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森での出来事

第4話 レックス

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 森でヒトの仕掛けたワナに掛かって動けなくなっていたところを、小さいヒトによってケガの手当てをしてもらってから数日後。

 この数日間は住み処の近くで過ごすように父ちゃんから言われたので、ごはんを食べた後も住み処の周りで遊ぶ事にしていたが、いつも頭の中にはあの時ケガの手当てをしてくれたヒトの事が忘れられないでいたのだった······。

(あーあ。またあのちいさいヒトにあいたいなぁ)と思っていたら、クンクン(っ! こ、このにおいは!?)たまたま漂っていた匂いを嗅いだら、あの時の小さいヒトから感じた匂いを感じたのだった。
 
(ひょっとして、あのヒトがまたきたのかなぁ?)そう思ったらその匂いを追ってみたいと思ったが、(でも、とうちゃんからすみかのちかくですごすようにっていわれているし······)どうしたものか迷ったが······(とうちゃん、ゴメン!)結局匂いを追うことにしたのだった。


 それから匂いを追っていったら、あの時ボクがケガをしてうずくまっていた近くに辿り着いたのだった。

(ここって、あのときの······あのヒトはどこに?)と周りを見渡して見たら(······いた!)あのヒトを見掛けたのだった。

 そのヒトはあの時いた大きなヒトと別の大きなヒトと一緒に草むらの中に生えていた何かを取っていた。

(なにしてるんだろう?)その様子を見ていたら、ガサガサ!(ん? ······あっ)何と父ちゃんがやって来た。

「と、とうちゃん」「全く。住み処の近くで過ごすように言っておいただろ」「ご、ごめんなさい」「まぁ良いがな」

「ねぇ、あれなにしてるんだろう?」「恐らく、あそこには確かケガに効く草が生えていたはずだったから······お前のような事が起こった場合に備えてその草を取っているんだろう」「そっかぁ」と納得した。

 少しして取る作業を終えたみたいであのヒトがこちらに向かって何かを言ってきて他のヒトと帰って行った。

 それを見届けて「それじゃあ俺達も帰るぞ」「うん!」ボク達も住み処に戻った。その時ふとボクはさっきのヒトが何かを言ってきた事を思い返し、(あのとき、あのヒトなんていったんだろう? あのヒトがいってることばがわかればいいのになぁ······)と考えていた。

 
 その夜ボクが眠っていたら、急に目の前がとても明るく眩しくなった。

(んー、なに?)と思った直後、「子グマよ。起きるのだ、子グマよ」ボクを呼ぶ声が聞こえたので目を開けてみたら、やはり目の前だけが明るくなっていた。

「だれ?」と声の主に聞いてみたが「ワシの事はいずれ知る事になる」と答えた。

「それより、あのケガを治してくれた者と仲良くなりたいか?」と聞かれたので「っ! う、うん! なりたいっ!」とすぐに答えた。

「それならば2日······太陽を2回目に見た日のお昼ごはんを食べた後、お主達が魚を獲りに行っている川に行ってみるがよい。お主の望みが叶うだろうからな」「ホ、ホント!?」

「うむ。あと、ワシとの会話の事は父親には今は秘密にしておくんじゃぞ」「えっ、なんで?」「今話すと色々大変な事になるからな。もう少ししてから話せば良いからな」「······わかった」「うむ。ではな」と言った途端に光は消えたのだった。

(いまのはなんだったんだろう?)と考えたが、(まぁいっか)と思い再び眠りについたのだった······。



 そして光からの声に言われた通り、2日後の昼ごはんを食べた後に父ちゃんへ遊びに行く事を伝え、いつもの川に向かった。

 川に着いたところで何と本当にあのヒトがいたのだった。(いた!)と思ってそのヒトの傍に向かったのだったが、そこでとんでもない出来事が起こった。

「やぁ、久しぶり」(えっ!?)何とあのヒトの言う言葉が理解出来たのだった。

(な、なんで? どうして?)ボクが驚いていると「どうしたの?」と聞いてきたがボクは何も答えられなかった。

 その時「どうした? レックス」「あっ、アッシュ兄ちゃん」あの時いたもう1体のヒトもやって来たのだった。

「あれ? その子グマって?」「うん。あの時の子グマだよ」と話をしていたが、その2体の会話も理解が出来たのだった。

(ど、どうし)てと思ったが、あの時の光の中の声が「お主の望みが叶うだろうからな」と言っていた事を思い出し、(ボクののぞみ······っ! あのヒトがいってることばがわかればいいのにってのぞみか!)とようやく納得したのだった。

(それじゃあ、これからは)あのヒト······ううん、確かもう1体が"レックス"って呼んでいたから、レックス達の言う事が分かるんだ!

 そう改めて理解出来たら心の底から嬉しくなってきたのだった。(や、やったぁーーー!!)そう思っていると「おーいレックスーっ! アッシューっ! そろそろ帰るぞー!」「はーい、父さん。それじゃあまたね」「じゃあな」とレックス達はレックスがとうさんと呼んだヒト達と帰って行った。

 その後ろ姿を見続けながら(またね、レックス)と思った。


 そして、この日からボクの人生は本当に大きく変わる事となったのだった······。
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