不遇スキル「わらしべ長者」で殺せぬ勇者 〜魔力ゼロでも無双します〜

カジキカジキ

文字の大きさ
40 / 57

魔法の検証

しおりを挟む
「お前は、また何かやらかしたようだな」

 今日も、授業の終わりに「後で私の研究室に来るように」と言われてジルヌール先生の研究室へと来ています。

 研究室に入ったとたん干し肉を見せると、イヅミに出て来るように言ってモフり始めました。本当は僕よりイヅミに会いたかったんじゃないかな?
 
 イヅミをモフる手は止めず、僕には鋭い視線を飛ばしてくるジルヌール先生。

「いや、ちょっと気になって。あの詠唱の言葉を友達に真似して貰っただけなんですけど……」

 ジルヌール先生の目がずっと僕を見ている。僕はヘビに睨まれたカエルのように脂汗が止まらない。

「それだけで、基礎魔法の「ぶりーず」が初級魔法の「ガスト」になったと言うのか?」

 さらに眼に力が入ったジルヌール先生、もう僕は眼力だけで刺し殺されそうだ。だと言うのに、イヅミをモフる手はとても優しそうでイヅミもとても気持ち良さそうにしている。

「せっ、先生も……詠唱してみます……か?」

 今度は視線が生暖かいものに変わった。

「ほう、この私を試そうと言うのか……良かろう。では、ここでは不味いから、訓練場へ移動しようか」

 ジルヌール先生がイヅミを抱いたまま立ち上がり、研究室を出て訓練場へと向かう。その後ろを、ゆっくりと付いていく僕。

 学園校舎から離れた場所に建てられた訓練場は、魔法の訓練をする為に作られた建物で、広い室内は等間隔に硬い壁で仕切られて、もし失敗しても周りに被害が広がらないように出来ている。

『ぶりーず』

 ジルヌール先生が詠唱すると、ふわっと風が流れる。完璧な微風の基礎魔法『ぶりーず』だ。

 僕が先生の事を感心して見ていると、先生も僕の事を見ていた。あっ、詠唱を教えろって事ですね。

「では、言いますね『Breeze』」

 僕が発声した後、先生は直ぐには真似をせず。少し考えている様子だったけれど。

『Breeze』

 ブワァ!

 先生を中心に突風がわき起こる。

 自分が起こした魔法なのに、驚いた目をしているジルヌール先生。

(イヅミ、どうだった?)

(やっぱりにゃ、今ので結構な因子が無くなったにゃ)

 と言う事は、僕の予想通り詠唱の発声によって因子が使われる量が変わり、使われた因子の量で魔法の強さが変わるって事かな?

「次、「ぶりっと」はいけるか?」

 先生が訓練場の区分けの一つへと移動しながら聞いてきた。攻撃魔法は、安全のために土壁が用意された場所でのみ使用可能となっている為だ。硬い壁で仕切られてさらに土壁が盛ってある前に的が立っている。

 先生が的の前に立つ、的まで約三十メートル。

 入学テストでジルヌール先生と初めて会った時に、僕が収納を使って石礫を飛ばしたのと同じ距離だ。

 先生のスキルは『大魔法使い』、全ての属性の魔法を使えるけれど、特に得意にしているのは土魔法。だからか、僕が飛ばした石礫に強く興味を持たれてしまっているのだろう。

「『Bullet』です」

 さっきと同じように考え込む先生、頭の中で反芻しているのかな?

「Buりっと」

 おしい。

「もう一度聞かせてくれ」

「『Bullet』」

 的に向けて手を伸ばす先生。

 『Bullet』

 ヒュッ!
 
 バギッ!! ドスッ!

 三十メートル先の的を破壊して、土壁にまでめり込んだ石礫。

「これは」

 僕には『ばれっと』の威力は分からないけれど、入学テストの時に言われた十五メートルで破壊、三十メートルで当てるだけだったら、三十メートルで破壊して後ろの土壁にまで穴を開けているのは、かなり威力が強いと言う事なんだろう。

 その証拠にさっきからジルヌール先生は黙って的と土壁を見てるだけになっている。

「アベル、この詠唱を知っているのはお前だけか?」

「僕と『Breeze』だけなら昨日一緒だったアルフと、アンネも聞いている筈です」

「よし、とりあえずこの事は他には言わないようにしろ、残りの二人にも他言しないように伝えておくように」

 ジルヌール先生は真面目な顔で、絶対に他の人には言わないようにと何度も念押しされた。

 実験が終わった後の寮までの帰り道。

(イヅミ、この詠唱って何だろう?)

(あちしにも分からないにゃ。ただアベルの記憶の中で似たような言葉は聞いたような気がするにゃ)

(また僕の記憶か……これもいつか分かる時が来るのかな)
 
 いつもの寮のいつもの食堂では、アンネとアルフ先輩とニヤが夕食を食べていた。ニヤには毎日のお小遣いを渡していて、僕が授業の間は部屋にいて掃除をしたり、食堂でオヤツを食べたりして過ごして貰っている。

 最近では、ニヤがいつも食堂にいるので食堂のおばちゃんとも仲良くなって話し相手になってくれているみたい。こんど何か差し入れでも持ってくるかな。

「お疲れ」「お疲れ様アベル」「アベルおかえり」

 いつものように食事を受け取ってから席に座ると、今日の事を簡単にアルフ先輩とアンネに説明して、あの詠唱は人前では絶対に使わないようにとお願いする。

 それから……もしかするとジルヌール先生の研究というか実験に、二人も呼ばれてしまうかも知れないと謝ると。二人には怒られるどころか感謝された。

 ジルヌール先生の研究室は、先生が『大魔法使い』と言うこともあり、その研究室に入れる事は学園生には憧れだと言う。特に魔法の素質があれば尚更だと水魔法に適性のあったアンネは喜んでいた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

老衰で死んだ僕は異世界に転生して仲間を探す旅に出ます。最初の武器は木の棒ですか!? 絶対にあきらめない心で剣と魔法を使いこなします!

菊池 快晴
ファンタジー
10代という若さで老衰により病気で死んでしまった主人公アイレは 「まだ、死にたくない」という願いの通り異世界転生に成功する。  同じ病気で亡くなった親友のヴェルネルとレムリもこの世界いるはずだと アイレは二人を探す旅に出るが、すぐに魔物に襲われてしまう  最初の武器は木の棒!?  そして謎の人物によって明かされるヴェネルとレムリの転生の真実。  何度も心が折れそうになりながらも、アイレは剣と魔法を使いこなしながら 困難に立ち向かっていく。  チート、ハーレムなしの王道ファンタジー物語!  異世界転生は2話目です! キャラクタ―の魅力を味わってもらえると嬉しいです。  話の終わりのヒキを重要視しているので、そこを注目して下さい! ****** 完結まで必ず続けます ***** ****** 毎日更新もします *****  他サイトへ重複投稿しています!

迷宮に捨てられた俺、魔導ガチャを駆使して世界最強の大賢者へと至る〜

サイダーボウイ
ファンタジー
アスター王国ハワード伯爵家の次男ルイス・ハワードは、10歳の【魔力固定の儀】において魔法適性ゼロを言い渡され、実家を追放されてしまう。 父親の命令により、生還率が恐ろしく低い迷宮へと廃棄されたルイスは、そこで魔獣に襲われて絶体絶命のピンチに陥る。 そんなルイスの危機を救ってくれたのが、400年の時を生きる魔女エメラルドであった。 彼女が操るのは、ルイスがこれまでに目にしたことのない未発見の魔法。 その煌めく魔法の数々を目撃したルイスは、深い感動を覚える。 「今の自分が悔しいなら、生まれ変わるしかないよ」 そう告げるエメラルドのもとで、ルイスは努力によって人生を劇的に変化させていくことになる。 これは、未発見魔法の列挙に挑んだ少年が、仲間たちとの出会いを通じて成長し、やがて世界の命運を動かす最強の大賢者へと至る物語である。

チートスキル【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得&スローライフ!?

桜井正宗
ファンタジー
「アウルム・キルクルスお前は勇者ではない、追放だ!!」  その後、第二勇者・セクンドスが召喚され、彼が魔王を倒した。俺はその日に聖女フルクと出会い、レベル0ながらも【レベル投げ】を習得した。レベル0だから投げても魔力(MP)が減らないし、無限なのだ。  影響するステータスは『運』。  聖女フルクさえいれば運が向上され、俺は幸運に恵まれ、スキルの威力も倍増した。  第二勇者が魔王を倒すとエンディングと共に『EXダンジョン』が出現する。その隙を狙い、フルクと共にダンジョンの所有権をゲット、独占する。ダンジョンのレアアイテムを入手しまくり売却、やがて莫大な富を手に入れ、最強にもなる。  すると、第二勇者がEXダンジョンを返せとやって来る。しかし、先に侵入した者が所有権を持つため譲渡は不可能。第二勇者を拒絶する。  より強くなった俺は元ギルドメンバーや世界の国中から戻ってこいとせがまれるが、もう遅い!!  真の仲間と共にダンジョン攻略スローライフを送る。 【簡単な流れ】 勇者がボコボコにされます→元勇者として活動→聖女と出会います→レベル投げを習得→EXダンジョンゲット→レア装備ゲットしまくり→元パーティざまぁ 【原題】 『お前は勇者ではないとギルドを追放され、第二勇者が魔王を倒しエンディングの最中レベル0の俺は出現したEXダンジョンを独占~【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得~戻って来いと言われても、もう遅いんだが』

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~

しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」 病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?! 女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。 そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!? そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?! しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。 異世界転生の王道を行く最強無双劇!!! ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!! 小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!

処理中です...