上 下
20 / 20

第20話 「ちょっぴり怖い配下たち」

しおりを挟む


 約束通り賞金の3000万ギルカを受け取った。
 バックパックがぎゅうぎゅうになるほどの量の金を手に入れたのだ。
 故郷のアズベル大陸に戻る費用が欲しかっただけなのに、まさかオーバーしてしまうとは。

 ま、いいか。
 結果オーライだし。

 泊れそうな宿屋を探しに会場を後にしようとしたら、多種多様な魔族の群衆に囲まれてしまった。
 なにかしらのグループ勧誘だ。

「自警団に入らないか! 君のその腕なら大勢の人間を救えるはずだ!」
「我々、月光の傭兵団に入団しないかい!」
「ねぇねぇ! ウチの討伐隊に入ってよー!」

 魔族の群れに押しつぶされてしまう。
 賞金を受け取って帰れると思った途端に、なんなんだこの注目度は。

 強い奴ほどモテるのか魔族とやらは。

 強引にも抜け出すのもいいけど、この体での魔術の調節は5倍ぐらい難しくなっているため誤って殺してしまうかもしれない。

 魔族だから、殺してもいい。
 俺は人族だから気にしなくてもいい。
 前世、戦場で何度も言われてきた台詞だ。

 それでも、あの戦いの中だからこそ学べたことがある。
 心を通い合えた魔族も大勢いた。
 結局、生き物の本質は変わらないのだ。

 食べることも、息をすることも、戦争をすることも、等しく生きたいから。
 それ以外に理由なんてないのでは。

「道をあけろ無礼者どもが!」

 怒声が響いた。
 俺を囲んでいた勧誘集団が固まる。
 黒翼、屈強な肉体、並みならぬ闘気。
 ラフレーシアと騎士のような恰好をした蝙蝠族らが会場の出入り口の前で立っていた。

 瞬時に周囲が道を開けた。
 魔族の中でも闘争心が高く、戦闘をすることだけで生きてきた強者を相手にしたい奴なんて稀しかいないだろう。

「アルフィ……いえ、我が主よ」

 ラフレーシアが跪いた。
 続くようにして、その取り巻き達もが頭を下げる。
 その意外な行動に周囲が驚愕していた。

 先ほどまでの戦士の風格など感じられない程、まるで長年ともに生きてきた愛犬のような眼差しをラフレーシアに向けられていた。

 「敗した私は今日からあなたの忠実な配下です。何なりとお申し付けください」

 蝙蝠族らが首を垂れている、まるで王を称えているかのような低い姿勢だ。
 何なんだこの簡単に言い表せられない背徳感は。
 蝙蝠族はプライドの高い種族なだけあって、敗北しても格好悪いところは見せない。

 弱い奴ほど良く吠える。
 だけれど、この人たちの場合は『能ある鷹は爪を隠す』ってやつか。
 ちょっと違うと思うけど、そういうことにしよう。

「うむ、頭を上げよ!」

 俺がとった選択肢、それは彼らの良き主人という道。
 これから先の旅で、一人だけというのは些か不安というものがある。
 ならば役に立つ人材は必要不可欠だ、ならば俺の答えは。

「汝らを我が配下として仕えよう!」





 ー蝙蝠族が仲間に加わったー

 名前 ラフレーシア。
 種族 蝙蝠族《コウモリゾク》。
 年齢 数百歳は超えてる。
 性格 戦うのが好きだが、普段は頼れるリーダーのようなカリスマ性を持ち合わせている。

 名前 ジーク・ネクロノ。
 種族 蝙蝠族《コウモリゾク》。
 年齢 360歳。
 性格 無口。言葉より行動で示す真面目で温厚な巨漢。

 名前 ジェニィ。
 種族 蝙蝠族《コウモリゾク》。
 年齢 不明
 性格 料理、洗濯、家事、人の世話を焼くのが好きな女の子。ちょっぴり病んでいる部分がある。

 名前 ツバキ。
 種族 蝙蝠族《コウモリゾク》。
 年齢 134歳。
 性格 気弱で戦闘をあまり好んでいない。だが隠された潜在能力が異常で解放すると仲間も傷つけてしまうとのことだ。頭がいい。


 全員、見た目が怖いけどカッコいい!


 以上、4名は旅を同行するのだった。
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する


処理中です...