妊娠条令

あらら

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モンスター

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遺伝子操作により瓜二つの双子が生まれた。

最初に生まれたのは男で二番目に生まれたのが女だった。

生まれる時、赤子は泣くものだが二人とも泣かなかった。

しかし、呼吸はしていた。

圭介は、異端な双子を見て嫌な予感がした。


孝は、大喜びだった。

力は、赤子を見て不思議な顔をした。


「小さいな…。」


そんな言葉を発した。


成長が異常に早かった。


言葉を歩く事をすぐに覚えた。


しかし、力のような天才ではなかった。


暴力的で野蛮だった。

名前を、男は空で女は夏希という名前をつけた。

空は、幼稚園に通い出すと他の子よりも身長が大きかった。


空をノッポと言った男の子は空に殴られて前歯を折った。


空は、泣いている男の子を不思議な顔をして見つめていた。


夏希は、男女と言われて男の子を坂道から突き落とした。


夏希もまた泣いている男の子を見て不思議そうな顔をした。


二人は、冷静に観察しているのだ。


泣いた事のない空と夏希には理解出来なかった。

空と夏希を見て圭介は危険と感じ


孝は金儲けになると思った。


孝は、暴力的な二人に空手、ボクシングを習わせ裏では殺人マシーンとしてヒットマンにした。


孝の邪魔になる人間を殺させた。


中学生になると柔道を習わせてオリンピックに出場させた。


二人は金メダル選手になった。


「お前の子供は素晴らしい。」 

「父さん…。」


圭介は、ただ二人を恐れ仕事に逃げた。


孝は、第二、第三の空と夏希を作り出せと圭介に命令した。


孝の欲望は膨らむばかりだった。

ある日、空は、人間の心臓を手に持ち帰って来た。


「父さん、この心臓、まだ動いてるんだ。ホルマリン漬けにして良い?」


圭介は、言葉を失った。


「あぁ…。」


やっと言葉が出た。


「この心臓はマスコミの人間の心臓なんだ。」


「ふーん、そうなんだ。」


先に帰って来ていた優希が興味深い顔をして言った。


「コレクションにするよ。」


空と優希には罪悪感はない。


それだけに躊躇なく人を殺せる。


「人間の臓器全部揃えたいな。」


空は、愉快そうに心臓を触って言った。


優希は、羨ましそうだった。

次の日、今度は優希が人間の心臓を持ち帰って圭介に見せた。


「父さん、どうしたの?」


「いや、何でもない。」


圭介は、孝に電話をして空と夏希を預かって欲しいと頼み込んだ。


孝は、待っていたとばかりに夕方には迎えに来た。


圭介は、職場に行って空と夏希を避けた。


とんでもないモンスターを産み出してしまったと思った。


しかし、第二、第三の空と優希は生まれていた。
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