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不穏因子
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「…私はあなたの事を知りたくて今日の夜会に呼んだの。」
知りたい?
小さな声でレイアが怪訝そうに復唱する。
「…そう。ノア殿下からあなたの話を聞いたことがあったから。優しくて温かい女の子だって。」
物語のなかの大好きなレイアの性格を思い出しながら言う。
するとはっとするような表情を浮かべたレイアが口ごもった。
「そ、そう。」
あなたはそうだったはずだよ。
そういう優しい人間だったはず。思い出して欲しくて笑いかけた。
「もしもそれがあなたじゃないなら、ノア殿下はいったい誰の話をしていたのかしら。」
1歩近づいて顔を覗き込む。
レイアは、怯むように後ずさった。
なんの話かよく分からなくなってきたユーリアが私を守るように近づく。
「ねえ、教えてくれない?あなたは一体なにをしようとしているの?」
「私は…」
この物語を壊していったい何がしたいの。
どんな理由があってそんなことをしているの。
そこまで言うと意外な人物が彼女を守るように口を開いた。
「こんなところでそんな話をするのも、どうかと思いますので、そろそろユアン殿下たちに挨拶に向かいましょうか。」
エスコートするためにレイアに手を差し出したのはロシェルだった。
「ロシェル?いま話の途中よ。」
せっかくやっと話が出来るところに来たというのに、肝心なところで連れていかれても困る。
割り込むように入るも、ひらりと交わされた。
「私もユアン殿下を放っとけぼりにしておけないのです。」
そんなことを言うとさっと彼女の手を取る。
レイア自身もなぜロシェルがそんな行動にでるのか分からないと言った表情で困惑していた。
理由を知っているのかと思い、ユーリアを見る。
「兄さん…?」
しかし彼も事態が分かっていないようだった。
そのまま私たちの居たところから去っていく彼らを見る。
なぜ先程レイアと初対面だったはずのロシェルが彼女の味方をしたのかを必死に頭を働かせて考える。
物語のなかの彼はレイアに特別感情を抱いたりしないし、このように突飛な行動もしない。
だとすれば、原因は不穏因子の私だ。
会場の中心あたりに居たユアン殿下とノア殿下のところにたどり着いたロシェルとレイアを見る。
ロシェルがレイアの紹介をして、ユアン殿下がにこりと笑う表情が伺えた。
もしかして目的はユアン殿下だろうか。
ロシェルはユアン殿下の側近だし、彼に王になってもらいたいに違いない。
だけど最近はユアン殿下の体が弱く、まともに仕事が出来ない。このままでは、ノア殿下に王座を奪われてしまうかもしれない。
レイア、彼女がこの国のためになることを見越して、ユアン殿下の王妃にしたいのだろうか。
それとも。
「ノア殿下がこちらを見ていますね。」
同じように見つめていたユーリアが言う。
一瞬私と目が合ったノア殿下は気まずそうな表情を浮かべて分かりやすく顔を逸らした。
「いつまでたっても。ムカつくわね。」
私の失言をユーリアは聞こえなかった振りをしてくれる。
それとも、報復だろうか。
私の姉、リリアがユアン殿下との婚約を解消し、妹の私がノア殿下との婚約破棄を考えているのだから。王族を貶した私たち姉妹に憎悪を抱いていてもおかしくない。
どっちもあるな。と考えて彼らの様子を見る。
するとその時、ドレスの肘の裾を軽く引っ張られた。
「ココ様は、レイア様の味方につくの?」
「え?」
「ノア殿下の新しい婚約者、私とレイア様、どちらの応援をするの?」
下から見上げるように甘えてくるライラのその瞳がユーリアによく似ている。
「もちろん…」
もちろんライラよ。そう言おうとしてやめた。
物語の通りにいくならばノア殿下はレイアと結婚しなければならない。
もしも私が想像している通りロシェルの思惑で、レイアがユアン殿下と結婚したら、その後どうなるか分からない。彼が何を企んでいるのか道筋が掴めない。
言い淀んでしまった私にユーリアが助け舟をだす。
ぽんぽんとライラの頭を撫でて言い聞かせるように言った。
「わがままを言わない。自分の立場をわきまえなさい。」
「うるさい。ユーリアってロシェルが居なくなったらすぐお兄ちゃん面するわよね。しぐさとかそっくり。ロシェルの真似してるの分かりやすいわ。」
「は?そ、そんなことないだろう。私は兄さんとは似てない。」
「それいつも言うけど、あなた達が似てないって思ってるのってあなた達だけだからね?」
2人の可愛らしいやりとりに思わず笑みが零れる。
レイアだけではなく、自由に動き回るキャラクターが多すぎる。
ロシェルに、いまだよく掴めないユアン殿下。
この物語を守り切れるのか少し不安になった。
知りたい?
小さな声でレイアが怪訝そうに復唱する。
「…そう。ノア殿下からあなたの話を聞いたことがあったから。優しくて温かい女の子だって。」
物語のなかの大好きなレイアの性格を思い出しながら言う。
するとはっとするような表情を浮かべたレイアが口ごもった。
「そ、そう。」
あなたはそうだったはずだよ。
そういう優しい人間だったはず。思い出して欲しくて笑いかけた。
「もしもそれがあなたじゃないなら、ノア殿下はいったい誰の話をしていたのかしら。」
1歩近づいて顔を覗き込む。
レイアは、怯むように後ずさった。
なんの話かよく分からなくなってきたユーリアが私を守るように近づく。
「ねえ、教えてくれない?あなたは一体なにをしようとしているの?」
「私は…」
この物語を壊していったい何がしたいの。
どんな理由があってそんなことをしているの。
そこまで言うと意外な人物が彼女を守るように口を開いた。
「こんなところでそんな話をするのも、どうかと思いますので、そろそろユアン殿下たちに挨拶に向かいましょうか。」
エスコートするためにレイアに手を差し出したのはロシェルだった。
「ロシェル?いま話の途中よ。」
せっかくやっと話が出来るところに来たというのに、肝心なところで連れていかれても困る。
割り込むように入るも、ひらりと交わされた。
「私もユアン殿下を放っとけぼりにしておけないのです。」
そんなことを言うとさっと彼女の手を取る。
レイア自身もなぜロシェルがそんな行動にでるのか分からないと言った表情で困惑していた。
理由を知っているのかと思い、ユーリアを見る。
「兄さん…?」
しかし彼も事態が分かっていないようだった。
そのまま私たちの居たところから去っていく彼らを見る。
なぜ先程レイアと初対面だったはずのロシェルが彼女の味方をしたのかを必死に頭を働かせて考える。
物語のなかの彼はレイアに特別感情を抱いたりしないし、このように突飛な行動もしない。
だとすれば、原因は不穏因子の私だ。
会場の中心あたりに居たユアン殿下とノア殿下のところにたどり着いたロシェルとレイアを見る。
ロシェルがレイアの紹介をして、ユアン殿下がにこりと笑う表情が伺えた。
もしかして目的はユアン殿下だろうか。
ロシェルはユアン殿下の側近だし、彼に王になってもらいたいに違いない。
だけど最近はユアン殿下の体が弱く、まともに仕事が出来ない。このままでは、ノア殿下に王座を奪われてしまうかもしれない。
レイア、彼女がこの国のためになることを見越して、ユアン殿下の王妃にしたいのだろうか。
それとも。
「ノア殿下がこちらを見ていますね。」
同じように見つめていたユーリアが言う。
一瞬私と目が合ったノア殿下は気まずそうな表情を浮かべて分かりやすく顔を逸らした。
「いつまでたっても。ムカつくわね。」
私の失言をユーリアは聞こえなかった振りをしてくれる。
それとも、報復だろうか。
私の姉、リリアがユアン殿下との婚約を解消し、妹の私がノア殿下との婚約破棄を考えているのだから。王族を貶した私たち姉妹に憎悪を抱いていてもおかしくない。
どっちもあるな。と考えて彼らの様子を見る。
するとその時、ドレスの肘の裾を軽く引っ張られた。
「ココ様は、レイア様の味方につくの?」
「え?」
「ノア殿下の新しい婚約者、私とレイア様、どちらの応援をするの?」
下から見上げるように甘えてくるライラのその瞳がユーリアによく似ている。
「もちろん…」
もちろんライラよ。そう言おうとしてやめた。
物語の通りにいくならばノア殿下はレイアと結婚しなければならない。
もしも私が想像している通りロシェルの思惑で、レイアがユアン殿下と結婚したら、その後どうなるか分からない。彼が何を企んでいるのか道筋が掴めない。
言い淀んでしまった私にユーリアが助け舟をだす。
ぽんぽんとライラの頭を撫でて言い聞かせるように言った。
「わがままを言わない。自分の立場をわきまえなさい。」
「うるさい。ユーリアってロシェルが居なくなったらすぐお兄ちゃん面するわよね。しぐさとかそっくり。ロシェルの真似してるの分かりやすいわ。」
「は?そ、そんなことないだろう。私は兄さんとは似てない。」
「それいつも言うけど、あなた達が似てないって思ってるのってあなた達だけだからね?」
2人の可愛らしいやりとりに思わず笑みが零れる。
レイアだけではなく、自由に動き回るキャラクターが多すぎる。
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