよ~って、なんとなく分かる。
だって、私みたいな白っぽいクリーム色の子はいないし。顔つきとかも、微妙に違うんだよ。私、子どものみんなよりも、サイズ一回りか二回り小さい。大きくなっても、大人のみんなより小さいままな気がするんだ。
ともかく、似てるけど、親戚かもしれないけど、同種ではないって頭で訴えかけられるの。
だから、ちょっと仲間外れ感がして、寂しい。
けど、どうしようもないよね。違うものは違う。それって時に受け入れなきゃいけないんだろうから。
そうそう。
親分は、私を本当に保護というか養う気みたい。律義だよね。
最初集落での生活に慣れないうちは、四六時中一緒にいてくれた。最近では、集落からちょっと離れた場所まで一匹で行かせてくれるけど、夕方になって巣穴に戻って来ないと、匂いを辿ったのかすぐに親分は迎えに来る。
ここで暮らして分かったことと言えば、まず親分が若いメスにモテモテだということ。
親分が巣穴から出ると、真っ白な若いお嬢さん的なメスたちが親分にすごいアピールしてくる。大体親分は取り囲まれてる。
最初はすげえじゃん、親分。ハーレムじゃん。
とか思ってたけど、親分が私を連れ回して行動するうちに、ちょっとずつメスたちが親分のところにすっ飛んで来なくなってきた。
これはあれか。
もててる独身男に、いきなり養う子どもが出来て、ならいいわって諦められちゃった系な気がする。
あんなにもてもてなのに、親分に申し訳ない。
親分の今後の伴侶選びのためにも、自立せねば。
そう意気込んで、一匹で暮らせるよ、大丈夫だよと必死に身振り手振りで親分に訴えたんだけど、却下された。
集落のいい感じの場所に巣穴作ろうとしたら、イライラした親分の巣穴に戻される始末だ。
親分、きっと私を一匹で何にも出来ない子どもに思ってるんだろうけどさ。
過保護すぎるよ。私もう独り立ち出来る。なんでそんなに自分の巣穴に私をいさせたがるのさ?
結局、親分に何回も、私の巣穴は親分の巣穴だとジェスチャーで訴えられて、諦めた。
親分、寂しくないのかな? いや、寂しいから私と暮らしてるのかな?
それにしてもさ、あんなにいいお嫁さん候補いっぱいいるのに、何が気に入らないんだろ?
理想高すぎて、独身貴族になっても、私知らないよ! 親分がそれでもいいなら別にいいけどさ。
嫁というか伴侶というか番を選ばずに、私みたいなチビの子どもを育ててるって、どういう状況さ。
他に分かったことと言えば、食事というか食欲。
この体、空腹や喉の渇きを感じない。もしかしたら、食事しなくても生きていけるってやつなのかもしれん。
でも、親分たちはたまにむしゃむしゃご飯食べてるけど。
だから、私もそれに倣ってたまに食事はする。
食事は専ら森のどこかで採取した木の実だ。この森の気候が温暖だからか、ちょっと遠出すれば、桑の実とかベリーみたいな食べられる木の実を発見できる。
親分の仲間は、時々ネズミとか鳥とか魚とか生で食べてるのを見かけるけど、私はそこまで野生化するほど食欲はないので、木の実だけ。
そもそもだ。
親分が、木の実しか食べないからっていうのもある。最初に私にくれた食べ物も、木の実だった。
ネズミとか簡単に狩りそうな風貌なのに、見た目まんま肉食なのに、実は草食より。そんな親分を、ちょっと可愛く思う。
あとね、不思議なことに排泄の機能が体にはないみたい。なんていうか、食べたものが体の中でエネルギーに変わってる感じ。別にそれで不調でもなくすこぶる健康なので、特に気にしない。
また、体とか口の中とか、きれいな水場で洗えば、すぐキレイになる。不思議なくらいつやつやピカピカだ。
おまけに、専用の石鹸とかで洗ったわけじゃないのに、悪臭もしない。だからかな? みんな獣臭くないのは。ま、きれいなのはとかくいいことだよね。
分かったのは、それくらいかな。
みんな、日がな一日のんびりと過ごして暮らしてる。実に平和だ。
たまに集落からちょっと離れた場所で、可愛い花を見つけては、根っこごと持って帰って巣穴の外に植え替えてる。そんな風にして、巣穴の外にちょっとした花壇を作るのは楽しい。
怒るかなって思ったけど、親分は私のままごとみたいなそれを許してくれてる。
うん、親分は優しいというか、私にはちょっと甘すぎる気がするのは気のせいではないはずだ。
そんな親分は、巣穴の中で隙あらば私の後ろ首を甘噛みする。
最初は巣穴の中での、みんななりの挨拶の仕方だと思い込んでたんだけど・・・・・・。
でも、なんだろう?
親分のこの子煩悩でも、子分や妹を可愛がる感じでもないと思える、この妙な感覚は? 親分と暮らし始めて、時々そんな違和感を覚え、疑問を覚える。
そう言えば、集落の外で、真っ白な若いメスに、同い年くらいのオスが後ろ首を噛もうとしたら、メスがめっちゃ威嚇してた。いや、まじ超激怒ってた。対してオスはごめんごめんって、軽い感じで謝ってる風に見えたけど。
あのやり取りみたら、親分の私にする後ろ首を甘噛みする行為が、みんなの間での気軽な挨拶ではないと何となく分かる。
何だかとても気になるし、嫌な予感がする。
でも、まあ、取り合えず、よく分かんないからいいや。
今は親分のあったか天然毛布を背に感じながら、眠ることにしよう。おやすみなさい。
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