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crossroads
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「クラウス……」
甘い声が耳朶にかかり、さっきまでとは温度の違うキスが与えられる。
ネクタイが緩められ、はだけたシャツのあいだから、熱い手のひらがクラウスの肌に触れた。吐息がこぼれる。
「せっかくお気に入りのジャケットだったのに」
早々に剥ぎ取られたジャケットを見送って、そんな文句をつける。
「お気に入りならなおさら、汚さないように脱いでおかないと」
片目を瞑ったレナードの髪をクシャクシャとかき混ぜ、引き寄せた唇に噛みつく。そのまま、レナードのシャツを剥ぎ取ると、その硬い肌がぴたりと重なった。
兄弟同然に育った仲のいい家族。
微笑ましく、ときには心配されるほどに親密な親友。
そんな言葉じゃ表しきれない。クラウスにとっての唯一の存在。それは、ときに吐き気を催すほど甘くて苦しい。
「ベッドに誘っても?」
レナードがクラウスの胸元にキスをする。
「この椅子は、クラウスを抱くのにいささか狭い」
「私もちょうど同じことを提案しようと思ってた」
額をくっつけて笑い合い、奥のベッドルームへと移動する。飛び込むようにベッドに倒れ込めば、すぐさま熱い質量がクラウスにのし掛かった。またたく間に残りの布も脱ぎ捨ててしまう。
「情けないが、この歳になってもクラウスを前にすると興奮が抑えきれない」
熱い芯を押し付けながらレナードがおどける。
「それは、ここに帰る前から準備を済ませた私への嫌みか?」
片足を広げ、わざとらしくその奥を見せつける。いつも通りの自分を必死で思い出しながら、レナードを誘った。
「それなのに、レナードときたらピアノを弾けと言うんだから……」
引き寄せ、その奥にレナードを誘う。
「それは悪かった。それならそうと言ってくれたらいいのに」
焦らすようにレナードがキスをする。柔々と擦りつけられる感覚がもどかしい。
「だから、早くくれと言っているのに意地悪だな」
「欲しくて欲しくて一生懸命ねだってくれるクラウスが好きなんだ」
浅ましく誘うクラウスを閉じ込めたヘーゼルの瞳が細められた。
互いの脚を絡め、何度もキスを繰り返す。セックスなんか二人のあいだでは、ダンスをするくらいの緊張感しかなかったはずだ。それなのに、今はこんなにも愛おしい。
転がったレナードの上に跨がり、その唇を強く塞ぐ。乱れた黒髪を何度も撫でながら、腰を擦り付けた。
「キレイだな」
レナードが伸ばしたクラウス手の甲にキスをする。
「裸で男に跨がってる男が?」
「そう。俺にまたがってくれる美しい男に惚れ惚れするよ。まず光に透けるそのプラチナブロンドが美しい。俺を映したその海みたいに青い瞳も……それから」
「もういい」
しゃべるなと睨んで、その鍛えられた肩を押した。キスを仕掛けながら腰を上げ、その奥を指先で軽くなぐさめる。
「黙って」
そう弁えない命令をすると、クラウスはゆっくり自らの腰を落としていった。愛しい質量がクラウスのなかを満たしていく。
「ぁ……」
耐えきれずこぼれた吐息を飲み込んだ。身体を揺らし、なかから湧き上がる快感に身を任せる。
「レナー……ド……ッ」
緩やかな流れがもどかしく、乗馬のように背筋を伸ばす。奥深くまで刺さったその圧迫感が、さらに熱を高めていく。足に力を込め、レナードの上で激しくダンスを踊る。
「クラウス……っ……ちょっとゆっくり」
歯を食いしばったレナードがギュッと目を閉じた。
「むり……止まらな……ァアッ――」
腹の底から吹き上がった熱が一気に吐き出される。すべての血流が集まったかのように、下腹部がドクドクと脈打っていた。
少し身体を動かしただけで、その繋ぎ目から蜜が溢れる。それは、クラウスが仕込んでいたオイルかも知れないし、レナードから奪った熱かも知れない。
起き上がったレナードが、熱い息を吐き出しクラウスを抱き締める。
一瞬だって離れるものかとばかりに、繋ぎ目を押し付けキスをしながらまたベッドに押し倒された。
レナードに組み伏せられ、腹の奥を突き上げられる。
「あぅ……」
ビクビクと下腹部が痙攣を起こした。まだ、このくらいじゃ満たされない。
折りたたむように身体を押さえつけられ、キスをしたまま体内をかき混ぜられた。緩やかで優しく、次の瞬間には激しく奪い尽くすように。
「クラウス……クラウス、愛している……」
何度も耳にささやかれ、その熱さに身震いをした。
その言葉を嘘だなんて疑ったことはない。それがバックマン家の一人息子の、気ままなままごと遊びだなんて思ったこともない。
だけど、それが一生続くだなんて、そんな馬鹿げたことも考えない。
「私も……レナード、あなたを愛してる……」
この世界の誰よりも。
レナードのためなら自分はなんだってできる。
たとえば、この場所に、ほかの誰かが取って代わるのだとしても――。
何度、果てたのかも思い出せないほど愛し合い、なお、互いを求め合った。いつの間にか窓の外が薄暗くなり、愛をささやく声も掠れている。
やっと離れた身体がなお惜しくて、体液が冷める暇もないほど、ひたすら肌をくっつけた。
ベッドサイドのモニターに呼び出しのランプが光る。レナードが応答ボタンを押した。夕食はどうなさいますかと、控えめな声が聞こえる。あと一時間後に。そう頼んだレナードが通信を切った。
「ディナーの支度をしようか。うちの料理長がクラウスが帰るからと張り切っていたからな」
差し出された手を取ってバスルームに向かう。馬鹿みたいに広い浴槽に二人で使って、また何度もキスをした。
レナードが手早く身支度を調えていく。
ああ、これで終わりだ。震える指先がネクタイを締め、ジャケットを羽織る。もう、素肌は見えやしない。
レナードの背中を見つめたクラウスは、ゆっくりと深呼吸をした。
甘い声が耳朶にかかり、さっきまでとは温度の違うキスが与えられる。
ネクタイが緩められ、はだけたシャツのあいだから、熱い手のひらがクラウスの肌に触れた。吐息がこぼれる。
「せっかくお気に入りのジャケットだったのに」
早々に剥ぎ取られたジャケットを見送って、そんな文句をつける。
「お気に入りならなおさら、汚さないように脱いでおかないと」
片目を瞑ったレナードの髪をクシャクシャとかき混ぜ、引き寄せた唇に噛みつく。そのまま、レナードのシャツを剥ぎ取ると、その硬い肌がぴたりと重なった。
兄弟同然に育った仲のいい家族。
微笑ましく、ときには心配されるほどに親密な親友。
そんな言葉じゃ表しきれない。クラウスにとっての唯一の存在。それは、ときに吐き気を催すほど甘くて苦しい。
「ベッドに誘っても?」
レナードがクラウスの胸元にキスをする。
「この椅子は、クラウスを抱くのにいささか狭い」
「私もちょうど同じことを提案しようと思ってた」
額をくっつけて笑い合い、奥のベッドルームへと移動する。飛び込むようにベッドに倒れ込めば、すぐさま熱い質量がクラウスにのし掛かった。またたく間に残りの布も脱ぎ捨ててしまう。
「情けないが、この歳になってもクラウスを前にすると興奮が抑えきれない」
熱い芯を押し付けながらレナードがおどける。
「それは、ここに帰る前から準備を済ませた私への嫌みか?」
片足を広げ、わざとらしくその奥を見せつける。いつも通りの自分を必死で思い出しながら、レナードを誘った。
「それなのに、レナードときたらピアノを弾けと言うんだから……」
引き寄せ、その奥にレナードを誘う。
「それは悪かった。それならそうと言ってくれたらいいのに」
焦らすようにレナードがキスをする。柔々と擦りつけられる感覚がもどかしい。
「だから、早くくれと言っているのに意地悪だな」
「欲しくて欲しくて一生懸命ねだってくれるクラウスが好きなんだ」
浅ましく誘うクラウスを閉じ込めたヘーゼルの瞳が細められた。
互いの脚を絡め、何度もキスを繰り返す。セックスなんか二人のあいだでは、ダンスをするくらいの緊張感しかなかったはずだ。それなのに、今はこんなにも愛おしい。
転がったレナードの上に跨がり、その唇を強く塞ぐ。乱れた黒髪を何度も撫でながら、腰を擦り付けた。
「キレイだな」
レナードが伸ばしたクラウス手の甲にキスをする。
「裸で男に跨がってる男が?」
「そう。俺にまたがってくれる美しい男に惚れ惚れするよ。まず光に透けるそのプラチナブロンドが美しい。俺を映したその海みたいに青い瞳も……それから」
「もういい」
しゃべるなと睨んで、その鍛えられた肩を押した。キスを仕掛けながら腰を上げ、その奥を指先で軽くなぐさめる。
「黙って」
そう弁えない命令をすると、クラウスはゆっくり自らの腰を落としていった。愛しい質量がクラウスのなかを満たしていく。
「ぁ……」
耐えきれずこぼれた吐息を飲み込んだ。身体を揺らし、なかから湧き上がる快感に身を任せる。
「レナー……ド……ッ」
緩やかな流れがもどかしく、乗馬のように背筋を伸ばす。奥深くまで刺さったその圧迫感が、さらに熱を高めていく。足に力を込め、レナードの上で激しくダンスを踊る。
「クラウス……っ……ちょっとゆっくり」
歯を食いしばったレナードがギュッと目を閉じた。
「むり……止まらな……ァアッ――」
腹の底から吹き上がった熱が一気に吐き出される。すべての血流が集まったかのように、下腹部がドクドクと脈打っていた。
少し身体を動かしただけで、その繋ぎ目から蜜が溢れる。それは、クラウスが仕込んでいたオイルかも知れないし、レナードから奪った熱かも知れない。
起き上がったレナードが、熱い息を吐き出しクラウスを抱き締める。
一瞬だって離れるものかとばかりに、繋ぎ目を押し付けキスをしながらまたベッドに押し倒された。
レナードに組み伏せられ、腹の奥を突き上げられる。
「あぅ……」
ビクビクと下腹部が痙攣を起こした。まだ、このくらいじゃ満たされない。
折りたたむように身体を押さえつけられ、キスをしたまま体内をかき混ぜられた。緩やかで優しく、次の瞬間には激しく奪い尽くすように。
「クラウス……クラウス、愛している……」
何度も耳にささやかれ、その熱さに身震いをした。
その言葉を嘘だなんて疑ったことはない。それがバックマン家の一人息子の、気ままなままごと遊びだなんて思ったこともない。
だけど、それが一生続くだなんて、そんな馬鹿げたことも考えない。
「私も……レナード、あなたを愛してる……」
この世界の誰よりも。
レナードのためなら自分はなんだってできる。
たとえば、この場所に、ほかの誰かが取って代わるのだとしても――。
何度、果てたのかも思い出せないほど愛し合い、なお、互いを求め合った。いつの間にか窓の外が薄暗くなり、愛をささやく声も掠れている。
やっと離れた身体がなお惜しくて、体液が冷める暇もないほど、ひたすら肌をくっつけた。
ベッドサイドのモニターに呼び出しのランプが光る。レナードが応答ボタンを押した。夕食はどうなさいますかと、控えめな声が聞こえる。あと一時間後に。そう頼んだレナードが通信を切った。
「ディナーの支度をしようか。うちの料理長がクラウスが帰るからと張り切っていたからな」
差し出された手を取ってバスルームに向かう。馬鹿みたいに広い浴槽に二人で使って、また何度もキスをした。
レナードが手早く身支度を調えていく。
ああ、これで終わりだ。震える指先がネクタイを締め、ジャケットを羽織る。もう、素肌は見えやしない。
レナードの背中を見つめたクラウスは、ゆっくりと深呼吸をした。
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