美しき勇者 魔王に愛されてます

けい

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魔王救出

医療班だ!道を開けろ!!」

慌ただしい声とともに、白衣の集団が駆け込んでくる。

ヒューズの状態を一目見た瞬間、空気が変わった。

「重症だ、すぐ運べ!出血が多すぎる!」

担架に乗せられ、ヒューズはそのまま運ばれていく。

「待って……!」

リオが手を伸ばすが、力が入らない。

魔力は完全に空っぽだった。

視界が揺れる。

それでも、目だけは逸らさなかった。



「集中治療室、確保できました!」

「すぐ処置に入る!」

扉が閉まる直前――

「……リオ……」

かすれた声が聞こえた気がした。

そして、扉が無情に閉じられる。



その時。

「どけ」

低い声が廊下に響いた。

振り返ると――グナートが立っていた。

松葉杖をつき、顔色は明らかに悪い。

「グナート……!?ダメだ、まだ安静のはず――」

「うるさい」

短く遮る。

その目は、まっすぐ集中治療室を見ていた。

「俺がやる」

医療班の一人が戸惑う。

「し、しかしあなたは――」

「時間がねぇ」

それだけ言って、無理やり扉を開ける。

止める者はいなかった。

その背中が、あまりにも必死だったから。



室内。

機器の音が規則的に響く中、ヒューズが横たわっている。

出血は止まりきっていない。

状態は、明らかに危険だった。

グナートはゆっくり近づく。

松葉杖を壁に預け――

片足で立つ。

「……無茶を‥

小さく吐き捨てる。

そして、震える手で治療魔法を構築する。

本来なら、絶対に使ってはいけない状態。

だが――

「死なせないからな

魔力が、静かに流れ出した。



一方その頃。

別室に運ばれた“魔王”。

簡素なベッドの上で、静かに横たわっている。

見た目は完全に人間だった。

「……おかしい」

医師の一人が呟く。

「この回復力、この魔力反応……人間じゃない」

リオは壁にもたれながら、それを聞いていた。

呼吸は浅く、立っているのもやっと。

「……あの人は……」

言いかけて、止まる。

言えば、すべてが変わる。

敵として処理される可能性もある。

その時――

「ま、魔法を……かけられてる……」

かすれた声。

全員が振り向く。

魔王が、わずかに目を開けていた。

「戻れ……ない……ごほっ……」

苦しそうに咳き込む。

完全な人間の声だった。



部屋の空気が張り詰める。

医師たちは顔を見合わせる。

「……とにかく、今は患者だ」

一人が静かに言った。

「種族が何であれ、この状態を放置はできない」

リオは、小さく息を吐いた。

「……お願いします」

それだけ絞り出す。



治療が始まる。

静かな夜だった

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