夢鍵ヒズミ

あらら

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黒鍵

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「はぁ、はぁ、ふぅー。逃げるのも苦労するぜ。」

阿倍野高次は、ボロアパートの死角になっている階段に座り込んだ。

やっぱりヤバい話には飛び付くもんじゃねーよな。

昨晩、いきなり寝込みを高次は数人に襲われた。

相手の攻撃を防いだ時に手に傷を負った。

数日前に、コンビニを一緒に襲った連中の仕業だ。

高次が、売上金を全て持ち去って逃げたのだ。


街でたむろしてた人間で本名も住所も知らない奴らと共謀したのに何故バレたのか高次には理解出来なかった。

高次には、生まれつきの特殊な能力が備わっていた。

時を止める事が出来た。

しかし、リスクは必ずデカくなって高次を襲った。

万引きすれば次の日に学校の階段から転げ落ちて骨折した。

大学受験で東大にカンニングをして合格したら父親が倒れて大学に入学すら出来なかった。

電車で好みの女の子にキスをしたら会社が倒産した。

それ以来、能力は使ってなかったが金と見栄でコンビニを襲った。

案の定、襲われた。

手の傷は意外と深く血が止まらなかった。

血の流れを止めたら何が起こるか分からないので使わなかった。

高次は、ポケットを探っているとサイフが出てきて地面に黒い鍵が落ちた。

黒い鍵なんて縁起が悪いと思いながらも吸い込まれるようにボロアパートの一室の扉を開けていた。

扉を開けると今まさに首を吊ろうとしている老人がいた。

高次は、考える間もなく能力を使ってしまった。

やべえ…そう思いながらも部屋に上がり込んで高次は、老人の悲惨な生活ぶりを見て胸が痛んだ。

水道、ガス、電気が全て止められていてヤミ金からの借金の督促状が何枚も見つかった。

仕方ないと高次は、固まった老人を抱えて市役所の生活保護課の椅子に座らせてコンビニの金を老人のポケットに入れてその場を去った。

しばらくして時を戻した。

金も行く場所も無くした高次は、黒い鍵を見つめて片っ端から家と言う家の扉を開けて行った。

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57ページ

喧嘩をしている家族。

子供を虐待してる親。

リストカットをしている少女。

強盗。

引きこもり。

あらゆる問題がある家ばかりの扉を開けては時を止めて高次は、対処した。

俺は、ボランティアマンかよ…。

作業着男がニヤニヤして高次に近づいて来た。

「どうですか?黒鍵のご利用は?快適ですか?」

「あんた誰だよ?」

「申し遅れました。鍵屋の畠山詭弁と申します。」

「じゃあ、これあんたのか…。返すよ。不幸の鍵だな。」

「本当によろしいのですか?良くお考え下さい。黒鍵を使いあなたの特殊な能力をプラスに使えば今までのような悪いリスクは無いのでは?」

そういえば、能力を正義に使った事がなかった。

知らないうちに手の傷は治っていた。

おお、これが効力か!

「使うぜ!黒鍵!」

「あの!」

高次は、それから一週間で何人もの人間を黒鍵を使い能力を使い助けてどんどん金も入って来て豪邸に住めるまでになった。

そんなおりに鍵屋の畠山が汗をかいて来た。

「おお!鍵屋、調子は最高だぜ!」

「それは、何よりです。あの、この間説明出来なかったんですけど鍵の無料使用は二日目までなので五日分で五百万頂きます。」

「ふーん、分かった。」

と言って高次は金庫から札束を出して畠山に渡した。

「あのさ、黒鍵はいくら?」

「あの、まことに申し訳ないのですが、鍵はレンタルのみなんです。しかし、あなたの能力と交換という形なのであれば黒鍵を差し上げますけど。」

高次は、迷ったが能力を失うのは無理だと考えて断った。

その、一ヶ月後に高次は、全財産をあの老人に匿名で寄付して旅に出た。

高次は、金よりも能力よりも大切な鍵を見つけた。

それは、愛だった。

リストカットをしていた少女に高次は、恋をしていたのだ。

少女の入院している病院に行き告白する。

その後の高次は、能力を使う事はなくなった。

鍵屋の畠山詭弁は遠くから現在の高次の姿を見てイシシと笑って黒い鍵を見つめた。
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