最も嫌われている最凶の悪役に転生ー物語の主人公に殺されるエンドを回避するため善行を積みます!ー

灰色の鼠

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第70話 裏切り者として

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「もぐもぐもぐ! くちゃくちゃ!」

 食べるというよりか飲んでいる。
 多めに作ったシチューも、味付けをした魔物の干し肉も、シャレムの分も、

「ぼ……僕のご飯までぇ……」

 少年漫画の主人公並みの食いっぷりで平らげていっている。
 ここまで美味しそうに食べてもらえると先程のコイツの挨拶代わりとかふざけた災害級の攻撃も許せるような気がした。
 なんだかんだ俺もチョロインだよな。

「まさか魔術においてだけではなく料理も天才級とは、君もしかして神様かなにかか!?」

 それはちょっと過大評価しすぎだ。
 それに、この世界にはもう二人も神様がいる。
 俺が担うには重すぎる役割だ。

 しかし、本当にお腹がすいていたらしい。
 妖精は食事を一年も必要としない燃費のいい種族と聞いているが、コイツが本当の妖精王なら尚更である。

「いやぁ助かったよ。君の存在を感知して一週間前に国から飛び出したんだけど、食べ物を持ってくるのを忘れての垂れ死にそうだったんだ。そこらの魔物を倒して食べたかったんだけど生憎と調理法が分からなくてね」

「……貴様は本当に妖精王なのか? 話を聞く限り、無計画な馬鹿にしか聞こえないんだが?」

「あはは、傲慢の魔術師は手厳しいな。まあ、ここ最近はずっと王国に籠っていたから外部に顔出しする機会はなかったから仕方ないと言えば仕方ないけどね」

 妖精というのは外部との干渉をできるだけ隔絶しようとしている種族だからな。
 初めは魔王軍の軍下にくだっていたが、人族と魔族の両陣営の非人道的な面に失望をして戦争から脱退したんだよな。

「名はアレン・スミンドと言う。先ほどの無礼を詫びたい」

 妖精王アレンは立ち上がり、作った拳を右胸に当てた。
 名前が男っぽいな。
 体格も見た目もどちらかというと女性寄りだし、声も高い。 

 それに、なんだが一人の人間と話している感じがしてこない。
 まるで二人の存在と一度に話しているかのような妙な感覚だ。

「おうおう詫びろ詫びろ。僕からとった食事の分も詫びたまえ」

「……ふぅむ」

 調子に乗り出したシャレムを妖精王は、少し黙り込みながら見つめていた。
 もしかして、知り合いかなにかか?

「なんだぁ? もしかして僕の美貌に惚れたとか言うまいな?」

「……はは、そんなことないよ。俺はどちらかというと年上の方が好きだからさ」 

「なんだと!? 僕に魅力がないと言いたいのかチミは!」 

「ああ、君と話しているだけでも怖いからね」

「シャー!!」

 威嚇を始めたシャレムを静止する。
 お決まりの手刀でだ。
 俺じゃなきゃ、見逃しちゃうね。

 なんやかんやあって、自称妖精王に案内されることになった。

 ここまで、ほぼ徒歩で一週間前かけたらしいのだが地竜に乗ることで時間短縮ができるので、妖精王は俺の後ろに乗せることにした。

「へぇ、よくもまあ地竜をここまで手懐けることができたね。すごい凶暴だって聞くから騎乗するの大変だったでしよ?」

 妖精王が興味津々に聞いてくる。

「それなら俺ではなくゴエディアに聞け。奴がいなきゃ手懐けることができなかったからな」

 そう言い、俺はすぐ側にいたゴエディアに指を差した。
 妖精王は、やはり興味のある声で彼に話し掛けた。

「へぇ、私と傲慢の魔術師が衝突した衝撃を防ぐほどの防御力だけじゃなく、凶暴な地竜を従わせるほどの調教術も兼ねているとは、これは恐れ入った!」

「調教しない。友達だから」

「うんうん、分かるよ! 竜達との友情が物凄く伝わるよ!」

「そう言ってもらえて、オデ嬉しい」

 おお、ゴエディアいい笑顔。
 地竜との友情を誉められて嬉しがるとは、やはりいい奴だな。

 一方のシャレムは、もう半年は経つというのに地竜とはまったく仲良くなった気配がしない。
 何故なら時々、地竜がワザと彼女を背中から落とすからだ。

「あでっ! なんで!?」

 ほら、今もだ。




 ――――― 



 あれから三日後。
 人魔大陸では考えられない自然に溢れた森に辿り着いた。
 アレン曰く、この奥に妖精王国が隠れているらしい。

「木々の中にはトラップとして生きているトレントっていう魔物も紛れているから、攻撃されないように注意してね」

 外から部外者を寄せ付けないためか、トレントとかいう魔物で守らせているらしい。
 かなり面倒な魔物なので忠告通り注意しながら進もうとしたのだが。

「あっ」

 嫌な声がした。
 またシャレムがなにかをしでかしたのか?
 と思っていたが、声の主はアレンだった。
 罠にかかったのか木の上に吊るされていた。

「うぉぉお! なんだこれぇ!!?」

 縄のせいで動けなくなくなっている。
 自国で捕まる王様って、どうなの?

 羽を使って飛べばいいのに。
 そんなことを思っていると、近くの茂みから複数人の影が飛び出してきた。
 アレンと同じ妖精たちだ。

「王様を発見したぞ!」

「王様だ!」

「やっと見つけた!」

 吊られているアレンを見て騒いでいる。
 まさか本当に王様だったとは。
 やはり人は見た目で判断するものじゃないな。
 ようやく妖精王国に到着できたし、お話をから―――

「殺せ!」

「国から逃げだした裏切り者などいらない! 殺せ!」

「「殺せ殺せ!」」

「ぎゃあああ! 助けてぇええ!!」

 なぜか妖精たちは王様であるアレンに向かって、本当に殺す勢いで槍などの鋭利な物を投げつけていた。
 え、ちょっ……。

「人間だ! 殺せ!」

「「殺せ殺せ!!」」

 今度はこちら側に矛先が向いた。
 なにこの妖精たち殺意ヤバいんですけど!?

 ひとまずアレンを置いて逃げることにした。
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