120 / 160
Vegetables―スピンオフ―
あいつらの旅行 6
しおりを挟む
――脱衣所のドアが開き、一人の客が入ってくる。
その姿を目の端に映した瞬間、おれの心臓は再び早鐘のように鼓動を刻みだした。一時でもタイミングがずれてたら……想像しただけで温泉の中だというのに背筋に冷たいものを感じる。
荒くなった息は簡単には治まらず、おれは俯き加減で必死に平静を装う努力をしたんだ。
「危機一髪――だな」
あっけらかんと呟く律を思わず睨みつける。律の図太さは知ってたはずだけど、いくらなんでも――あぁ! 言葉で言い尽くせねぇ――……っていうか……。
「あり得ねぇ……」
おれは言いたいことも山ほどあったはずなのに、結局は脱力したようにそれだけしか口に出せなかった。
「ヨカッタろ?」
「…………っ!」
悪びれずニヤリと覗き込む律におれはもうどうしようもなく口をパクパクさせていた。きっと顔は赤いしとんでもなく間抜けな顔だったと思う。まぁ赤い顔は温泉でのぼせたって感じに見えるだろうから傍目には不審じゃないんだろうけど。
「出るか?」
「も、ちょっと待てよ……」
まともに立てる気がしなくて思わず律の腕を掴んで引き止めた。
「顔、赤い。のぼせるぞ」
「っ誰のせいだよっ」
正気に戻るとひたすら恥ずかしさだけが残る。律の顔すらまともに見ることが出来ない。
「あ、そのまま出たら困るか」
「え?――ぁあっ……ん……ふっ、何す――っ」
淡々と呟いた律が予備動作なしにさっきまで律を受け入れていた後部を押し広げようとする。叫びそうになる息を必死に逃して律の腕を掴んだ指に力を入れた。
「ゴム無かったからな」
「やめ……湯、よごれるっ――ん……指、抜いて……」
すんなりと受け入れてしまった内部で掻きだすように指を曲げられ必死に声を殺す。対岸で湯船に浸かる客のシルエットが薄っすらと見えてしまい、おれは気づかれないよう思い切り俯いた。
「こんだけ濁ってりゃ分からねぇよ。そんな力入れんな」
そういう問題じゃないっ――文句はもちろん伝えられるはずもなく、ただただ唇を噛んでおくしかない。目の奥が熱くなってきた……。
「…………っん――ハァ……も、やめ」
「――ん? 随分と元気になってるじゃないか」
不意に律の手が移動しからかうような声に勢いよく顔をあげた。
「っうるさいっ……」
じんわりと二度目の欲望を蓄え始めたおれ自身をからかう律の手を湯船の中で追い払い、多分真っ赤になっているだろう目で力いっぱい睨みつけた。
もちろん律はどこ吹く風だ。
ムカつく――。
その姿を目の端に映した瞬間、おれの心臓は再び早鐘のように鼓動を刻みだした。一時でもタイミングがずれてたら……想像しただけで温泉の中だというのに背筋に冷たいものを感じる。
荒くなった息は簡単には治まらず、おれは俯き加減で必死に平静を装う努力をしたんだ。
「危機一髪――だな」
あっけらかんと呟く律を思わず睨みつける。律の図太さは知ってたはずだけど、いくらなんでも――あぁ! 言葉で言い尽くせねぇ――……っていうか……。
「あり得ねぇ……」
おれは言いたいことも山ほどあったはずなのに、結局は脱力したようにそれだけしか口に出せなかった。
「ヨカッタろ?」
「…………っ!」
悪びれずニヤリと覗き込む律におれはもうどうしようもなく口をパクパクさせていた。きっと顔は赤いしとんでもなく間抜けな顔だったと思う。まぁ赤い顔は温泉でのぼせたって感じに見えるだろうから傍目には不審じゃないんだろうけど。
「出るか?」
「も、ちょっと待てよ……」
まともに立てる気がしなくて思わず律の腕を掴んで引き止めた。
「顔、赤い。のぼせるぞ」
「っ誰のせいだよっ」
正気に戻るとひたすら恥ずかしさだけが残る。律の顔すらまともに見ることが出来ない。
「あ、そのまま出たら困るか」
「え?――ぁあっ……ん……ふっ、何す――っ」
淡々と呟いた律が予備動作なしにさっきまで律を受け入れていた後部を押し広げようとする。叫びそうになる息を必死に逃して律の腕を掴んだ指に力を入れた。
「ゴム無かったからな」
「やめ……湯、よごれるっ――ん……指、抜いて……」
すんなりと受け入れてしまった内部で掻きだすように指を曲げられ必死に声を殺す。対岸で湯船に浸かる客のシルエットが薄っすらと見えてしまい、おれは気づかれないよう思い切り俯いた。
「こんだけ濁ってりゃ分からねぇよ。そんな力入れんな」
そういう問題じゃないっ――文句はもちろん伝えられるはずもなく、ただただ唇を噛んでおくしかない。目の奥が熱くなってきた……。
「…………っん――ハァ……も、やめ」
「――ん? 随分と元気になってるじゃないか」
不意に律の手が移動しからかうような声に勢いよく顔をあげた。
「っうるさいっ……」
じんわりと二度目の欲望を蓄え始めたおれ自身をからかう律の手を湯船の中で追い払い、多分真っ赤になっているだろう目で力いっぱい睨みつけた。
もちろん律はどこ吹く風だ。
ムカつく――。
0
あなたにおすすめの小説
塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。
男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
陰キャな俺、人気者の幼馴染に溺愛されてます。
陽七 葵
BL
主人公である佐倉 晴翔(さくら はると)は、顔がコンプレックスで、何をやらせてもダメダメな高校二年生。前髪で顔を隠し、目立たず平穏な高校ライフを望んでいる。
しかし、そんな晴翔の平穏な生活を脅かすのはこの男。幼馴染の葉山 蓮(はやま れん)。
蓮は、イケメンな上に人当たりも良く、勉強、スポーツ何でも出来る学校一の人気者。蓮と一緒にいれば、自ずと目立つ。
だから、晴翔は学校では極力蓮に近付きたくないのだが、避けているはずの蓮が晴翔にベッタリ構ってくる。
そして、ひょんなことから『恋人のフリ』を始める二人。
そこから物語は始まるのだが——。
実はこの二人、最初から両想いだったのにそれを拗らせまくり。蓮に新たな恋敵も現れ、蓮の執着心は過剰なモノへと変わっていく。
素直になれない主人公と人気者な幼馴染の恋の物語。どうぞお楽しみ下さい♪
男子寮のベットの軋む音
なる
BL
ある大学に男子寮が存在した。
そこでは、思春期の男達が住んでおり先輩と後輩からなる相部屋制度。
ある一室からは夜な夜なベットの軋む音が聞こえる。
女子禁制の禁断の場所。
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる