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Vegetables―スピンオフ―
あいつらの旅行 7
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「お客様、どうかされましたか?」
「いえ、風呂でのぼせただけなんで、部屋で少し休ませます」
「そうでしたか。何かございましたら遠慮なくお申し付けください」
「どうも――」
律に支えられながらなんとか着替えをして部屋へと戻る途中で、仲居さんから声をかけられた。
傍目にはぐったりした病人にでも見えたんだろう。
当たり前のように嘘をつく律を仲居さんは疑うことなく(そりゃそうか)あっさりと去っていった。
もう早く部屋に帰りたい――。
「千章、大丈夫か?」
「……ぬけぬけと……」
部屋に入るなり思い切り畳みに身体を投げ出したおれを、律は笑いを含んだ表情で覗き込みながら聞いてきた。
続き間にはちょうど夕食の支度が整えられ、土瓶からは湯気が立ちのぼっている。
「ああいうのもたまにはいいかもな?」
おれの目にかかる前髪を弄びながら呟く声があながち冗談でもないように聞こえて、おれは内心思いっきり焦っていた。
「ふざけんなっ」
「不満か?」
問いかける律に、今なら――と文句をまくし立てようと身体を起こそうと腕をついた――って、コイツ何考えてっ。
「っ当たり前だろ――って、ナニ脱がしてんだよ!?」
律の手が徐におれの浴衣の袂を開いていく。
「不満、なんだろ? 仕切り直してやるよ」
その目は明らかに本気だ。
「……っ!! 冗談! 満足した! 満足したからっ……!」
冗談じゃない――。おれは必死で浴衣の中に侵入してくる律の手を押し返した。力で敵わないのは知ってるけど、さすがにさっきの今でって身体がもたない。
「……っ律!……んっ……夕飯、冷めるっ」
おれはなんとか律の意識を逸らそうと、中庭を臨む和室に準備された豪華な食事を指した。ってしかも中庭……障子開いたままだし――!
そのまま押し倒され浴衣の裾からも律の手が侵入している。さっきの熱が覚めやらないおれ自身がすでに軽く反応を返していた。
「律っ――。やめろって……くっ……窓、外からも見えるっ」
敵わないと分かってはいるものの大人しく身を任せる訳にもいかず、おれは必死に律の手を押し戻そうと全力を尽くしていた。
「あんなんで治まるかよ……ジッとしてろ――」
こいつ――全然人の話きいてないし。
案の定おれの抵抗なんか意味がなく易々と目的に辿りついた律の手指は、熱をもち始めたおれ自身をゆっくりと包み込む。たったそれだけでついさっきの記憶が呼び戻され、全身が熱くなってしまう。
「ふ……ぁ……やめ――」
「おまえだって足りてないだろ? 千章――」
「っ足り、てる……ゃあっ――ん」
「これのどこが足りてるんだ? もう滑ってる」
意地悪くくすりと笑った律が包み込んだままの指で先端を強く押さえる。身体の芯を駆け上がる痺れに思わず腰が浮き上がった。
冷めるしやめとくか?――耳元で律が囁いた。
サイテーだ……。律はいつもどうしようもなくなるくらい煽ってから問いかけてくるんだ。拒否できないのなんて分かるはずなのに――。
「――ふ……ぁ……先、律がいい」
そして結局は言わされてしまう。おれの口から律が欲しいって――。
それでもって、ソレを口にしたら律はすごくうれしそうな顔をする。その顔を見たらなんか「ま、いっか」って気分になってしまう。おれも大概重症だよな。
律の手がゆっくりと浴衣の裾を開いていった。
「律――せめて障子閉めろよ。外から見える……」
おれは抵抗を止め、すでにその気になってる律に懇願する。律はチラリと中庭を見て、フッと笑った。なんとも凶悪な笑顔で――。
「人が来ないほうに賭けるか?」
「はっ!? 来たらどうすんだよ!?」
「千章はそのほうが感じるみたいだからな――」
「いえ、風呂でのぼせただけなんで、部屋で少し休ませます」
「そうでしたか。何かございましたら遠慮なくお申し付けください」
「どうも――」
律に支えられながらなんとか着替えをして部屋へと戻る途中で、仲居さんから声をかけられた。
傍目にはぐったりした病人にでも見えたんだろう。
当たり前のように嘘をつく律を仲居さんは疑うことなく(そりゃそうか)あっさりと去っていった。
もう早く部屋に帰りたい――。
「千章、大丈夫か?」
「……ぬけぬけと……」
部屋に入るなり思い切り畳みに身体を投げ出したおれを、律は笑いを含んだ表情で覗き込みながら聞いてきた。
続き間にはちょうど夕食の支度が整えられ、土瓶からは湯気が立ちのぼっている。
「ああいうのもたまにはいいかもな?」
おれの目にかかる前髪を弄びながら呟く声があながち冗談でもないように聞こえて、おれは内心思いっきり焦っていた。
「ふざけんなっ」
「不満か?」
問いかける律に、今なら――と文句をまくし立てようと身体を起こそうと腕をついた――って、コイツ何考えてっ。
「っ当たり前だろ――って、ナニ脱がしてんだよ!?」
律の手が徐におれの浴衣の袂を開いていく。
「不満、なんだろ? 仕切り直してやるよ」
その目は明らかに本気だ。
「……っ!! 冗談! 満足した! 満足したからっ……!」
冗談じゃない――。おれは必死で浴衣の中に侵入してくる律の手を押し返した。力で敵わないのは知ってるけど、さすがにさっきの今でって身体がもたない。
「……っ律!……んっ……夕飯、冷めるっ」
おれはなんとか律の意識を逸らそうと、中庭を臨む和室に準備された豪華な食事を指した。ってしかも中庭……障子開いたままだし――!
そのまま押し倒され浴衣の裾からも律の手が侵入している。さっきの熱が覚めやらないおれ自身がすでに軽く反応を返していた。
「律っ――。やめろって……くっ……窓、外からも見えるっ」
敵わないと分かってはいるものの大人しく身を任せる訳にもいかず、おれは必死に律の手を押し戻そうと全力を尽くしていた。
「あんなんで治まるかよ……ジッとしてろ――」
こいつ――全然人の話きいてないし。
案の定おれの抵抗なんか意味がなく易々と目的に辿りついた律の手指は、熱をもち始めたおれ自身をゆっくりと包み込む。たったそれだけでついさっきの記憶が呼び戻され、全身が熱くなってしまう。
「ふ……ぁ……やめ――」
「おまえだって足りてないだろ? 千章――」
「っ足り、てる……ゃあっ――ん」
「これのどこが足りてるんだ? もう滑ってる」
意地悪くくすりと笑った律が包み込んだままの指で先端を強く押さえる。身体の芯を駆け上がる痺れに思わず腰が浮き上がった。
冷めるしやめとくか?――耳元で律が囁いた。
サイテーだ……。律はいつもどうしようもなくなるくらい煽ってから問いかけてくるんだ。拒否できないのなんて分かるはずなのに――。
「――ふ……ぁ……先、律がいい」
そして結局は言わされてしまう。おれの口から律が欲しいって――。
それでもって、ソレを口にしたら律はすごくうれしそうな顔をする。その顔を見たらなんか「ま、いっか」って気分になってしまう。おれも大概重症だよな。
律の手がゆっくりと浴衣の裾を開いていった。
「律――せめて障子閉めろよ。外から見える……」
おれは抵抗を止め、すでにその気になってる律に懇願する。律はチラリと中庭を見て、フッと笑った。なんとも凶悪な笑顔で――。
「人が来ないほうに賭けるか?」
「はっ!? 来たらどうすんだよ!?」
「千章はそのほうが感じるみたいだからな――」
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