そして破局を迎える

二

　ラシャドという若者は、その外見の良さもあり、幼少時から異性にはそれなりに目をつけられた。彼の高圧的でない、優しい気質もあったのだろう。彼に想いを一度でも寄せた女性は数多い。
　
　だが彼には、その折々に、恋人以外の親しい女性の影があった。
　おまけに、それが同じ家に住む美人とあれば、ラシャドの恋人や彼に想いを寄せる女性は、みな気が気でない。噂ではその美人な女性がラシャドと親戚関係であるとしても、彼を想う女性は複雑な思いを抱いた。

　だからこそ、ラシャドの恋人の座を真に勝ち得るには、その女性からラシャドを解放せねばいけない。彼女よりもラシャドに関心を持ってもらわねばならない。
　そんな思いがどうやってか浸透し、ラシャドに懸想する女性はみながみな、ラシャドと同じ家に暮らす女性と彼を引き離すことに躍起になっていった。我先にラシャドからの寵愛を一身に得ようと、彼から本当に好意を持たれているのは自分だということを証明するために。

　ラシャドと最初親しいと噂された同じ家に住む美人な女性は、彼より九歳も年上だった。寛容さと年上特有の余裕を見せた彼女に、ラシャドの恋人や恋人候補たちは歯が立たなかったらしい。だが、その女性は二十代の中頃、ラシャドのような九つも年下の少年とは正反対の、三十代の男性に嫁いでいった。
　そこでラシャドを好きな女性陣が安心したのも束の間、今度は六歳上の違う美人の女性がラシャドと距離を近づけていく。その彼女も非の打ちどころがない女性で、ラシャドの恋人や恋人候補は彼女に敵わない。またもや年上の男性に嫁いでいった彼女の次は、三歳年上の美人な女性に変わる。そして、また同じことが繰り返された。
　三名の女性の特徴は似ていて、黒髪に緑色の瞳、女性らしい豊満な肉体美を持っていた。

　そんなことがあり、ラシャドはすっかり年上の女性が好きと思われていたが、後に彼はそれは間違っていると公言している。実際ラシャドが長続きしないも交際をした女性は、同い年か年下の女性ばかりであった。
　だから、三歳年上の女性が嫁いでいった後、しばらく特別な女性の影がないラシャドに対し、そこが好機と思われた。彼に思いを寄せていた女性は、さり気なくラシャドにアピールを強めていく。

　そんな所に、ラシャドの家に出入りする、彼より三歳も年下の女性であるリージアが現れた。
　ラシャドの恋愛対象内に入る、年下のリージアの登場に、ラシャドを射止めたい女性陣は焦りが見え始めたらしいと噂が流れる。
　そしてその噂は、先ほどのリージアに対するミケイラの理不尽な行動により、真実味を帯びていた。