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この国が好きだから
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ドリンクを配る衛兵に、1つ飲み物を貰って、ユーリアと共に、見かけたことのある貴族に挨拶回りをしていた。
しばらくすると、ロシェルが近づいてきた。
「ココ様、ノア殿下があちらでお呼びです。」
「…ロシェル。」
手を指す方は、広間の出口の方の暗がりだ。
彼は1人で、もうレイアとは一緒に居なかった。
「ノア殿下が?」
「はい。やっと心の決心がついたようですね。」
そんなふうに優しそうに、彼を思う表情を浮かべる。
ロシェルがそんな表情で彼を思うくらい2人は仲が良かったのだろうか。
「それってあなたの差し金なの?」
「え?」
先程のことで警戒心を持って鎌をかけてみる。
「あなたがそうしたらって助言をしたの?」
「…いいえ。私は何も。ノア殿下の判断ですよ。」
「そうなのね。」
敵対心を持つ私の口調に、ユーリアがたじろぐ。
大好きな兄にこのような態度をとる私。
どう動けばいいのか困っているのだろう。
「ココ様、なにを心配なさってるのか分かりませんが、私は何も企ててはいませんよ。ただあなた方の関係が上手くいくように、考えているだけです。」
ロシェルはそう言うが、あまり信用出来はしない。
「まぁ、いいわ。行きましょうか。」
ユーリアの方を向いてそう言うと、ロシェルが止めた。
「ユーリア、おまえは待っていた方がいい。2人きりのほうが話せることもあるだろう。」
「え?」
咄嗟にそう言ったがよく考えてみればそうかもしれない。
そもそも言い合いをした時、私はノア殿下に当てつけのようにユーリアとの秘密を隠し見せたのだから。
「それもそうね。1人で行ってくるわ。」
事態が上手く掴めずに不安そうな顔をするユーリアを置いて、広間の出口の方へ向かう。
大階段の暗がりに彼は1人心細そうに立っていた。
「ノア殿下。」
「ココ。すまない、呼び出して。」
婚約破棄を私から言ってしまいそうになったのだから私から謝るべきなのに、こうしてノア殿下に折れてもらっている。
私が浮かべるべき、気まずそうな表情を彼が浮かべていて、申し訳なく思った。
「謝るのは私の方ですわ。…あんなに強く言う必要なかったですわね。」
言ったあと、自分で怒って言った話の内容については謝っていないなと気づいておかしくなった。
そう、私は間違ったこと言ってないもの。
「いいや。私が悪かった。自分の行いが悪いと分かってはいるのに、この国や兄のためにと考えるとどうもやる気がなくなってしまう。…ココが言うように、私はまだ甘えられると思っているのだろうな。」
反省しているその澄んだ青色の瞳を見つめながら思った。
この人って根は誠実だよね。
そんな人が力になりたいと思えない、そういう理由があるのだろうか。
そういえば、と思い出す。
「ノア殿下が国や兄のために力を貸したいと思わないのは、前仰っていた、この国が嫌いということに関係しているのですよね?」
「…そうだな。」
「もしもそれを変えられるという方法があったらノア殿下は乗りますか?」
「え?」
『レイアと星の国』あの物語は、レイアがこの国の諍いを収めることが出来る。
今のレイアが何を考えているのかは分からないが、レイアという存在がこの国をなにかしら変える力があるのなら、彼女と歩むことで、ノア殿下の望む国になるのではないだろうか。
「レイア・フローレンス。先ほど私に挨拶に来ましたわ。」
その名前をだすと驚いて私の顔を見る。
「彼女のことが好きなのですよね?」
「な…」
「いいのです。私はあなた方を応援しますわ。」
「え?な、なぜだ?」
澄んだ瞳を見つめて1呼吸置く。
「おかしな話かもしれませんが、あなたが好まないこの国のことを私は大好きなのです。…でも今のこの国の状態はあまり良くない。ノア殿下がレイアといることでこの国のために力を入れることができるのなら、私はその国を見てみたいのです。」
「レイアといることで私がこの国のために、やる気をだすと思っているのか?」
「ええ。詳しくは言えないのですが、彼女にはこの国を変える力があるのです。彼女が居ればきっとノア殿下の望むような国になるのではないかと思うのですわ。」
想像もしていなかった私の発言に彼は顎に手を乗せて考え込む。
物語通りにするために、レイアと彼を婚約させる。私はスムーズに婚約を解除して、この国を守れるように尽力する。
今のレイアがよく分からないけれど、ノア殿下と円満に婚約解除すれば、彼から情報を聞くことが出来る。
「ココは本当にそれでいいのか?」
「え?」
「…昔から私のことがあんなに大好きだと伝えてくれていたじゃないか。」
「あ…」
そういえばそうか。
指摘されて顔が熱くなる。ココ・レイルウェイズはノア殿下が大好きで誰にも渡したくないと言っていたのだ。
「それは、昔の話ですわ。えっと…私、好きな人が出来ましたの。だから無理なんかしていないですのよ。」
誤魔化すためにへらっと笑ってみせる。
「そうなのか。それはそれで寂しいな。」
そう言うノア殿下になんだかこちらも寂しくなる。
会場から漏れ出てくる音楽が、夜会の終盤に流れる音楽に変わった。
「そろそろ戻りましょうか。」
「あぁ。」
歩き出したノア殿下の背中を見て呼び止める。
「そうでしたわ。ノア殿下、ロシェルには気をつけて下さい。」
「ロシェル?」
「ええ。…彼は、何か企てている可能性がありますわ。」
「そうか…分かった。気をつけておく。ありがとうココ。それではまたな。」
「ええ。」
しばらくすると、ロシェルが近づいてきた。
「ココ様、ノア殿下があちらでお呼びです。」
「…ロシェル。」
手を指す方は、広間の出口の方の暗がりだ。
彼は1人で、もうレイアとは一緒に居なかった。
「ノア殿下が?」
「はい。やっと心の決心がついたようですね。」
そんなふうに優しそうに、彼を思う表情を浮かべる。
ロシェルがそんな表情で彼を思うくらい2人は仲が良かったのだろうか。
「それってあなたの差し金なの?」
「え?」
先程のことで警戒心を持って鎌をかけてみる。
「あなたがそうしたらって助言をしたの?」
「…いいえ。私は何も。ノア殿下の判断ですよ。」
「そうなのね。」
敵対心を持つ私の口調に、ユーリアがたじろぐ。
大好きな兄にこのような態度をとる私。
どう動けばいいのか困っているのだろう。
「ココ様、なにを心配なさってるのか分かりませんが、私は何も企ててはいませんよ。ただあなた方の関係が上手くいくように、考えているだけです。」
ロシェルはそう言うが、あまり信用出来はしない。
「まぁ、いいわ。行きましょうか。」
ユーリアの方を向いてそう言うと、ロシェルが止めた。
「ユーリア、おまえは待っていた方がいい。2人きりのほうが話せることもあるだろう。」
「え?」
咄嗟にそう言ったがよく考えてみればそうかもしれない。
そもそも言い合いをした時、私はノア殿下に当てつけのようにユーリアとの秘密を隠し見せたのだから。
「それもそうね。1人で行ってくるわ。」
事態が上手く掴めずに不安そうな顔をするユーリアを置いて、広間の出口の方へ向かう。
大階段の暗がりに彼は1人心細そうに立っていた。
「ノア殿下。」
「ココ。すまない、呼び出して。」
婚約破棄を私から言ってしまいそうになったのだから私から謝るべきなのに、こうしてノア殿下に折れてもらっている。
私が浮かべるべき、気まずそうな表情を彼が浮かべていて、申し訳なく思った。
「謝るのは私の方ですわ。…あんなに強く言う必要なかったですわね。」
言ったあと、自分で怒って言った話の内容については謝っていないなと気づいておかしくなった。
そう、私は間違ったこと言ってないもの。
「いいや。私が悪かった。自分の行いが悪いと分かってはいるのに、この国や兄のためにと考えるとどうもやる気がなくなってしまう。…ココが言うように、私はまだ甘えられると思っているのだろうな。」
反省しているその澄んだ青色の瞳を見つめながら思った。
この人って根は誠実だよね。
そんな人が力になりたいと思えない、そういう理由があるのだろうか。
そういえば、と思い出す。
「ノア殿下が国や兄のために力を貸したいと思わないのは、前仰っていた、この国が嫌いということに関係しているのですよね?」
「…そうだな。」
「もしもそれを変えられるという方法があったらノア殿下は乗りますか?」
「え?」
『レイアと星の国』あの物語は、レイアがこの国の諍いを収めることが出来る。
今のレイアが何を考えているのかは分からないが、レイアという存在がこの国をなにかしら変える力があるのなら、彼女と歩むことで、ノア殿下の望む国になるのではないだろうか。
「レイア・フローレンス。先ほど私に挨拶に来ましたわ。」
その名前をだすと驚いて私の顔を見る。
「彼女のことが好きなのですよね?」
「な…」
「いいのです。私はあなた方を応援しますわ。」
「え?な、なぜだ?」
澄んだ瞳を見つめて1呼吸置く。
「おかしな話かもしれませんが、あなたが好まないこの国のことを私は大好きなのです。…でも今のこの国の状態はあまり良くない。ノア殿下がレイアといることでこの国のために力を入れることができるのなら、私はその国を見てみたいのです。」
「レイアといることで私がこの国のために、やる気をだすと思っているのか?」
「ええ。詳しくは言えないのですが、彼女にはこの国を変える力があるのです。彼女が居ればきっとノア殿下の望むような国になるのではないかと思うのですわ。」
想像もしていなかった私の発言に彼は顎に手を乗せて考え込む。
物語通りにするために、レイアと彼を婚約させる。私はスムーズに婚約を解除して、この国を守れるように尽力する。
今のレイアがよく分からないけれど、ノア殿下と円満に婚約解除すれば、彼から情報を聞くことが出来る。
「ココは本当にそれでいいのか?」
「え?」
「…昔から私のことがあんなに大好きだと伝えてくれていたじゃないか。」
「あ…」
そういえばそうか。
指摘されて顔が熱くなる。ココ・レイルウェイズはノア殿下が大好きで誰にも渡したくないと言っていたのだ。
「それは、昔の話ですわ。えっと…私、好きな人が出来ましたの。だから無理なんかしていないですのよ。」
誤魔化すためにへらっと笑ってみせる。
「そうなのか。それはそれで寂しいな。」
そう言うノア殿下になんだかこちらも寂しくなる。
会場から漏れ出てくる音楽が、夜会の終盤に流れる音楽に変わった。
「そろそろ戻りましょうか。」
「あぁ。」
歩き出したノア殿下の背中を見て呼び止める。
「そうでしたわ。ノア殿下、ロシェルには気をつけて下さい。」
「ロシェル?」
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「ええ。」
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