エデン

時雨

文字の大きさ
上 下
1 / 1

1

しおりを挟む
ある山の中に古く大きな木があった。
その木は長い年月を過ごし、人の形をとれるようになっていた。


木は、近くに人の気配を感じ静かに警戒した
段々と近づく泣き声になんだ?と思っていると、小さな子供が泣きながら歩いて来た。
大きな木を見つけると、根本に座った。
歩き疲れたのだろうか?木はどうしようか悩んだ。
木は静かに人の形になり、木の裏から現れた
「どうした、チビ」
突然上から聞こえた声に子供は、ビックリした顔で見上げた。
だが、人を見て安堵したのか大きな目から涙が溢れ出した。
「なっ、泣くなよほら」
泣き出した子供に林檎を差し出した
それは自身の木に実っていた林檎だった。
余程お腹がすいていたのか、子供はあっという間に平らげた。
「あ、ありがとう!おいしかった!」
やっと笑った子供の顔を見て、木は優しく微笑んだ。
「名前はなんて言うんだ?」
木は聞いた。
「かおるだよ!」
すっかり元気を取り戻したようだ。
「かおるな、下まで送ってやるよ」
山のふもとまで送ってやると
知っている道に出たからなのか薫は走りだした、その姿を見て木は静かに森に戻った。
木は山から出られない。
薫は木を呼ぶ「りんくん?」
林檎の木だからりん、名前を聞かれた木が適当に名乗った名前。
呼んでも、もう居ない不思議に思って辺りを見渡していた薫の名前を誰かが呼んだ。
「薫!どこいっていたの!」
薫の母だった。
母と一緒になった薫を見て近くにいた木は
元の場所に帰って行った。
もう会うことはないだろう。
少し寂しさを覚えた木だったが仕方ないさと
木に帰って行った
しおりを挟む

この作品は感想を受け付けておりません。


処理中です...