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第14話 「アルフォンス」

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 入手スキルは100以上もある。
 世界一の保有数だと言ってもいい。
 特定の条件をクリアすることで入手してきたが、どうやら俺だけにしか備わっていない固有スキルらしい。

 それはさておき。
 王都付近の町に一時避難。
 そこで待機していた他の仲間たちと合流する。

 俺の右腕的存在、茶色の長髪の真面目そうな女性ニーファに王都で起きた出来事を詳しく説明した。
 いい顔はしてくれなかったが、怒鳴られることはなかった。

「アルフォンス様もお疲れの様子、この町で一泊してから明日発つのはどうでしょう?」

 提案されるが俺は首を横にふった。
 次は対魔王軍組織『カオスイーター』の拠点に帰還する手筈だが、俺はそれを拒否した。

「気にかけてくれて嬉しいけど、魔王亡きいま組織の目的はもう達成したものだよ。これからは自由に生きるのも良し、新たな組織として再構築するのも良し、解体するのも良しだ」
「………それっ……て」

 ニーファが唖然とする。
 トドメを刺すようで悪いがハッキリと告げた。

「今日をもってカオスイーターはニーファお前に任せる。他の奴らのことを頼んだぞ」

「ちょっと待ってくださいよ!」

 腕をガッツリと掴まれる。
 痛い痛いって、何なんだよ。
 ニーファの方を向いたその時、彼女が泣いていることに気がつく。

 他の皆も、唐突なことに混乱していた。
 しっかりと説明しないと分からんのが普通だな、俺が悪いわ。

「俺もお前らとまだ一緒に居たいと思っている。けど、そうもいかない訳ができちゃったんだよ」

 タイムリミットが迫っていた。
 何のことかとゾロゾロと仲間たちに聞かれ、順を追って説明をした。

 魔王を倒したあの日に、あるスキルを獲得した。
 制限時間が付いているスキルだ。
『半年後、転生する』といったわけの分からないスキルだ。

 その解除のため一時期カオスイーターの席を外れ、各国のダンジョンや森林、魔女にも会いに行ってスキルの解除方法を探そうとしたが成果はなんにもなかった。

 魔王は事前に倒されることを想定していたかもしれない。
 俺が転生してしまったら他の魔族の支配が安易になるかもしれないと判断したのだろう。

「だが、そうはいかない。カオスイーターはニーファお前に託す。憶測だらけだから、真に受けるか受けないかはお前たち次第ってことだな」

 予想でしかない。
 敗北した魔族が反乱を起こす確率の方が低い。
 まだ正式な和解とまではいかないが人族との協力関係は向こう側でも利益となる。

 それを手放すほど向こう側も馬鹿ではない。

「アルフォンス様、その転生とやらはいつ……?」
「あと十分ぐらいかな」

「報告遅い!!!」と仲間たちから一喝された。
 あまり心配をかけさせたくなかったのが第一の理由だったが、すぐに報告をして仲間たちにも負担をかけさせるのも気が引けた。
 皆、お人好しなのだ。

「それじゃな」

 呼び止められる声も無視する。
 外に出るとミレイが待っていた。

「あのアルフォンスさん何処に?」
「どこか」

 曖昧に答える。
 その一言だけでミレイはなにかを察したように悲しそうな表情を浮かべた。

「分かりました。だけど約束してください」

 指を差し出される。

「また戻ってくるって……」

 みんなの所に戻れる保証はない。
 むしろ別の世界の別の人間として世界を彷徨ってしまうのかもしれない。

 だけど、会いたい。
 みんなにまた会えることが、いま俺にとって最大の望みだった。

 ミレイの指へと自分の指を交わせる。

 体はもう光に包まれていた。
 転生の合図なのかもしれない。
 第二の命の、始まりの予兆だ。

「約束だ、またいつか———」

 意識がだんたんと消えていく。
 長い眠りにつきそうだ。
 もういいや、眠ろう。

 視界が白くなっていく。
 それを見届けることなく俺はそっと瞼を閉じるのだった。

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