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第51話 神装の脅威
しおりを挟む「殺すなら俺を殺せ! 死ぬ覚悟だってある! テメェらに一矢報いることが出来るなら死ぬことなんざ怖くねぇよ!!」
アルスはそう言って、こちらを見てきた。
その眼には、確かに覚悟が宿っていた。
アイツ、本当に死ぬことを恐れていないようだ。
「黙れガキがぁ!!」
そう言いエリオットは、アルスの首に刃を食い込ませる。
皮膚が切れ、血が流れているというのにアルスは表情を変えない。
怒り、憎しみに染まったままだ。
「俺はガチでやるからな! 殺してやるぜ!?」
「だから、どうしたというのだ……?」
冷めきった声で、俺はそう言い切った。
子供を解放する代わりに死ねとか、簡単に飲み込むワケないだろ。
俺が死んだら本当にアルスを解放するのかも定かではない。
「この俺が、子供のために命を懸けるような善人に見えるのか? 殺すのなら殺せ、その後に貴様を片付ける。むしろ、邪魔だから纏めて消し灰にしてやろうか?」
魔導書を開き、アルスを盾にするエリオットに手をかざす。
無慈悲で冷酷な魔術師であることを、まだ奴が認識しているのなら一か八かの勝負だ。
・このままアルスを解放して命乞いをする。
・アルスを殺して反撃をしてくる。
・ハッタリだと思われ、条件を飲むのを待つか。
安心しろアルス。
俺はお前を見捨てたりはしない、大切な弟子だからな。
「……はは、テメェも結局は外道じゃねか。そうだよな、たかが餓鬼の命で、自殺する馬鹿なんざ居るわけがねぇよな」
「………」
「殺す!!」
アルスの首を掻き切ろうとした。
まさにその瞬間を見逃さず俺は、密かにエリオットの背後に顕現させていた【凶悪《イーヴィル》な鎖《チェーン》】で奴を拘束、
しようとしたのだが、鎖で拘束されたのはアルスの方だった。
アルスとエリオットの位置が入れ替わったのだ。
ああ、そうだった。
どうして忘れていたのか。
コイツの神装の能力を。
すぐに【凶悪《イーヴィル》な鎖《チェーン》】の魔術を解除してアルスの元へと駆け付ける。
鎖には強力な【腐食】効果が含まれている。
一瞬だがアルスに鎖を巻き付けてしまった。
なんとかして手を打たないと、細胞という細胞が黒く変色して死んでしまう。
「心代わりしたって噂が本当だったとはなロベリア!」
それを阻もうと真横からエリオットは剣を振るい、脇腹を裂かれる。
それでも俺が止まることはない。
痛みを必死に我慢して、倒れて動けなくなったアルスを抱き上げる。
そして懐から取り出した万能薬を飲ませる。
黒魔術に対しての効果があるのかは定かではないが、俺の持てる手段ではこれが最善だった。
「ガン無視してんじゃねぇよ!!」
背中をざっくりと切られるが、コイツに構っている場合ではなかった。
一旦、距離を取るため、エリオットと俺たちの境に炎属性魔術で壁を作る。
魔力を無駄に消費できない。
「俺には全然理解できねぇな! 傍若無人で悪名高いテメェがどうして他人のために戦うようになったのか!」
炎の壁の奥で、ケタケタ笑っていた。
表では正義面して、裏面ではここまで腐っていたとはな。
製作者にクレームの一つもでも入れたいところだ。
「ラインハルとテメェの決闘のとき不思議でならなかったんだ、どうしてロベリアの野郎は反撃をしようとしなかったのかってな。まさか、ここで答えが出るとは俺も幸運だ!」
炎の向こう側から斬撃がとばされる。
魔力障壁を張っていないため間一髪で避けてみせるが、飛んできたのは一発だけではなかった。
「甘ちゃんに成り下がったテメェに負ける気がしねぇ!」
奴の斬撃を避けながら考える。
エリオットの神装は指定した人物と自分の位置を入れ替える、かなり厄介な能力だ。
だが厄介ゆえ、次に発動するためのクールタイムが長い。
十分程度、と言ったところか。
発動範囲は広いが無限ではない。
逃走手段に使うなら、まだ近くにあるであろうエリーシャたちの乗っている漁船の誰かと一人入れ替わるという手段もある。
しかし、それでは漁船に乗っている他の連中に袋叩きにされてしまう。
奴は今、この大型船内部での生き残りとしか入れ替わることができないのだ。
アルスに万能薬を飲ませたおかげで侵食は止まったのだが、意識を失ってしまっている。
死なないこと祈りつつ、そっと床に寝かせる。
真っ直ぐ、エリオットと向き合う。
奴以外に他にいるかもしれない生き残りを確実に逃がさないためには、船全体を飲み込むほどの強力な魔術を放つ必要がある。
【虚構獄門《サムシング・イン・サイド》】しかない。
船ごとエリオットを閉じ込める。
そのためすでに船の外で、魔力を込めている。
あと少しで完成するため、あとはエリオットを無力化しなければならない。
温存のため魔力障壁や硬質化はなし。
黒魔術も使うことが出来ない。
完全なハンデ状態だが安心しろ、
「奇遇だな、俺も負ける気が微塵もしないぞ?」
「ああ?」
「他人を利用することでしか自身の立場を確立できない、貴様のような滑稽な奴にはな」
臨戦態勢に入る。
時間がない、このまま奴を殺すのも一つの手だが、虚構獄門への魔力を貯めているため一撃で仕留め切れないだろう。
「この野郎……ぶち殺してやる!」
できもしないことを喚くエリオットを嘲笑う。
ちょうどいい。
一瞬であの世に行く権利などコイツにはない。
死ぬことへの恐怖、痛みを焼き付けてから殺してやる。
さあ、最終局面だ―――
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