勇者の生還

けい

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出会い

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森は本来、静かな場所だった。
深い緑に包まれ、魔族たちは互いの領域を守りながら、ただ静かに暮らしていた。

しかし近年、その平穏は崩れていた。

人間たちが、魔族の森へ侵入してくるのだ。

はじめは偵察のようなものだった。
だが次第に、剣や火を持ち込み、乱暴な手段に出る者が増えていった。

話し合いで済めばいい。
魔王デスティニオ・ブラッドロは、そう考えていた。

だが現実は違う。

魔族の中にも気性の荒い者はいる。
侵入してきた人間を、容赦なく返り討ちにした事件も少なくなかった。
その報復で、さらに人間が攻めてくる。

争いは、終わらない。

「……住む場所さえ分け合えれば、それでいいものを」

魔王は玉座で小さくため息をついた。

これまで何人もの勇者が現れた。
だが彼にとっては、軽くあしらえる相手ばかりだった。

しかし――

今回は違った。

森の奥へと現れたその人物を見たとき、デスティニオは思わず目を細めた。

久々に感じる、圧倒的な力。

そして何より――

「……人間、だと?」

思わず、そう呟いてしまうほどだった。

そこに立っていた勇者は、美しかった。

白く透き通る肌。
湖のように澄んだ瞳。
風に揺れる銀の髪。

魔族は美しい種族だ。
だが、人間でここまでの美貌を持つ者など、デスティニオは見たことがなかった。

正直に言えば――

戦いたくなかった。

だから魔王は、剣ではなく言葉を向けた。

静かな森の中で、ゆっくりと口を開く。

「我が名はデスティニオ・ブラッドロ」

低く響く声が森に溶ける。

「……お前の名は、なんだ?」

勇者は一歩前に出た。
その瞳は澄み切っているのに、強い覚悟を宿していた。

「我が名は――リオ・オルガレス」

風が木々を揺らす。

リオは静かに続けた。

「お前に個人的な恨みはない」

その声には、怒りではなく、ただ使命だけがあった。

「だが、争いを終わらせるためには――」

勇者は剣を抜く。

澄んだ刃が光を反射した。

「お前を倒すしかないと理解している」

森の空気が張り詰める。

魔王は、ゆっくりと立ち上がった。

「……そうか」

わずかに笑う。

「残念だ。できれば、お前とは酒でも飲みながら話したかったのだがな」

次の瞬間――

魔王と勇者の間に、静かな殺気が満ちた。
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