不遇スキル「わらしべ長者」で殺せぬ勇者 〜魔力ゼロでも無双します〜

カジキカジキ

文字の大きさ
39 / 57

魔法の授業3

しおりを挟む
 イヅミちゃん?
 
「そうです。イヅミがホンモノの猫で無い事はお解りだと思いますが……」

「えー? イヅミちゃんは猫ちゃんですよねぇ」
 
 ジルヌール先生は、普段の僕達には見せた事もない優しい目をして膝の上のイヅミを見ている。モフモフするその手技も巧妙なのかイヅミも満更ではない様子。

「今は猫の姿をとっているだけにゃ。あちきはアベルのスキルの機能に過ぎなくて、本来は固有の姿は無いにゃ」

 と言うと、フッと姿を消して今度は僕の隣に現れた。

「にゃー」

 僕の足元に擦り寄って背中を押し付けるイヅミ。えっと? イヅミは猫の姿をしたスキルだよね?

 顔を上げると、ジルヌール先生がとても悲しそうな顔でイヅミを見ていた。

「イヅミちゃん。イヅミちゃん、こっちだよ! ほらほら美味しい干し肉があるよー! にゃー! にゃー!」

 もうジルヌール先生の威厳なんて丸めて何処かへ放り投げてしまったみたいですね。

 僕が呆れ顔で先生を見てると、流石に不味いと感じたのか、ゴホン! と咳払いをして椅子に座り直し。
 
「で、先ほどはイヅミちゃんと何を話していたのだ?」

 いや、机に肘を付いて片手で髪を掻き上げて格好付けても。丸めた威厳はクシャクシャになってシワシワですよ?
 
「はい、先生が発動させた魔法が消える理由について、何処まで話して良いか相談していました」

 先生の顔が真剣になり、目がキラリと光る。

「であれば、あの現象は魔法によるものではなく。その理由も分かっていると言う事か?!」

 僕はコクリと頷いてから、授業中に検証して確かめた結果を踏まえて、先生に全てを話した。

 ・
 ・
 ・

「まさか、イヅミちゃんには魔法の因子が見えるだなんて。さすがイヅミちゃん、可愛いだけじゃなくて優秀なんですね」

 イヅミは話の間に干し肉の誘惑に負けて、またジルヌール先生の膝の上でモフモフされている。てか先生聞いてました?

「アベルが詠唱をすると魔法としては発動しないが、発動する為の因子は消費される。それが大量過ぎて他の者の発動した魔法で使用する因子まで消費する事で、魔法の発現が維持出来なくなって消えるという訳か……」

 あっ、ちゃんと聞こえていたんですね。

「面白いな、これは他の教授先生とも研究の価値があるな」

 そこから研究が進んで、僕も魔法を使えるようになったらいいな。
 
「そう言えばアベル、詠唱の言葉が何やら違っていると感じたのだがあれは何だ?」

 急に僕の事に話題が変わってビックリした。気付いてたんですね。

 僕は、何でそう言うのか分からないと前置きしてから。

「例えば基礎魔法の『うおっしゅ』は『Wash』、『ぱいろっとらいと』が『pilot light』、『ぶりーず』が『Breeze』って感じなんですが……」

 それを聞いて、ジルヌール先生はブツブツと何か考え込んでしまった。けれどイヅミをモフる手は止まらない。

「魔法が消える検証も行いたい。詠唱については古代語の教授にも聞いて貰った方が良いな。その時はまた呼び出すので応じるように」

 そして、今日はもう遅いから帰りなさいと言われて研究室を出る。扉を閉める直前にイヅミに戻るように言うと、この世の終わりのような顔で固まったジルヌール先生だけが研究室に残った。

◆◆◆◇◇◇ ◆◆◆◇◇◇ ◆◆◆

「アベル、終わったのか?」

 D寮の食堂まで戻ると、ニヤの面倒を見てくれていたアンネとアルフ先輩がこちらに気が付いて声を掛けてきた。ニヤはたくさん食べさせて貰って満足なのか、嬉しそうな顔で手を振っている。

「ああ、ニヤの面倒も見てくれてありがとう。助かったよ」

 僕も自分の食事を受け取ると席に座り、皆の隣で食事にする。とにかく今日は疲れたー! まあ詠唱の件は自業自得なんだけど、ジルヌール先生に色々白状する羽目にもなってしまったし、これからどんな事になっていくんだろうな。

 今日の事を思い出しながらボーッと食事をしていると、アルフ先輩が話しかけてきた。
 
「Aクラスの授業はどうだ? 皆魔法とか凄いんだろうな?」

「?」

「ん? 何だ、どうした?」

「えっと。ごめん、意味が分からない。何故Aクラスだと魔法が凄いになるの? Aクラスって単に成績順で上位貴族とかが多いだけじゃないの?」

「アベルは分かって無かったのか。Aクラスは確かに貴族が多いけれど、それにも理由があってね。スキルって確かに誰もが授かるけれど、血統と言うか遺伝もあるんだよ。アベルの町でも儀式の時に親と同じスキルを授かった子とか居なかった?」

 僕はスキルの儀式の事を思い出す。確かにルルはお母さんと同じ『料理人』だったし、他の友達もお父さんと同じスキルだった。

「確かに、でもソレがどう関係しているの?」

「貴族と言うのは自身の子だけでなく、優秀なスキルの子を養子にしたりして、長い時間を掛けてその子孫のスキルを繋いで来たんだ。そのお陰で貴族家には優秀なスキルが集まっているんだよ」

 なるほど~! 聞くと今の王様のスキルは『キング』、騎士団長は『統率者』、他にも『聖女』『守護者』『大魔法使い』も王様の周りに揃っているんだって。

「そうだ、二人は『Breeze』って言葉、分かる?」

 突然話が変わって戸惑うアルフ先輩とアンネ。

「えっ? ぶりいず?」

「ん? ぶりぃず? 何だ生活魔法の「ぶりーず」とは何か違うのかい?」

 やっぱり、他の人は同じ発音にはならないみたい。

「えっと、微風の詠唱の『ぶりーず』が『Breeze』って感じなんだけど」

 僕が詠唱しても当然何も起こらない。けど周りの因子は減っているはず。
 
「ぶっ、ぶり……Breeいず」

 おっ! アルフ先輩頑張れ!

『Breeze』

 ブワァ!!

 アルフ先輩の詠唱が成功した瞬間! アルフ先輩を中心に突然突風がわき起こった!

「きゃあ!」「何だ!」「わぁー!!」

 アルフ先輩から二m位の範囲にわき起こった突風はすぐに収まったけれど、周りはザワザワといつまでも騒いでいる。

「おいアルフ! 食堂では基礎魔法以外の使用は禁止されている筈だぞ! 何で魔法を使った!」

 二学年の生徒がやってきてアルフ先輩を責める。

「ごめん! 基礎魔法の『ぶりーず』を使った筈なんだけど、何故だか強くなってしまいました」

「今のが『ぶりーず』だって? まるで『ガスト』だったじゃないか」

「本当に『ぶりーず』だったんだ! 驚かせてしまって申し訳ない。皆さんも驚かせてしまって申し訳ありませんでした」

 アルフ先輩は食堂にいた人達一人一人に謝って回り、許してもらっていた。

 アルフ先輩が席に戻った時「アンネも怪我しなかったかい? 驚かせてごめん」と謝っていたけれど。これって僕のせいだよね、ごめんなさい。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!

菊池 快晴
ファンタジー
10代という若さで老衰により病気で死んでしまった主人公アイレは 「まだ、死にたくない」という願いの通り異世界転生に成功する。  同じ病気で亡くなった親友のヴェルネルとレムリもこの世界いるはずだと アイレは二人を探す旅に出るが、すぐに魔物に襲われてしまう  最初の武器は木の棒!?  そして謎の人物によって明かされるヴェネルとレムリの転生の真実。  何度も心が折れそうになりながらも、アイレは剣と魔法を使いこなしながら 困難に立ち向かっていく。  チート、ハーレムなしの王道ファンタジー物語!  異世界転生は2話目です! キャラクタ―の魅力を味わってもらえると嬉しいです。  話の終わりのヒキを重要視しているので、そこを注目して下さい! ****** 完結まで必ず続けます ***** ****** 毎日更新もします *****  他サイトへ重複投稿しています!

迷宮に捨てられた俺、魔導ガチャを駆使して世界最強の大賢者へと至る〜

サイダーボウイ
ファンタジー
アスター王国ハワード伯爵家の次男ルイス・ハワードは、10歳の【魔力固定の儀】において魔法適性ゼロを言い渡され、実家を追放されてしまう。 父親の命令により、生還率が恐ろしく低い迷宮へと廃棄されたルイスは、そこで魔獣に襲われて絶体絶命のピンチに陥る。 そんなルイスの危機を救ってくれたのが、400年の時を生きる魔女エメラルドであった。 彼女が操るのは、ルイスがこれまでに目にしたことのない未発見の魔法。 その煌めく魔法の数々を目撃したルイスは、深い感動を覚える。 「今の自分が悔しいなら、生まれ変わるしかないよ」 そう告げるエメラルドのもとで、ルイスは努力によって人生を劇的に変化させていくことになる。 これは、未発見魔法の列挙に挑んだ少年が、仲間たちとの出会いを通じて成長し、やがて世界の命運を動かす最強の大賢者へと至る物語である。

チートスキル【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得&スローライフ!?

桜井正宗
ファンタジー
「アウルム・キルクルスお前は勇者ではない、追放だ!!」  その後、第二勇者・セクンドスが召喚され、彼が魔王を倒した。俺はその日に聖女フルクと出会い、レベル0ながらも【レベル投げ】を習得した。レベル0だから投げても魔力(MP)が減らないし、無限なのだ。  影響するステータスは『運』。  聖女フルクさえいれば運が向上され、俺は幸運に恵まれ、スキルの威力も倍増した。  第二勇者が魔王を倒すとエンディングと共に『EXダンジョン』が出現する。その隙を狙い、フルクと共にダンジョンの所有権をゲット、独占する。ダンジョンのレアアイテムを入手しまくり売却、やがて莫大な富を手に入れ、最強にもなる。  すると、第二勇者がEXダンジョンを返せとやって来る。しかし、先に侵入した者が所有権を持つため譲渡は不可能。第二勇者を拒絶する。  より強くなった俺は元ギルドメンバーや世界の国中から戻ってこいとせがまれるが、もう遅い!!  真の仲間と共にダンジョン攻略スローライフを送る。 【簡単な流れ】 勇者がボコボコにされます→元勇者として活動→聖女と出会います→レベル投げを習得→EXダンジョンゲット→レア装備ゲットしまくり→元パーティざまぁ 【原題】 『お前は勇者ではないとギルドを追放され、第二勇者が魔王を倒しエンディングの最中レベル0の俺は出現したEXダンジョンを独占~【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得~戻って来いと言われても、もう遅いんだが』

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~

しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」 病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?! 女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。 そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!? そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?! しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。 異世界転生の王道を行く最強無双劇!!! ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!! 小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!

処理中です...