26 / 72
5月2日 最後の伝説
2
しおりを挟む
ゲームの世界において、落下の結果は様々だ。特になにもなく進む場合と、落下距離によってダメージを受ける場合、または落下を和らげる手段がある場合。ARK LEGENDはそのうしろ2つの複合で、落下直前に回避行動をすることでタメージを軽減させることができる。
『いたたた……』
別に自分が痛いわけでもないのについつい言葉に出てしまう。体力ゲージが半分になったのを確認しつつ、ユーリの姿を探した。
『ユーリ、大丈夫……そうだな』
振り返ったところで、きれいに起き上がったユーリが走って合流する。パーティは2人と2人に分かれてしまった。
『うしろ見とらんかった。ごめん』
謝るユーリに大丈夫だと笑い返して、さてどうしようかと考える。
『とりあえず、お香焚くね』
敵に遭遇しないようにするアイテムを発動させ、崖によりかかる。
『合流してくれるかな』
『ウワバミさん、着地苦手って言うとったもんなぁ』
2人でこの森を行動するのが困難なのは向こうも同じだが、ウワバミがいれば移動魔法を使うことができる。つまり、どうにかして合流しなければならない。いちばんは、同じ崖を落下してもらうことだが、ウワバミは落下後の着地が驚くほどに下手なのだ。
『あ、ミキニャからウィスコードにメッセきた』
ユーリの動きが一瞬止まる。
『こっち来るから、待っとってやって』
カナタが入れない場所でのやり取りに、忘れかけていた傷がまた少し疼く。
『よかった。じゃあ、ウロウロするとお香の効果なくなるし、ジッとしとこうか』
うなずき合って、崖に背中をもたれかけた。
ふと、視点を動かして高い崖のさらに上を眺める。
『カナタ、なにしとん?』
『空見てる』
ユーリが誘われるように同じ空を見上げた。
『昨日、結局城下町でボーッとしたまま終わっちゃったんだ。そのとき塔の上から夕焼けになってく空見ててキレイだなって……けど、現実だと空なんかわざわざ見ないなーとか考えてた』
『ホンマやな。俺も空とか見ぃひんわ……どうせビルばっかりやし、そういやどんな色しとんのかなぁ?』
しみじみとつぶやきながら、ユーリの視点はまだ空を眺めている。
『昔な……俺、じいちゃんとばあちゃんに育ててもらったんやけど、店にいっつも来る常連のおいやんがおって……』
『店?』
『焼き鳥とラーメンだけのちっこい店やっとってん。そこに週3日くらいくる、何しとるかよう分からんおいやんおってんけど』
不意に飛び込んできたユーリの生い立ちに、ドキリとした。
『そのおいやんがいっつも言うとったの……人は余裕があるときは上を向いて歩くけど、のうなったら下ばっかり見よる……ほやから、上見ときやって』
『なんか、深いね』
『俺はまだ小学生で、上ばっかし見よったら転けるやんとかヘリクツ言って……』
いつもより落ち着いたユーリの声が耳に心地良い。効果音で入る小鳥のさえずりもまた、この空気にマッチしているように思えた。
『そのあと、しばらくおいやんが来んようになって、2年くらい? ふらっと来たとき、どないしとったん、て聞いたら……上ばっかし見とったら転けてもたって、たまには下も見やんとアカンわって笑っとった』
『どうなってたか聞いてもいいとこ?』
おずおずと聞き返すと、ユーリがかすかに笑った。
『知らへん。おいやんはなんも言わんかったし、ばあちゃんの顔がいらんこと聞くなって言っとった。そやから、なんのオチもないんやけど、空見るって考えたら急に思い出してん』
やっと空から視線を戻したユーリと目が合う。カナタの大好きな顔がカナタを見つめてにっこりと笑った。
『俺、は……下ばっかり見てる気がするなぁ……』
空は思い出せないのに、いつもの道でアスファルトが割れているところなんかは、なぜか覚えているのだ。余裕がないのだろうか。そもそも、翼は自信を持って「ある」と言えるものがない。つまり、なにもないのだ。
『俺も。今度、外出たら、空見てみぃひん?』
『うん……』
次、外出たら……翼が次に外に出るのは連休明けの7日で、このゲームが終わる直前だ。きっとこんな穏やかな気持ちで見ることはできない。
『……終わりたくないなぁ……』
『カナタ……』
膝を抱えてうずくまったカナタの背中を、ユーリが優しく撫でてくれている。
終わりたくない。この世界から離れたくない。
『カナタ、お願いがあるんやけど……』
遠慮がちなユーリに、思わず顔を上げた。またウィスコードのIDを聞かれるのかとわずかに身構える。しかし、ユーリの口からは、予想外の言葉が出た。
『5日の午前中ってログインできへん?』
『午前中? なんで?』
今のスケジュールでいくと、カナタもユーリも午後から夜中にかけてログインするため、午前中は遅くまで寝ている。
『10時くらいでえぇんやけど……理由は聞かへんと……ってのはアカンかなぁ』
理由はきっとあるのだ。だけど、言えない?
どういうことだろう。あたりまえに疑問はあったものの、翼にはそれを断る理由もない。
『10時だったら起きてるし、いいよ。なんか分かんないけど楽しみにしとく』
カナタの返答にユーリが一瞬黙り込んだことから、それはもしかすると楽しくない何かなのかも知れないと、少し怖くなった。
『ユーリー! カナター!』
声が先に届き、画面の端に走るミキニャの姿と、そのうしろからウワバミが現れた。
『待たせてすまんな』
『いやいやいや。俺がしょーもないミスで落ちたんやから……ホンマ、すみません!』
謝るウワバミに、ユーリが慌てて謝る。その姿は土下座せんばかりに頭が低い。
ともあれ、無事揃ったから急ごうと、ミキニャがせっつく。すでに景色はオレンジがかっていて、もうまもなく夜がくる。
『ハーミット城へ戻るぞ』
ウワバミが杖を高く掲げる。移動魔法だ。そう、時間がないのだ。
次の瞬間、4人はハーミット城がある街の入り口に立っていた。
『いたたた……』
別に自分が痛いわけでもないのについつい言葉に出てしまう。体力ゲージが半分になったのを確認しつつ、ユーリの姿を探した。
『ユーリ、大丈夫……そうだな』
振り返ったところで、きれいに起き上がったユーリが走って合流する。パーティは2人と2人に分かれてしまった。
『うしろ見とらんかった。ごめん』
謝るユーリに大丈夫だと笑い返して、さてどうしようかと考える。
『とりあえず、お香焚くね』
敵に遭遇しないようにするアイテムを発動させ、崖によりかかる。
『合流してくれるかな』
『ウワバミさん、着地苦手って言うとったもんなぁ』
2人でこの森を行動するのが困難なのは向こうも同じだが、ウワバミがいれば移動魔法を使うことができる。つまり、どうにかして合流しなければならない。いちばんは、同じ崖を落下してもらうことだが、ウワバミは落下後の着地が驚くほどに下手なのだ。
『あ、ミキニャからウィスコードにメッセきた』
ユーリの動きが一瞬止まる。
『こっち来るから、待っとってやって』
カナタが入れない場所でのやり取りに、忘れかけていた傷がまた少し疼く。
『よかった。じゃあ、ウロウロするとお香の効果なくなるし、ジッとしとこうか』
うなずき合って、崖に背中をもたれかけた。
ふと、視点を動かして高い崖のさらに上を眺める。
『カナタ、なにしとん?』
『空見てる』
ユーリが誘われるように同じ空を見上げた。
『昨日、結局城下町でボーッとしたまま終わっちゃったんだ。そのとき塔の上から夕焼けになってく空見ててキレイだなって……けど、現実だと空なんかわざわざ見ないなーとか考えてた』
『ホンマやな。俺も空とか見ぃひんわ……どうせビルばっかりやし、そういやどんな色しとんのかなぁ?』
しみじみとつぶやきながら、ユーリの視点はまだ空を眺めている。
『昔な……俺、じいちゃんとばあちゃんに育ててもらったんやけど、店にいっつも来る常連のおいやんがおって……』
『店?』
『焼き鳥とラーメンだけのちっこい店やっとってん。そこに週3日くらいくる、何しとるかよう分からんおいやんおってんけど』
不意に飛び込んできたユーリの生い立ちに、ドキリとした。
『そのおいやんがいっつも言うとったの……人は余裕があるときは上を向いて歩くけど、のうなったら下ばっかり見よる……ほやから、上見ときやって』
『なんか、深いね』
『俺はまだ小学生で、上ばっかし見よったら転けるやんとかヘリクツ言って……』
いつもより落ち着いたユーリの声が耳に心地良い。効果音で入る小鳥のさえずりもまた、この空気にマッチしているように思えた。
『そのあと、しばらくおいやんが来んようになって、2年くらい? ふらっと来たとき、どないしとったん、て聞いたら……上ばっかし見とったら転けてもたって、たまには下も見やんとアカンわって笑っとった』
『どうなってたか聞いてもいいとこ?』
おずおずと聞き返すと、ユーリがかすかに笑った。
『知らへん。おいやんはなんも言わんかったし、ばあちゃんの顔がいらんこと聞くなって言っとった。そやから、なんのオチもないんやけど、空見るって考えたら急に思い出してん』
やっと空から視線を戻したユーリと目が合う。カナタの大好きな顔がカナタを見つめてにっこりと笑った。
『俺、は……下ばっかり見てる気がするなぁ……』
空は思い出せないのに、いつもの道でアスファルトが割れているところなんかは、なぜか覚えているのだ。余裕がないのだろうか。そもそも、翼は自信を持って「ある」と言えるものがない。つまり、なにもないのだ。
『俺も。今度、外出たら、空見てみぃひん?』
『うん……』
次、外出たら……翼が次に外に出るのは連休明けの7日で、このゲームが終わる直前だ。きっとこんな穏やかな気持ちで見ることはできない。
『……終わりたくないなぁ……』
『カナタ……』
膝を抱えてうずくまったカナタの背中を、ユーリが優しく撫でてくれている。
終わりたくない。この世界から離れたくない。
『カナタ、お願いがあるんやけど……』
遠慮がちなユーリに、思わず顔を上げた。またウィスコードのIDを聞かれるのかとわずかに身構える。しかし、ユーリの口からは、予想外の言葉が出た。
『5日の午前中ってログインできへん?』
『午前中? なんで?』
今のスケジュールでいくと、カナタもユーリも午後から夜中にかけてログインするため、午前中は遅くまで寝ている。
『10時くらいでえぇんやけど……理由は聞かへんと……ってのはアカンかなぁ』
理由はきっとあるのだ。だけど、言えない?
どういうことだろう。あたりまえに疑問はあったものの、翼にはそれを断る理由もない。
『10時だったら起きてるし、いいよ。なんか分かんないけど楽しみにしとく』
カナタの返答にユーリが一瞬黙り込んだことから、それはもしかすると楽しくない何かなのかも知れないと、少し怖くなった。
『ユーリー! カナター!』
声が先に届き、画面の端に走るミキニャの姿と、そのうしろからウワバミが現れた。
『待たせてすまんな』
『いやいやいや。俺がしょーもないミスで落ちたんやから……ホンマ、すみません!』
謝るウワバミに、ユーリが慌てて謝る。その姿は土下座せんばかりに頭が低い。
ともあれ、無事揃ったから急ごうと、ミキニャがせっつく。すでに景色はオレンジがかっていて、もうまもなく夜がくる。
『ハーミット城へ戻るぞ』
ウワバミが杖を高く掲げる。移動魔法だ。そう、時間がないのだ。
次の瞬間、4人はハーミット城がある街の入り口に立っていた。
11
あなたにおすすめの小説
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
その首輪は、弟の牙でしか外せない。
ゆずまめ鯉
BL
養子ゆえに、王位継承権を持たないオメガで長男のレイン(24)は、国家騎士団として秘密裏に働き、ただ義弟たちを守るためだけに生きてきた。
第一継承権を持つアルファで次男のリオール(19)は、そんな兄に「ごく潰し」と陰口を叩く連中を許せなかった。自分を犠牲にしてまで守る価値はないと思っていた。なにかと怪我の多い国家騎士団を辞めさせたかった。
初めて訪れた発情期のとき。約束をすっぽかされたリオールが不審に思い、兄の部屋へ行くと、国家騎士団の同僚──グウェンソード(28)に押し倒されるところを目撃して激高する。
「今すぐ部屋から出ろ!」
独占欲をあらわにしたリオールは、グウェンソードを部屋から追い出し、兄であるレインを欲望のままに抱いた。
翌朝、差し出されたのは特注の首輪──外せるのはリオールのみ。
「俺以外に触らせるな」
そう囁かれたレインは、何年も首輪と弟の執着に縛られ続けてきた。
弟には婚約者がいるのに、こんな関係を続けてもいいのか。
本当にこのままでもいいのか。
ひたすら執着して独占したがる弟と、罪悪感に苛まれる兄。
その首輪は、いつか弟の牙で血に染まるのか──。
どうにかしてレインを落としたいリオールと、弟との関係に悩むレインのオメガバースです。
リオール・グランケット(19)×レイン・グランケット(24)
※この作品は2015年頃に本文を書き、2017年頃にオメガバースに改稿、さらに2026年に手直しした作品になります。読みにくいかもしれません。ご了承ください。
三人称ですが攻めだったり受けだったり視点がよくかわります。攻め視点多めです。
【完結】極貧イケメン学生は体を売らない。
紫紺
BL
貧乏学生をスパダリが救済!?代償は『恋人のフリ』だった。
相模原涼(さがみはらりょう)は法学部の大学2年生。
超がつく貧乏学生なのに、突然居酒屋のバイトをクビになってしまった。
失意に沈む涼の前に現れたのは、ブランドスーツに身を包んだイケメン、大手法律事務所の副所長 城南晄矢(じょうなんみつや)。
彼は涼にバイトしないかと誘うのだが……。
※表紙をAI君に描いてもらいました。(2026.2.21)
※本作品中の公判、判例、事件等は全て架空のものです。完全なフィクションであり、参考にした事件等もございません。拙い表現や現実との乖離はどうぞご容赦ください。
泣き虫だったはずの幼なじみが再会したら僕を守るために完璧超人になっていた話。
ネギマ
BL
気弱で泣き虫な高校生、日比野千明は、昔からいじめられっ子体質だった。
高校生になればマシになるかと期待したが状況は変わらず、クラスメイトから雑用を押し付けられる毎日を送っていた。
そんなある日、いつものように雑用を押し付けられそうになっている千明を助けたのは、学校中が恐れる“完璧超人”の男子生徒、山吹史郎だった。
文武両道、眉目秀麗、近寄りがたい雰囲気を纏う一匹狼の生徒だったが、実は二人は、幼い頃に離れ離れになった幼なじみだった――。
アルカナの英雄は死神皇子に嫁ぐ
霖
BL
難攻不落と言われたアルカナ砦を攻略し、帝都に名が届くほどの軍功を上げた辺境国王の庶子リセル。しかし英雄として凱旋したリセルを待ち受けていたのは、帝国の第三皇子ジュノビオの不可解な求婚だった。
実直皇子×お人好し美人
※ほかのサイトにも同時に投稿しています。
【大賞・完結】地味スキル《お片付け》は最強です!社畜OL、異世界でうっかり国を改革しちゃったら、騎士団長と皇帝陛下に溺愛されてるんですが!?
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞で大賞をいただきました】→【規約変更で書籍化&コミカライズ「確約」は取り消しになりました。】
佐藤美佳子(サトウ・ミカコ)、享年28歳。死因は、過労。連日の徹夜と休日出勤の果てに、ブラック企業のオフィスで静かに息を引き取った彼女が次に目覚めたのは、剣と魔法のファンタジー世界だった。
新たな生を受けたのは、田舎のしがない貧乏貴族の娘、ミカ・アシュフィールド、16歳。神様がくれた転生特典は、なんと《完璧なる整理整頓》という、とんでもなく地味なスキルだった。
「せめて回復魔法とかが良かった……」
戦闘にも生産にも役立たないスキルに落胆し、今度こそは静かに、穏やかに生きたいと願うミカ。しかし、そんな彼女のささやかな望みは、王家からの突然の徴収命令によって打ち砕かれる。
「特殊技能持ちは、王宮へ出仕せよ」
家族を守るため、どうせ役立たずと追い返されるだろうと高をくくって王都へ向かったミカに与えられた任務は、あまりにも無謀なものだった。
「この『開かずの倉庫』を、整理せよ」
そこは、数百年分の備品や資材が山と積まれ、あまりの混沌ぶりに探検隊が遭難したとまで噂される、王家最大の禁足地。
絶望的な光景を前に、ミカが覚悟を決めてスキルを発動した瞬間――世界は、彼女の「お片付け」が持つ真の力に震撼することになる。
これは、地味スキルでうっかり国のすべてを最適化してしまった元社畜令嬢が、カタブツな騎士団長や有能すぎる皇帝陛下にその価値を見出され、なぜか過保護に甘やかされてしまう、お仕事改革ファンタジー。
僕の恋人は、超イケメン!!
八乙女 忍
BL
僕は、普通の高校2年生。そんな僕にある日恋人ができた!それは超イケメンのモテモテ男子、あまりにもモテるため女の子に嫌気をさして、偽者の恋人同士になってほしいとお願いされる。最初は、嘘から始まった恋人ごっこがだんだん本気になっていく。お互いに本気になっていくが・・・二人とも、どうすれば良いのかわからない。この後、僕たちはどうなって行くのかな?
本気になった幼なじみがメロすぎます!
文月あお
BL
同じマンションに住む年下の幼なじみ・玲央は、イケメンで、生意気だけど根はいいやつだし、とてもモテる。
俺は失恋するたびに「玲央みたいな男に生まれたかったなぁ」なんて思う。
いいなぁ玲央は。きっと俺より経験豊富なんだろうな――と、つい出来心で聞いてしまったんだ。
「やっぱ唇ってさ、やわらけーの?」
その軽率な質問が、俺と玲央の幼なじみライフを、まるっと変えてしまった。
「忘れないでよ、今日のこと」
「唯くんは俺の隣しかだめだから」
「なんで邪魔してたか、わかんねーの?」
俺と玲央は幼なじみで。男同士で。生まれたときからずっと一緒で。
俺の恋の相手は女の子のはずだし、玲央の恋の相手は、もっと素敵な人であるはずなのに。
「素数でも数えてなきゃ、俺はふつーにこうなんだよ、唯くんといたら」
そんな必死な顔で迫ってくんなよ……メロすぎんだろーが……!
【攻め】倉田玲央(高一)×【受け】五十嵐唯(高三)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる