Ich liebe dich~世界でいちばん身勝手なラブソング~

二一

文字の大きさ
3 / 8
crossroads

3

しおりを挟む
「クラウス……」
 甘い声が耳朶じだにかかり、さっきまでとは温度の違うキスが与えられる。
 ネクタイが緩められ、はだけたシャツのあいだから、熱い手のひらがクラウスの肌に触れた。吐息がこぼれる。
「せっかくお気に入りのジャケットだったのに」
 早々に剥ぎ取られたジャケットを見送って、そんな文句をつける。
「お気に入りならなおさら、汚さないように脱いでおかないと」
 片目を瞑ったレナードの髪をクシャクシャとかき混ぜ、引き寄せた唇に噛みつく。そのまま、レナードのシャツを剥ぎ取ると、その硬い肌がぴたりと重なった。
 兄弟同然に育った仲のいい家族。
 微笑ましく、ときには心配されるほどに親密な親友。
 そんな言葉じゃ表しきれない。クラウスにとっての唯一の存在。それは、ときに吐き気を催すほど甘くて苦しい。
「ベッドに誘っても?」
 レナードがクラウスの胸元にキスをする。
「この椅子は、クラウスを抱くのにいささか狭い」
「私もちょうど同じことを提案しようと思ってた」
 額をくっつけて笑い合い、奥のベッドルームへと移動する。飛び込むようにベッドに倒れ込めば、すぐさま熱い質量がクラウスにのし掛かった。またたく間に残りの布も脱ぎ捨ててしまう。
「情けないが、この歳になってもクラウスを前にすると興奮が抑えきれない」
 熱い芯を押し付けながらレナードがおどける。
「それは、ここに帰る前から準備を済ませた私への嫌みか?」
 片足を広げ、わざとらしくその奥を見せつける。いつも通りの自分を必死で思い出しながら、レナードを誘った。
「それなのに、レナードときたらピアノを弾けと言うんだから……」
 引き寄せ、その奥にレナードを誘う。
「それは悪かった。それならそうと言ってくれたらいいのに」
 焦らすようにレナードがキスをする。柔々と擦りつけられる感覚がもどかしい。
「だから、早くくれと言っているのに意地悪だな」
「欲しくて欲しくて一生懸命ねだってくれるクラウスが好きなんだ」
 浅ましく誘うクラウスを閉じ込めたヘーゼルの瞳が細められた。
 互いの脚を絡め、何度もキスを繰り返す。セックスなんか二人のあいだでは、ダンスをするくらいの緊張感しかなかったはずだ。それなのに、今はこんなにも愛おしい。
 転がったレナードの上に跨がり、その唇を強く塞ぐ。乱れた黒髪を何度も撫でながら、腰を擦り付けた。
「キレイだな」
 レナードが伸ばしたクラウス手の甲にキスをする。
「裸で男に跨がってる男が?」
「そう。俺にまたがってくれる美しい男に惚れ惚れするよ。まず光に透けるそのプラチナブロンドが美しい。俺を映したその海みたいに青い瞳も……それから」
「もういい」
 しゃべるなと睨んで、その鍛えられた肩を押した。キスを仕掛けながら腰を上げ、その奥を指先で軽くなぐさめる。
「黙って」
 そう弁えない命令をすると、クラウスはゆっくり自らの腰を落としていった。愛しい質量がクラウスのなかを満たしていく。
「ぁ……」
 耐えきれずこぼれた吐息を飲み込んだ。身体を揺らし、なかから湧き上がる快感に身を任せる。
「レナー……ド……ッ」
 緩やかな流れがもどかしく、乗馬のように背筋を伸ばす。奥深くまで刺さったその圧迫感が、さらに熱を高めていく。足に力を込め、レナードの上で激しくダンスを踊る。
「クラウス……っ……ちょっとゆっくり」
 歯を食いしばったレナードがギュッと目を閉じた。
「むり……止まらな……ァアッ――」
 腹の底から吹き上がった熱が一気に吐き出される。すべての血流が集まったかのように、下腹部がドクドクと脈打っていた。
 少し身体を動かしただけで、その繋ぎ目から蜜が溢れる。それは、クラウスが仕込んでいたオイルかも知れないし、レナードから奪った熱かも知れない。
 起き上がったレナードが、熱い息を吐き出しクラウスを抱き締める。
 一瞬だって離れるものかとばかりに、繋ぎ目を押し付けキスをしながらまたベッドに押し倒された。
 レナードに組み伏せられ、腹の奥を突き上げられる。
「あぅ……」
 ビクビクと下腹部が痙攣を起こした。まだ、このくらいじゃ満たされない。
 折りたたむように身体を押さえつけられ、キスをしたまま体内をかき混ぜられた。緩やかで優しく、次の瞬間には激しく奪い尽くすように。
「クラウス……クラウス、愛している……」
 何度も耳にささやかれ、その熱さに身震いをした。
 その言葉を嘘だなんて疑ったことはない。それがバックマン家の一人息子の、気ままなままごと遊びだなんて思ったこともない。
 だけど、それが一生続くだなんて、そんな馬鹿げたことも考えない。
「私も……レナード、あなたを愛してる……」
 この世界の誰よりも。
 レナードのためなら自分はなんだってできる。
 たとえば、この場所に、ほかの誰かが取って代わるのだとしても――。
 何度、果てたのかも思い出せないほど愛し合い、なお、互いを求め合った。いつの間にか窓の外が薄暗くなり、愛をささやく声も掠れている。
 やっと離れた身体がなお惜しくて、体液が冷める暇もないほど、ひたすら肌をくっつけた。
 ベッドサイドのモニターに呼び出しのランプが光る。レナードが応答ボタンを押した。夕食はどうなさいますかと、控えめな声が聞こえる。あと一時間後に。そう頼んだレナードが通信を切った。
「ディナーの支度をしようか。うちの料理長がクラウスが帰るからと張り切っていたからな」
 差し出された手を取ってバスルームに向かう。馬鹿みたいに広い浴槽に二人で使って、また何度もキスをした。
 レナードが手早く身支度を調えていく。
 ああ、これで終わりだ。震える指先がネクタイを締め、ジャケットを羽織る。もう、素肌は見えやしない。
 レナードの背中を見つめたクラウスは、ゆっくりと深呼吸をした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

寡黙な剣道部の幼馴染

Gemini
BL
【完結】恩師の訃報に八年ぶりに帰郷した智(さとし)は幼馴染の有馬(ありま)と再会する。相変わらず寡黙て静かな有馬が智の勤める大学の学生だと知り、だんだんとその距離は縮まっていき……

【完結・BL】春樹の隣は、この先もずっと俺が良い【幼馴染】

彩華
BL
俺の名前は綾瀬葵。 高校デビューをすることもなく入学したと思えば、あっという間に高校最後の年になった。周囲にはカップル成立していく中、俺は変わらず彼女はいない。いわく、DTのまま。それにも理由がある。俺は、幼馴染の春樹が好きだから。だが同性相手に「好きだ」なんて言えるはずもなく、かといって気持ちを諦めることも出来ずにダラダラと片思いを続けること早数年なわけで……。 (これが最後のチャンスかもしれない) 流石に高校最後の年。進路によっては、もう春樹と一緒にいられる時間が少ないと思うと焦りが出る。だが、かといって長年幼馴染という一番近い距離でいた関係を壊したいかと問われれば、それは……と踏み込めない俺もいるわけで。 (できれば、春樹に彼女が出来ませんように) そんなことを、ずっと思ってしまう俺だが……────。 ********* 久しぶりに始めてみました お気軽にコメント頂けると嬉しいです ■表紙お借りしました

幼馴染は僕を選ばない。

佳乃
BL
ずっと続くと思っていた〈腐れ縁〉は〈腐った縁〉だった。 僕は好きだったのに、ずっと一緒にいられると思っていたのに。 僕がいた場所は僕じゃ無い誰かの場所となり、繋がっていると思っていた縁は腐り果てて切れてしまった。 好きだった。 好きだった。 好きだった。 離れることで断ち切った縁。 気付いた時に断ち切られていた縁。 辛いのは、苦しいのは彼なのか、僕なのか…。

大工のおっさん、王様の側室になる

くろねこや
BL
庶民のオレが王様の側室に?! そんなのアリかよ?! オレ男だけど?! 王妃様に殺されちまう! ※『横書き』方向に設定してお読みください。 ※異母兄を『義兄』と表記してしまっておりました。『兄』に修正しました。(1/18・22:50)

【完結】I adore you

ひつじのめい
BL
幼馴染みの蒼はルックスはモテる要素しかないのに、性格まで良くて羨ましく思いながらも夏樹は蒼の事を1番の友達だと思っていた。 そんな時、夏樹に彼女が出来た事が引き金となり2人の関係に変化が訪れる。 ※小説家になろうさんでも公開しているものを修正しています。

天使から美形へと成長した幼馴染から、放課後の美術室に呼ばれたら

たけむら
BL
美形で天才肌の幼馴染✕ちょっと鈍感な高校生 海野想は、保育園の頃からの幼馴染である、朝川唯斗と同じ高校に進学した。かつて天使のような可愛さを持っていた唯斗は、立派な美形へと変貌し、今は絵の勉強を進めている。 そんなある日、数学の補習を終えた想が唯斗を美術室へと迎えに行くと、唯斗はひどく驚いた顔をしていて…? ※1話から4話までは別タイトルでpixivに掲載しております。続きも書きたくなったので、ゆっくりではありますが更新していきますね。 ※第4話の冒頭が消えておりましたので直しました。

オメガなパパとぼくの話

キサラギムツキ
BL
タイトルのままオメガなパパと息子の日常話。

青龍将軍の新婚生活

蒼井あざらし
BL
犬猿の仲だった青辰国と涼白国は長年の争いに終止符を打ち、友好を結ぶこととなった。その友好の証として、それぞれの国を代表する二人の将軍――青龍将軍と白虎将軍の婚姻話が持ち上がる。 武勇名高い二人の将軍の婚姻は政略結婚であることが火を見るより明らかで、国民の誰もが「国境沿いで睨み合いをしていた将軍同士の結婚など上手くいくはずがない」と心の中では思っていた。 そんな国民たちの心配と期待を背負い、青辰の青龍将軍・星燐は家族に高らかに宣言し母国を旅立った。 「私は……良き伴侶となり幸せな家庭を築いて参ります!」 幼少期から伴侶となる人に尽くしたいという願望を持っていた星燐の願いは叶うのか。 中華風政略結婚ラブコメ。 ※他のサイトにも投稿しています。

処理中です...