Vegetables

Vegetablesー２ー

嫉妬と葛藤 ２

「千章くーん、今日の日替わりなにー？」

「今日は親子丼です」

「カロリー高いかなー？」

「ふわふわ卵でおいしいですよ」

「わーじゃあそれにする」

「えー、あたしどうしようかなぁ」

　今日の常連は、向かいにある事務用品の会社に勤めるＯＬ三人組。週に一～二回のペースで昼食を食べにくる。

　決まってカウンターに座るため、必然的に俺が接客するような感じになっていた。

「千章くんっていくつ？」

「二十二歳です」「わかーい」

「地元の人？」

「そうですよ。大学は外でましたけど」

「料理うまいよね～」

「ありがとうございます」

「彼女いるのー？」

「恋人ならいますよ」「えー！？」

　正直苦手なテンションだ……。

　最近俺は意外と自分が接客業向きだということに気づき始めた。なぜって、仕事モードに入るとどんな客にでもニッコリ対応できるんだ。

　ただ今日は笑顔が若干引きつり気味な自覚はある。なぜなら、ＯＬ三人組と時を同じくして、律がきていたんだ。

　本人は普通にしているつもりなんだろうけど、律からは不機嫌オーラがでている。俺なんかに妬いてくれるんだもんな。

「ねー千章くんの彼女ってどんな子？」

「普通ですよ。優しいです」

「きゃーいいなぁ、千章くんの彼女だったら、いつでもおいしいごはん食べれるんだもんねー」

「そんな作らないですよ」

「なんでー？」

「男ってやっぱり彼女に作ってもらいたいですからね」

「えー？　それって逆にプレッシャー……」

「だよねー？　料理の上手い彼氏に手料理なんてねぇ」

　ああ、いい加減解放されたい――。

「お嬢さんたち、そろそろ時間大丈夫ですか？」

　隣から社長が声をかけてくれた。三人組は慌てて勘定を済ませ向かいのビルへと帰っていく。

　律もいつの間にか帰ってしまっていた。あーあ、拗ねてるだろうな。

「佐倉君、随分と気に入られたね」

「はぁ……なんででしょうね？」

　本当、俺はそんなに女の子からモテるタイプではないと思うんだけど。

「それは佐倉君が優しく話を聞いてくれるからですよ」

「普通だと思うんですけど」

「それに佐倉君に恋人がいるとは始めて聞きました。今度ぜひ連れてきてくださいね。ごちそうしますから」

　社長にニッコリ笑いかけられて俺は固まってしまった。社長は間違いなく善意で言ってくれている。

　けど、けど――すでに店に来てる――とは口が裂けても言えない。まぁ、社交辞令ってやつだよな。