凶悪勇者のパーティと王国から追放された結界の魔術師、魔王を倒したことで手のひら返しされたので勇者をボコしてから魔王に転生しました

灰色の鼠

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第5話 「結婚の約束?」

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 ローブを脱ぎ捨てる。
 大きくなった服、というより小さくなった俺のサイズに合わなくなってしまったので仕方なくだ。

 代わりに女の子が荷物にあった服を貸してくれた。

「助けてくださり、ありがとうございます」

 ケガをした父親に礼を言われる。
 幸い傷は浅く応急処置は簡易《かんい》にできたが、奇跡としかいいようがない。

「まさかこんなにも腕のたつ方に救っていただけるとは、我々家族も幸運でございました」

「お礼なら次の町で聞くよ」

 彼らの目的は王国ミザールの領土の東側にある公国ラザニ。

「それにいても、こんな時期によく徒歩で向かおうと思ったな。大切な用事でもあるの?」

 一応聞いてみると、父親は少し深刻そうな顔をした。

「先日、我々の実家であるラザニから手紙が届いたんです。祖父母が流行り病にかかってしまったという内容でした。なのでミザールでしか販売されていない万能薬を購入して届けるようにと……」

 確かに万能薬を購入したところで届けてくれるような時期ではなくなったからな。
 気になるといえば郵便屋が機能している事実だ。

「病名は『アールカタラ』。魔力を貯蔵する器が特殊な病原菌によって腐敗し始める病気。普通は魔族にしか感染しない病原菌が、この人族の大陸にも流行りだしているそうです。幸い、錬金術士学会が開発した万能薬があるのですが生産は難しいとされているので、底がつくのも時間の問題かと」

「魔王がなにかしら、やったと考えるのが正解かもな」

「長い時間もかけて人族の大陸に送り込んだのが一匹だけ、まさかとは思うが……あの魔獣がまき散らしているのか?」

 俺が原因で逃がしてしまった魔王の使い魔になんらかの関係があったりして。

 それなら目的は決まった。

「あなた達を目的地まで護衛し終えたら、俺も流行り病について調べるよ。被害の拡大を迅速《じんそく》に抑えなきゃ魔王の思うツボだ」

 それにしてもだ。
 さっきから、この父親の娘くっ付きすぎやしないか?

「んふふふ」

「なーにがおかしいんだ?」

「お兄ちゃん気に入っちゃったんだ! 私とお友達になってくれる!?」

 こう見ても俺は30代のおっさんだ。
 魔術師として長い経験はあるが新文明の波に追い付けていない状況なのですよ~。

「もうミレイちゃんったら、アルフォンスさんに迷惑をかけちゃダメでしょ」

 母親がおかしそうに笑う。
 子供は嫌いではないが、懐かれるという経験がないのでどう接すればいいのかが分からない。

「友達って言っても短い間でだけだぞー?」

「ヤダッ! 結婚するまでがいい!」

 なんてマセたことを言うんだ!
 お前が三十になる頃には俺もヨボヨボの老人だぞ!

「こんなにも可愛くて強いお方なら娘を任せられるわ……」

 お母さんも賛同しないで。
 お父様、静かにしているけど今すごい悲しい顔をしてるよ!

 せっかく育てた娘をさっきあったばかりの骨の馬に取られそうになっていて悲しんでいるよ!






 ―――



 一週間後、公国ミザールに到着した。
 冒険者たちの配分も含めて家族から報酬を受け取った。

 中身は20000ゴルド。
 お礼もかねて更に渡されそうになったがお断りをした。

「ヤダヤダ! お兄ちゃんと離れたくないよ!」

 駄々こねるミレイに両親はお困り顔だ。
 少しでも俺が離れようとすると捕まえられ、泣き疲れる。
 こんなに可愛い娘がいたのなら俺も大歓迎だが、いまそんな状況ではない。

 父親が娘を押さえつけていた。

「お父さんのバカバカ!」

 ぽかぽかと叩かれている。

「ミレイ」

 さすがに呆れてため息が出てしまう。
 仕方がない、俺も納得させられるように何かしよう。

「別に永遠にお別れをするわけではないよ」

「ホント……?」

「ああ、いつかまた近いうちに会えるよ。俺も別に遠回りをしたいわけじゃないし、友達になったからには二度と顔を合わせないわけにもいかない」

 ミレイの涙を指で拭う。

「約束だ」

「う……う、うん。結婚しようね」

 何故そうなるのか。
 そんなことを考えながら彼女と指切りげんまんをする。


「それじゃな、また会える日を楽しみにしてるよ」

 手を振りながら家族の行き先とは真逆の方向へと歩いていく、すると父親と母親が頭をさげた。
 ミレイは大きく手をふっている。


 ちょっぴりだが、別れは寂しいな。
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