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ヒズミ
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「社長、今日の売り上げはどうですか?」
廃墟のようなビルの中には鍵屋ーヒズミ株式会社が存在している。
「イシシ、あるわけないですよ。吉田君。」
社長の畠山詭弁は、四角い大きな顔をニヤニヤさせながら言った。
「マジっすか?先月は、一千万円で今月ゼロってあり得ないっすよ。」
吉田は、鍵屋ーヒズミ株式会社に勤めて長い。
他には何人か社員はいるが毎日外回りでめったに会社には顔を出さない。
吉田は、一応、電話番と留守番を役割としている。
「吉田君、そもそもね、この会社は幽霊会社みたいなもんなんだよ。存在しているようでしてないと思ったらちょっと目の前にあるじゃない的な感じ。」
「社長、その説明スゲーアバウト。バカな俺でも分かる。」
「まぁ、神様、悪魔、あとは…」
「死神ですか?」
「そうそう、まぁ、あの人達に委託されて、僕も鍵を渡してるだけだからさ。」
「見えんすか?社長には神様とか悪魔とか。」
「吉田君にも見えてるじゃない。毎月一回鍵を置いてく早川アズミさんと岸谷史郎さんだよ。」
「え?あの時代遅れのボディコンの女と不動産屋にか見えない禿げたオッサンが?」
「まぁ、神様と悪魔の部下だけどね。」
「やっべー!俺知らないうちに霊感ビンビンじゃないっすか?どうしてくれるんすか?保険とか入っておいた方が良いかな…。」
「心配いらないよ。吉田君に憑依したって神様も悪魔もメリットないから。」
「そういう問題じゃないっすけど、てか、俺今気が付きました。神様と悪魔の架け橋なんすね?この会社。」
畠山は、和菓子を食べながら首を傾げた。中年太りで首がない。
「そんな大層でも無いけど吉田君の意見も一理あるね。すごい事してるかも…イシシ。」
「あの、たまには俺にも営業させて下さいよ。ここに毎朝来てカップラーメン食べてネットしてるだけですよ。脳みそが萎縮して老化現象起きたら労災もんすよ。」
「そっか、困ったね。吉田君には一日中ゴロゴロしてる才能があると思ったんだけどね。」
「いやいや、全然嬉しくないっすよ。合コンで鍵屋って言うと超ウケが良くてお持ち帰り出来るくらいっすよ。」
「超良いじゃん。」
畠山が、鼻をヒクヒクさせながら言った。
「まぁ、いいっすけど本来社長がここに居て電話でピピッと指示出してラーメン食べているもんじゃないっすか?」
「いやね、妻に体重百キロ超えたら離婚するって言われてるからさ、外回りして少しでも体動かしたいんだよね。」
「え?社長、奥さんいるんすか?てか結婚良く出来ましたね。」
吉田は、ゲラゲラ笑いながら言った。
「だよね。君みたいにイケメンには程遠くてデブでメガネじゃない。だから諦めてたんだけど、車で跳ねられて瀕死の状態の僕を看病してくれて逆プロポーズまでしてくれて天使だよね。」
「って事は、奥さん天使のナースっすね!」
「いや違うよ。妻が僕を車で跳ねたんだよ。」
「え?」
「まぁ、そんな感じだから吉田君は会社で待機しててよ。女の子連れ込んでも良いからさ。」
「もしかして社長車に轢かれてから見えるようになったんすか?」
「うん、それまではうだつの上がらないサラリーマンでさ。毎月営業成績ビリでリストラ寸前だったんだよね。僕さ自慢じゃないけど人見知りだし対人恐怖症なんだよね。」
吉田は、汗をかいている畠山を見つめて納得した。
「分かりました。社長、俺に留守番は任せて下さい。」
「お願いしますね。あ、そろそろ秋だから後、二人も帰って来るかな。」
「二人?」
「あぁ、吉田君会った事無いのか地方営業マンがいるんだよね。でも、吉田君毎年秋は長期間休暇取ってたからね。」
「すみませんね。読書の秋はずっと図書館にいるんすよ。じゃあ、今年は冬に長期間休暇取ってお二人に会おうかな。」
「まぁ、親睦を深めてみてよ。じゃあ、僕は帰るから。」
畠山は、太った体を揺らして早歩きで会社を出て行った。
吉田も、欠伸をして戸締まりをして帰路についた。
鍵屋ーヒズミ株式会社に泥棒が入ったのはその日の深夜だった…。
廃墟のようなビルの中には鍵屋ーヒズミ株式会社が存在している。
「イシシ、あるわけないですよ。吉田君。」
社長の畠山詭弁は、四角い大きな顔をニヤニヤさせながら言った。
「マジっすか?先月は、一千万円で今月ゼロってあり得ないっすよ。」
吉田は、鍵屋ーヒズミ株式会社に勤めて長い。
他には何人か社員はいるが毎日外回りでめったに会社には顔を出さない。
吉田は、一応、電話番と留守番を役割としている。
「吉田君、そもそもね、この会社は幽霊会社みたいなもんなんだよ。存在しているようでしてないと思ったらちょっと目の前にあるじゃない的な感じ。」
「社長、その説明スゲーアバウト。バカな俺でも分かる。」
「まぁ、神様、悪魔、あとは…」
「死神ですか?」
「そうそう、まぁ、あの人達に委託されて、僕も鍵を渡してるだけだからさ。」
「見えんすか?社長には神様とか悪魔とか。」
「吉田君にも見えてるじゃない。毎月一回鍵を置いてく早川アズミさんと岸谷史郎さんだよ。」
「え?あの時代遅れのボディコンの女と不動産屋にか見えない禿げたオッサンが?」
「まぁ、神様と悪魔の部下だけどね。」
「やっべー!俺知らないうちに霊感ビンビンじゃないっすか?どうしてくれるんすか?保険とか入っておいた方が良いかな…。」
「心配いらないよ。吉田君に憑依したって神様も悪魔もメリットないから。」
「そういう問題じゃないっすけど、てか、俺今気が付きました。神様と悪魔の架け橋なんすね?この会社。」
畠山は、和菓子を食べながら首を傾げた。中年太りで首がない。
「そんな大層でも無いけど吉田君の意見も一理あるね。すごい事してるかも…イシシ。」
「あの、たまには俺にも営業させて下さいよ。ここに毎朝来てカップラーメン食べてネットしてるだけですよ。脳みそが萎縮して老化現象起きたら労災もんすよ。」
「そっか、困ったね。吉田君には一日中ゴロゴロしてる才能があると思ったんだけどね。」
「いやいや、全然嬉しくないっすよ。合コンで鍵屋って言うと超ウケが良くてお持ち帰り出来るくらいっすよ。」
「超良いじゃん。」
畠山が、鼻をヒクヒクさせながら言った。
「まぁ、いいっすけど本来社長がここに居て電話でピピッと指示出してラーメン食べているもんじゃないっすか?」
「いやね、妻に体重百キロ超えたら離婚するって言われてるからさ、外回りして少しでも体動かしたいんだよね。」
「え?社長、奥さんいるんすか?てか結婚良く出来ましたね。」
吉田は、ゲラゲラ笑いながら言った。
「だよね。君みたいにイケメンには程遠くてデブでメガネじゃない。だから諦めてたんだけど、車で跳ねられて瀕死の状態の僕を看病してくれて逆プロポーズまでしてくれて天使だよね。」
「って事は、奥さん天使のナースっすね!」
「いや違うよ。妻が僕を車で跳ねたんだよ。」
「え?」
「まぁ、そんな感じだから吉田君は会社で待機しててよ。女の子連れ込んでも良いからさ。」
「もしかして社長車に轢かれてから見えるようになったんすか?」
「うん、それまではうだつの上がらないサラリーマンでさ。毎月営業成績ビリでリストラ寸前だったんだよね。僕さ自慢じゃないけど人見知りだし対人恐怖症なんだよね。」
吉田は、汗をかいている畠山を見つめて納得した。
「分かりました。社長、俺に留守番は任せて下さい。」
「お願いしますね。あ、そろそろ秋だから後、二人も帰って来るかな。」
「二人?」
「あぁ、吉田君会った事無いのか地方営業マンがいるんだよね。でも、吉田君毎年秋は長期間休暇取ってたからね。」
「すみませんね。読書の秋はずっと図書館にいるんすよ。じゃあ、今年は冬に長期間休暇取ってお二人に会おうかな。」
「まぁ、親睦を深めてみてよ。じゃあ、僕は帰るから。」
畠山は、太った体を揺らして早歩きで会社を出て行った。
吉田も、欠伸をして戸締まりをして帰路についた。
鍵屋ーヒズミ株式会社に泥棒が入ったのはその日の深夜だった…。
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